Deutsche Telecom子会社で,ハンガリー最大のISPのT-Online HungaryはMicrosoft IPTVのテストを行っている。技術テストはこの1月に完了し,さらに18チャンネル,VOD,DVRを含んだフィールドテストも行い,現在,500世帯を対象のより本格的なテストを行っており,夏には一般利用者を使ったマーケティングテストを開始する予定。これまでに10社(AT&T,BT,Deutsche Telecom,Slovak Telekom,Swisscomm/Bluewin,TCD,Telecom Italia,T-Online France,Verizon,Ya.com)がMicrosoft IPTVの採用を発表し,5社(T-Online Hungary,BellSouth,Bell Canada,Telkom South Africa,Reliance Infocomm)がテストを行っている。
ABCがインターネットでTV番組を無料で提供
音楽業界はインターネットを使ったビジネスモデルへの移行で失敗を犯した。CDの販売ルートにこだわり,業界はNapstarを敵視し,インターネットによる音楽の流通を生かすのでは無く,逆にCDのリッピングを難しくする等,ユーザまでも敵にする動きに出た。その結果,CDの売上げは落ちたが,結局はAppleのiPod/iTunesに救われ,インターネットで儲け始める事が出来た。音楽業界がもっとうまく動けていたら,自分たちでインターネットを使ったビジネスモデルが出来,Apple等にマージンを取られることは無かったであろう。
この失敗を見ているビデオコンテンツ業界は,積極的にインターネットを利用したビジネスモデルを試している。映画をインターネットで提供しているMovielinkはハリウッド映画会社のジョイントベンチャーである。最近では,ケーブルTV上でのTV番組のVOD,さらにはインターネットでのTV番組の提供も始まっている。
VOD,あるいはインターネットによるコンテンツの提供をする場合,既存のルートにマイナス影響を与えないように気遣う必要がある。特にTV番組の場合,放送局の利益を守る必要がある。アメリカではABC等のネットワークが全米の局を保有する事は禁じられている。1つの会社が保有可能なTV局の範囲は人口の39%であり,残りの61%へのリーチは独立した放送局会社に頼る必要がある。ネットワークとしてこれらの会社を怒らせることはマイナスである。NBCがComcastのケーブルTV上でその番組をVODしているが,サービスを提供しているのはNBCが直接保有している局がある地域のみで,Gannett等の別社がNBC局を持っている地域ではこのVOCサービスは提供していない。
放送局を持つ会社は,TV番組がVOD,インターネット等で流通する事は視聴者を減らし,広告収入が減る可能性があると反対しており,また,TV番組がiTunes等で$1.99で売れるのは自分たちが放送し,ポピュラーにしているからであり,自分たちにもコミッションが入るべきだと考えている。放送局会社,ケーブルTV事業者等の既存ルートを敵にする事はリスキーであり,ビデオコンテンツ事業者は新しいルートを開発しながら,既存ルートも保護すると言うバランスを保とうとしている。
しかし,Disneyは独自にコンテンツの提供を行い,既存ルートに競合する積極的な動きに出ている。最初は,iTunesでの番組の販売である。ネットワークの中で番組を販売し始めたのはABCが最初であり,放送局会社の批判を集めた。次にDisneyはMovieBeamを復活させた。MovieBeamは地上波放送のデータ放送を使い,専用のSTBに映画を蓄積し,オンデマンドで提供するサービスである。MovieBeamはケーブルTV事業者のVODに競合するだけでなく,公開日はDVDのリリースと同じであり,DVD販売,あるいはレンタル事業にも競合する。MovieBeamはDisney自体が提供し,ケーブルTV,ISP等の事業者に頼っていない事でも注目されている。
