地上波+ブロードバンド世帯の増加

Nielsenの発表したデータによると、多チャンネルサービスには未加入で、地上波だけの世帯は2012年第3四半期で1105万で、1年前の1098万から若干増えている。しかし、2011年第2四半期の1114万世帯より、減っており、多チャンネル離れが進んでいるとは言えない。しかし、地上波だけの世帯におけるブロードバンドサービスへの加入率は大きく増えている。地上波だけで、ブロードバンドサービスに加入している世帯は、2010年第3四半期の415.6万世帯から、510.4万世帯へと22.8%の増加を見せた。

多チャンネルサービスへの加入ではケーブルTVへの加入が減り、衛星、電話事業者のビデオサービスへの加入が増えている。ケーブルTVへの加入は6.1%減少し、衛星、電話事業者のビデオサービスへの加入はそれぞれ2.1%、21.1%増えている。
このトレンドセッターはアジア人である。アジア人におけるケーブルTVへの加入率は2011年1Qで65%近かったのが、3Qでは51%に落ちた。これに対して、電話事業者のTVサービスに加入しているアジア人世帯は9%から12%へと増えた。
TVの視聴媒体(2010年3Q対2011年3Q)

Nielsen

TV帯域の自主返還

TV放送局がその帯域を自主的に国に返還し、FCCにその競売を行う権限を認める事が立法化された。競売で得られた金額の一部は、帯域を返還した会社に支払われる。これは、無線ブロードバンドに使える帯域を増やすことを目的としている。帯域が返還された後、TVのチャンネル帯域は再編成され、その為に17.5億ドルの予算も計上されている。競売額は150億ドルになると推定されている。しかし、競売がいつになるかは不明である。まずは、FCCが自主返還に対する規則を作る必要があり、放送局が帯域を手放すかを検討するのはその後になり、早くても2013年後半であろう。何度もTV帯域の再編成をする事は出来ないので、十分な数の帯域ライセンスが返還されない場合は、競売は延期になる可能性もある。

また、アナログ停波で空いた帯域の内、公共安全向けにあてがわれているDブロックと既存の公共安全向けの帯域を再編成し、20 MHzの帯域を確保し、全米規模のLTEネットワークを構築する事も決定した。LTEネットワークの構築には70億ドルの予算が計上された。

増えるDVRの利用

Nielsenが発表したTVの利用方法の統計では、全体視聴時間におけるリニアTV放送の視聴比率は減っている。年齢が低いほど、リニアTV放送の視聴率は低く、18歳から34歳では2007年の82.8%から2011年では79.1%になった。35歳から54歳では2007年は89.6%であったのが、2011年では86.1%に増えている。利用が大きくと増えているのはDVRで、これは18歳から34歳でも、35歳から54歳でも同じように増えている。これは18歳から34歳のDVRの利用率は4.8%から8.5%に増え、35歳から54歳では4.4%から9.0%に増えた。

地上波をインターネットで配信

Fox Broadcastingの設立にたずさわり、現在Ask.com、Match.com等のサイトを運営するInterActiveCorp社(IAC)の会長を務めるBarry Dillerが投資するAereo社が地上波放送をインターネットで再配信するサービスをスタートした。サービスはニューヨークで始まり、月額$12で、地元のCBD、NBC、Fox、ABC、PBS等の地上波局をインターネットを使い視聴し、また、40時間の録画(DVR)が出来る。

地上波放送をインターネットで提供するサービスはFilmOn、Ivi等が行ったが、いずれも著作権法に違反しているとの理由で、地上波ネットワーク等の権利者に訴えられ、停止している。これらに比べて、Aereoには2つの大きな違いがある。1つは、勢力で、メディア界では著名なBarry Dillerが支持しており、Aereo社はIAC、FirstMark Capital、High Line Venture等から2500万ドルの資金を得ている。もう1つは、その技術で、1つのアンテナで地上波受信し、再送信をするのではなく、各加入者に対して、1つのアンテナを設置し、1対1での配信を行う。DVRもCablevisionが行っているRS-DVRと同じに、個々の加入者に個別の録画容量が提供されている。1つのアンテナは10セントコイン程度の小さなサイズで、1つのアンテナケースに何百、何千のアンテナを置くことが出来る。

