CES 2017: スマートTV/ストリーミング・プレーヤ

RokuはそのTVパートナーにElement Electronicsを加えた。Element Electronicsは2017年中にRoku内蔵のテレビの販売を開始する。Roku内蔵のテレビはChanghong、Hisense、Hitachi、TCL、Sharp、Insignia等が発売しており、RokuによるとスマートTV市場におき、同社のプラットフォームを採用している会社の合計シェアは1年間で8%から13%に増えている。Roku内蔵のテレビは現在、約100モデルあるが、それを2017年中に150モデルにする事をRokuは狙っている。しかし、競合も登場している。

その1つはAmazonで、中国のTongfang Globalと契約し、同社が持つテレビブランドのSeiki、Westinghouse、それにElement ElectronicsがFire TVを内蔵した4Kテレビを発売する。ElementはRokuとFire TVの両方をサポートする事になるが、Rokuから他のプラットフォームに乗り換えるブランドも登場している。これまでRoku TVを売っていたHaierはRoku TVの製造をストップし、2017年モデルからはGoogleのChromecastを使う。Chromecast TVをはVizio、Philips、Polaroid等も発売/発表をしている。自社でスマートTVを開発するのでは無く、Roku、Chromecast、Android TV、Fire TV等のストリーミング・プレーヤを内蔵するトレンドになっている。

CES 2017: VR

新たなコンシューマ向けVRヘッドセットの発表は無かったが、VR/ARはCES会場の多くの場所にあった。コンシューマ向けでは無いが、VRヘッドセットとパナソニックの製品は視野を通常の100°+から220°にする事で、頭を動かす事無く広い範囲が見え、より自然な体験を可能にしていた。今年のCESでは製品(ソリューション)の説明にVRが多く利用され、特に自動車の新たな体験を実感させる為に使っているのが目立った。まだ無い製品を体験させるにはVRの価値は高く、産業向けでは現実的な利用になっている。しかし、コンシューマ(エンターテイメント)向けでは360°ビデオを含め、方向性は今年のCESではまだ見えていなかった。

コードカッティングは進むか

PriceWaterhouseCoopers(PwC)が1200人を対象に行った調査では多チャンネルサービスの加入者減少が止まる可能性がある。同社の調査で新たに多チャンネルサービスに加入すると答えたのは84%で、昨年の70%より増えている。2014年の91%より低いが、多チャンネルサービス加入に対する関心が高まっている傾向がある。

多チャンネルサービスを解約する大きな理由は料金の値上げである。PwCの調査で多チャンネルサービスの料金は安定していると答えたのは76%で、値上げが少なかった事が多チャンネルサービス加入の意思を増やしている様だ。

しかし、そうであれば、コードカッティングは新春からまた増え始める可能性がある。殆どの多チャンネルサービス事業者は2017年に値上げを予定している。Comcastは基本パッケージの料金を1月から平均で3.8%値上げするのに加え、地上波追加料金を$5から$7、そして地域スポーツチャンネル料金を$3から$5に値上げする。地上波と地域スポーツ料は基本サービスであるので、Comcast の実質の値上げは3.8%より多い。Dish Networkは全体で$5程度の値上げを予定しており、Cox、Mediacomも地域スポーツチャンネル等 の値上げを発表している。

ゼロレーティングは合法か

携帯電話事業者が特定のOTTサービスのトラフィックを課金対象から除くゼロレーティング(Zero Rating)はネットワーク中立性上に触れるのかが議論されている。T-Mobileは2014年に一部のストリーミング音楽のサービスをパケットの課金対象から外し、2015年末からはNetflixを含めたOTTビデオのサービスを480p配信で見た場合も課金対象外とした。対象外のサービスもあるが、T-Mobileのゼロレーティングは複数のサービスが対象で、特定のOTTサービスを優遇する為ではない。他の携帯電話事業者と競合する為の施策であることから、これに対する反対論は殆ど無かった。しかし、Verizonは自社のOTTサービスのGo90をゼロレーティングし、AT&TもDirecTV Nowを課金対象から外した事で、議論が活発になっている。

ネットワーク中立性規制では通信事業者が特定なネットワークサービスのトラフィックを優先する事を禁じている。自社のOTTビデオサービスをゼロレーティングする事がそのサービスを優先するのであれば、規制違反である。

OTTビデオと広告

2016年前半におけるインターネット広告は前年比で19.5%の成長をし、$327億に達した。2016年全体では放送広告(地上波と多チャンネルサービス)を超える事が確実である。しかし、ビデオ広告がインターネット広告に占める割合は7%でしかなく、構成比として増えていない。OTTビデオの視聴は大きな成長をしているが、ビデオ広告は増えていない。

FreewheelのVideo Monetization Report Q3 2016によるとビデオ広告が再生されているデバイスとしてはコンピュータが最も多く、43%となっている(Freewheelのレポートには多チャンネルサービスのVODが含まれているが、それを除いた数字)。しかし、Ooyalaの統計によるとQ3で視聴されたOTTビデオの52%はスマートフォンとタブレット(モバイルデバイス)上で再生されている。また、Nielsenの統計ではOTTビデオ視聴時間の61%はOTTデバイス(コネクテッドTV)で行われている。

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