DisneyはYouTube TVとの再送信契約の更新で揉めており、10月30日からYouTube TVではABC、ESPN等のDisney系のチャンネルが見られなくなっている。このようなチャンネルのブラックアウトではネットワークは広告収入を失い、多チャンネル放送事業者は加入者を失う。どちらも損害が多いので、多くの再送信契約の争いは短期で終了する。しかし、長い戦いもある。2023年のNexstarのDirecTVでのブラックアウトは76日間続いた。過去最長のブラックアウトはHBOとDish Networkで、2018年から2021年まで3年間も続いた。
DisneyとYouTube TVの争いも長期戦になる可能性がある。DisneyにはESPNと言う大きな武器がある。特に、今はNFLのシーズン中であり、NFLファンの加入者を失うので、通常の多チャンネル放送事業者であれば、すぐに折れるであろう。しかし、YouTube TVは最大のvMVPDサービスであっても、YouTube TVの収入Googleに取っては小銭である。Googleが不利になる条件であれば、長期戦も辞さないであろう。Disneyはブラックアウト期間中、1週間で$3千万の広告料を失っていると推測されている。しかし、DisneyはYouTube TVに競合するHulu with Live TVとFubo TVを持っており、ブラックアウトによりYouTube TVを脱退した加入者を獲得しており、得もある。
再送信契約の争いは基本に契約料金の値上げで起きる。ネットワークは収入を増やすために値上げを要求する。再送信料が増えると多チャンネル放送事業者はサービス料を上げる事になり、加入者を失うので抵抗する。これまで、ネットワークはチャンネルを増やすことを再送信料の値上げの口実としてきたが、現在は多チャンネルサービス加入者にDTCサービスをラインナップに加えることで契約金を増やそうとしている。
これには肯定的な多チャンネル事業者もいる。例えば、Charterは積極的にDisney+、HBO Max、Peacock、Paramount+の追加を行い、殆どのネットワーク事業者のDTC(Direct-to-Consumer)サービスを加入者に無料で提供している。サービス料金は増えるが、利用者の満足度は増し、チャーンは減るメリットがある。しかし、vMVPDへのメリットは少ない。vMVPD事業者はケーブルTV事業者とは違い、ブロードバンドサービスをバンドルしていない。また、vMVPDの加入者はスポーツ目的が多く、シーズンが終われば脱退し、サービスに対する忠誠心は少ない。。vMVPD利用者は複数のSVODサービスへの加入、脱退の繰り返しには慣れており、DTCサービスを無料にしても、チャーンの減少には大きな影響はないであろう。
DisneyとYouTube TVの争点は不明だが、スポーツが影響していることは確実である。第3四半期(Disneyの経理ではQ4)でのDisneyのESPNを除く国内放送からの収入は前年同期から7%の減少があるが、ESPNの国内収入は2%増えており、放送収入はスポーツ頼りになっている。DisneyはESPNのDTCサービスとなるESPN Unlimitedを月額$30で開始た。このサービスを再送信契約に加える代わりの値上げを求めているであろう。さらに、NFLを巡る争いもあり得る。GoogleはNFLの全国放送されない日曜の試合を配信するNFL Sunday Ticketの販売権に多額を払い、NFLとの関係を築いた。だが、Disneyは最近にNFLのNFL Channelを含むメディア資産を得、その代わりにESPNの10%をNFLに与えた。DisneyはNFL Sunday Ticketの権利を横取りしようとしているとの噂があり、2社の紛争の背景には再送信料値上げ以外の要因もあるかも知れない。
Update:
15日間でYouTube TVにおけるDisney系チャンネルのブラックアウトが終了した。契約内容は発表されていないが、交渉内容のいくつかはサービス上の変化に見ることが出来る。
予想されていたように、対応するYouTube TVプランの加入者にはESPN Unlimited、それにDisney+とHuluのバンドルが提供になる。しかし、提供方法が通常とは異なる。MVPDがネットワークのDTCサービスを提供する場合、コンテンツのアクセスはDTCサービスのアプリからで、MVPDの関与は無い。他の利用者と同様にDTCサービス側が配信、データ、広告を管理する。そこにはMVPDのブランドは無い。
YouTube TVの場合、ESPN UnlimitedのコンテンツはYouTube TVのアプリからの提供になる。Google側も利用者がアクセスしたコンテンツが分かり、利用者に見えるのはYouTube TVのブランドである。また、発表されていないが、YouTube TVからの提供になるということはYouTube TVで配信されるESPN Unlimitedの広告枠の販売にもGoogleが関与する可能性もある。
さらに、DisneyはYouTube TVに対してチャンネルをアンバンドルする。これまでの契約ではESPNが欲しければ、Disney Channel、FX等の他のDisney系のチャンネルも一緒に契約する必要があった。アンバンドルしたことで、YouTube TVはスポーツ専門のパッケージを提供し、ESPN系のチャンネルを加えるが、FX等を除くこと、あるいは家族向けにDisney Channelはあるが、ESPN系は無いパッケージ等を作ることが可能になる。
多くの再送信契約にはMost Favored Nation条項が含まれており、他の事業者もDisneyに対して同様な条項を求めることが可能であり、この変化はYouTube TVだけでなく、多チャンネル放送事業全体に影響を及ぼしていく。
