AT&Tのブロードバンド戦略

AT&TはNorth Carolina Next Generation Network(NCNGN)との契約を締結し、ノースカロライナ州のローリー、ウィンストン/セーラム、チャッペルヒル等の都市で高速ブロードバンドサービスのGigaPowerを提供する。AT&TはテキサスのオースチンでGigaPowerの300 Mbpsのシンメトリカル・サービスをスタートさせており、1Gbpsにアップグレードする。ダラス、サンアントニオでもGigaPowerをスタートさせる予定である。AT&TはFTTHのVerizonとは違い、FTTN(ADSL+、あるいはVDSL)を主体とし、一部でFTTPを導入している。AT&Tは、GigaPowerを含め、そのブロードバンネットワークの高速化に投資する事を発表している。AT&TはDirecTV買収の効果として、コンテンツ調達費を20%を削減する事が可能になるなど、買収のシナジー効果で最初の3年間で$16億をセーブ出来、その分はブロードバンドへ投資すると発表している。

しかし、AT&Tは全米でギガビットのネットワークの構築をする訳でない。AT&Tは一部の地域では高速ブロードバンドを構築する。DirecTV買収を認めてもらうために、AT&TはGigaPowerにより高速なネットワークを導入し始めている功績を上げている。しかし、AT&TはVelocity IP(VIP)プロジェクトの一部として予定されている既存のUverseを高速化する為の投資を一時保留にしている様だ。

AT&TはDirecTVの買収の判断が下るまでは、PR効果の高いGigaPowerプロジェクト以外の固定ネットワークのアップグレードは保留にするつもりである。買収がNOになった場合は、予定された様に既存のUverseへの投資と拡大を行うが、OKになった場合、AT&Tは全米制覇に乗り出す。AT&TはDirecTVの買収により全米での多チャンネルサービスの可能になる。しかし、DirecTVにはブロードバンドは無く、VODはDVRへの蓄積、あるいは他社のブロードバンドの利用になっている。AT&Tは固定LTEを使い、

DirecTVの多チャンネルサービスの双方向化を行う予定である。Project VIPの内、固定網に対する投資の多くは凍結になっているが、固定LTEへの投資は続けている。DirecTV買収に関する議会のヒアリングでは、AT&Tは1300万の田舎の世帯に対して固定LTEを使い15~20 Mbpsのサービスを提供する事を約束している。

DirecTVの買収が許可されてもAT&Tは固定回線の高速化を進める。しかし、それは一部の都市に限られる。ComcastのTWC買収がOKされた場合、Comcastは殆どの都市でブロードバンドの提供が可能になる。これに真っ向から対向する為はAT&Tは大都市でより高速なブロードバンドを導入する必要がある。AT&Tの営業地域外の都市も多くあり、大きな投資になる。もう1つの対抗方法は、全米での多チャンネルサービスと中速のブロードバンドを提供する事である。速度ではComcastに負けても、サービスが提供出来る地域ではComcastに勝つ。

DISHのバーチャル・ケーブルTV

DISHはブロードバンドを使ったバーチャル・ケーブルTVサービスを開始しようとしている。月額は$30程度で20から30チャンネルを提供する予定である。サービスは既存の多チャンネルサービス加入者ではなく、新規利用者で、主にブロードバンドでテレビ番組を見ている世代になる。多チャンネルサービスへの勧誘が目的で、既存のサービスへの競合を避ける為に最大加入者数を限定し、コンテンツ事業者の協力を得ている。しかし、ビジネスになるのか。

$30は高すぎるとの意見がある。これにブロードバンドの料金を加えれば、安い多チャンネルサービスと同じになり、メリットは無いかも知れない。しかし、このサービスの対象利用者はすでにブロードバンドうと使い、Netflix等に加入している人である。ブロードバンドにはすでに加入しており、ブロードバンドの料金は考慮しないであろう。

$30と言う価格自体はどうか? これは、提供されるチャンネルによる。スポーツ専門のESPN/ESPN2はテレビネットワークとしては最も高価で、1加入者当たり月$8ドル近い契約料になるが、チャンネルとして不可欠である。高価なスポーツチャンネル無しで、安い価格にする方法もあるが、ドラマ主体であれば、Netflix、Hulu Plus等で間に合い、リニアなサービスに加入する理由は少ない。Netflix等との差をつけるにはリアルタイム性が重要なスポーツチャンネルが必要であり、そのためには$30は仕方がないであろう。また、Aereoの敗訴はこのサービスに取り、プラスになる。Aereoのサービスがあると、このサービスとの比較になり、$30は高く見えが、その心配は無くなった。

ComcastのWiFiネットワーク

Comcastは同社のケーブルモデムサービスに加入している世帯に導入されたArris社のゲートウェイに搭載されている「ゲストモード」を利用したWiFiホットスポット網を提供しようとしており、すでにヒューストンでサービスを開始し、年内に800万のゲートウェイをWiFiホットスポットにする予定である。すでに家庭に導入されているゲートウェイを使う事で、そのWiFiホットスポットを住宅地にも拡大する事が出来る。

Comcastはホットスポット向けに提供される回線は、加入世帯向けとは別の物で加入者のブロードバンドサービスには性能、あるいはセキュリティ上の影響は全くないと語っている。Comcastは了承を得られない家庭のゲートウェイをホットスポットにする事は無いと語っているが、加入者宅内のデバイスをホットスポットにする事に対する批判もあり、予定通りに800万のゲートウェイをホットスポットにする事が出来るのかは不明である。

CanoeがIPにも対応

ケーブルTV事業者向けのVODでのダイナミックな広告挿入の共通プラットフォームを提供しているCanoe LLCはすでにComcastとTime Warner Cableでの導入が始まり、さらにBright House、Cox等も導入の準備を進めている。次のプロジェクトとして、現在行っているQAMで提供されているVODに加え、IPベースのVODのダイナミックな広告挿入のプラットフォーム構築を開始している。CanoeはそのIPベースの広告挿入プラットフォームは広告挿入システムのBlack Arrow、それに最近にComcastが買収したFreeWheelに対応すると語っている。

元Hulu CEOの新会社

噂になっていたHuluの元CEO、Jason KilarとCTO Richard Tomのスタートアップ会社の名前はVesselと発表になった。ビデオ関係の事業である事以外は極秘である。これまではFremont Projectと呼ばれており、あるコンファレンスに出席した時の社員のバッジは単に「Start-up」と書かれていた。しかし、若干の情報は漏れている。サービスはモバイルプラットフォーム主体で、HuluとYouTubeのミックスと言われている。コンテンツはテレビ番組等の既存の物ではなくYouTubeのチャンネルの様なオリジナルとなり、Huluに近いビジネスモデルで、広告とサブスクリプションのミックスになるらしい。VesselにはBenchmark、Greylock、それにBezos Expeditions等が投資している。Bezos Expeditionsは、Kilar氏が働いていたAmazonのCEO、Jeff Bezosの個人的な投資会社である。