Aereo社は各加入者に対して、1つのアンテナを提供する事で、著作権には触れずに地上波の再送信をインターネットで行うことが出来ると語っている。しかし、Aereo社に対する訴訟は素早く、発表の2週間後にPBSとUnivisionが訴え、その直後にABC、Disney、CBS Broadcasting、CBS Studio、NBC Universal、NBC Studio等を含めた会社がAereoを諸作件法違反で訴えた。

同じように各ユーザに対してDVDプレーヤを置き、DVDディスクのコンテンツをインターネットで配信したZedivaも訴えられ、サービスを停止している。しかし、AereoはZediva等とは異なり、法廷で戦う資本を持っている。訴えられたからそれでサービスを止めるのではなく、法廷で戦う覚悟だが、コンテンツ事業者もこれは絶対に戦う意志で、大きな訴訟になるかも知れない。

以前に法廷で戦われた同様なケースはCablevisionのRS-DVRである。RS-DVRの場合、上訴裁判でCablevisionが勝ち、コンテンツ事業者はそれ以上の控訴をしなかった。RS-DVRとAereoの最大の違いは、コンテンツ事業者に与える収入インパクトである。RS-DVRに関しては、コンテンツ事業者には収入の減少は無い。視聴者宅のDVRに録画されても、クラウドに録画されても、コンテンツ事業者への収入にはならなく、RS-DVRが許可されても収入上の差は無い。地上波の再送信の場合は違う。ネットワークは多チャンネル事業者から再送信料を得ている。もし、Aereoの提案するサービスが合法で、無許可で地上波再送信が可能になれば、ネットワークの収入は減少をする。

ケーブルTV事業者とBoxeeの争い

ケーブルTVが提供する番組を全て暗号化しても良いかで、BoxeeとケーブルTV事業者が争いをしている。Boxeeは、OTT-Vのストリーミングメディアプレーヤを提供しているが、最近、ATSCチューナのUSBドングルの発売を開始した。このドングルをBoxee Boxに取り付けることで、デジタル地上波、それにケーブルTVのクリアQAMの放送をBoxeeから見ることが可能になる。FCCの規定によりケーブルTV事業者は、地上波再送信を暗号化してはいけない事になっている。QAM対応のATSCチューナがあれば、デジタルSTB無しで、地上波の再送信は見ることが出来る。地上波再送信以外のチャンネルは暗号化する事が出来き、STBが必要とされる。

普通のデジタルTVでも暗号化されていないQAM(クリアQAM)を見る事が出来るが、Boxee BoxにATSCドングルを付けた場合、Boxeeのインタフェース(ナビゲーション)でOTT-Vの番組と地上波放送を見ることが可能になる。

ケーブルTV事業者の多くは地上波再送信だけのベーシックサービスを有料で提供しているが、クリアQAMの放送は無料でも見られる事もある。ケーブルモデムだけに加入していても、ケーブルをクリアQAM対応のTVにつなげば、見えることが出来る。フィルターでカットしている場合もあるが、そのフィルターを取り除けば、クリアQAMは視聴可能になる。これは、海賊行為だが、地上波はアンテナで見る事も可能な物であり、ケーブルTV事業者はこの行為を問題視していなかった。

しかし、OTT-Vによる競合が進んでいる中、ケーブルTV事業者はクリアQAMで番組を提供する事を問題視し始めている。Boxee Box等の製品が、OTT-Vと同一のインタフェース地上波放送を見る事が可能になれば、多チャンネルへの競合性が増すことになる。ケーブルTV事業者を代表するNCTAは、FCCに対して、地上波再送信も暗号化する事を可能にする様に規制を書き換える事を求めている。NCTAは、映画事業者代表のMPAA、それに一部の自治体からの支持を得ている。Boxeeは、これに反対をし、Public Knowledge、それに家電ベンダー代表のCEAから支持を得ている。