そして,今度は5月から2ヶ月間の間,Lost,Desperate Housewives等の新作のヒットTV番組を無料で,ABCのウェブサイトから提供する事を発表した。ABCはそのウェブサイトでこれら番組を500×282ピクセル,700×394ピクセルの2つのサイズで提供する。視聴者はポーズ,巻き戻しをする事が出来るが,早送りで広告をスキップすることは出来ない。広告主として,AT&T,Cingular,Ford,Procter &Gamble,Toyota,Unilever,Universal Pictures,Walt Disney等がすでに契約している。これは,iTunesで番組を売る以上に,放送局会社の視聴率に影響を与える可能性がある。ABCは広告を売り,収入を得るが,放送局会社にはメリットは無い。2ヶ月間のテストであるが,放送局会社はそのインパクトを心配している。また,インターネットでの番組の無料提供はiTunesでの販売にも影響をあたえるであろう。何よりも,業界にショックを与えたのはABCがこの発表をNational Cable Telecommunications Association(NCTA)のThe National Showで行った事である。NCTAはケーブルTV事業者の集まりであり,この場で自分たちの事業に無くす可能性のあるコンテンツ事業者による直接の番組の提供を行ったDisneyへ批判がある。
また,Dieney-ABCはソープオペラ・ファンを対象に「Soapnetic」と呼べれるブロードバンドTサービスを開始した。SoapneticはDisney-ABCの多チャンネルTV向けのネットワークSOAPnetのスピンオフでソープオペラに関わるオリジナル番組を提供する。Soaneticは契約したISPのみが提供可能なコンテンツとして提供され,現在,Verizonが契約している。
AT&Tのビデオ戦略
同じ電話会社でもVerizonとAT&Tのビデオ参入の戦略は大きくと違う。Verizonは技術的にまだリスクのあるIPTV方式は避け,光ファイバー上でQAMをオーバーレイする伝送方式を採用している。これにより,VerizonはMSOが採用している既存のヘッドエンド装置,STBを採用し,リスクを低減している。Verizonはフランチャイズに関して批判をしており,州単位,あるは全米単位のフランチャイズ契約を求めているが,自治体を無視するのでは無く,1つずつフランチャイズ契約を行い,サービスを提供している。これに対し,AT&TはIPTVを採用し,また,規制の書き換えに期待し,ここの自治体とのフランチャイズ契約は行っていない。Verizonの方が手間がかかる戦略であるが,着実である。AT&Tはまだサービスを始めることが出来ていないのに対して,すでにVerizonは幾つかの地域でFiOS TVのサービスを開始している。
Verizonが力を入れている地域の1つはAT&Tの地元のテキサスである。Verizonはダラス郊外のケラーでサービスを始め,現在,ダラス周辺の16のコミュニティーでサービスを行っている。これはAT&Tにプレッシャーになり始めている。AT&Tがサービスを始める前にVerizonが地元のテキサスで成功して立場がなくなる。
AT&TはIPTVが提供出来るまでの間をDBSとブロードバンドビデオのハイブリッドサービスで乗り切る戦略を採用した。AT&TはこれまでEchoStarのDISH Networkを再販しいたが,この程,DISH NetworkのSTB,DVR機能,それにAkimbo,Movielinkのブロードバンドビデオを統合したHomeZoneと呼ばれるサービスを発表した。HomeZoneのMediaPortalと呼ばれるSTBはAT&Tと2Wire社が共同開発した物で,DVR機能を持つDISH NetworkのSTBであるだけでなく,インターネット接続機能を持ち,そのHDDにAkimbo,Movielinkの提供するビデオコンテンツを蓄積し,VODサービスを提供する機能を持っている。
この発表とほぼ同時にAT&Tは,6 MbpsのADSLサービスも発表した。これまでADSLはケーブルモデムに比べ遅いと言われてきたが,この差を縮めるサービスであり,下流で3 Mbpsから6 Mbps,上流で384 Kbpsから768 Kbpsの速度がある。AT&TはこのEliteと呼ばれるサービスのコンテンツとしてStarz Entertainmentsが最近開始したVongoと呼ばれるサブスクリプションVODのサービスを再販する契約をした。Vongoは月額10ドルでPCから1500の映画へのオンデマンドのアクセスと,多チャンネルネットワークのStarzの放送をストリーミングで受けることが出来る。
フランチャイズ争い
カンザス州も州単位でケーブルTVフランチャイズを提供する州法を通過させ,テキサス州に続き州単位でフランチャイズを提供する州になった。この他,ミズーリ,カリフォルニア等で同様の法案が検討されている。
しかし,イリノイ州ではCarol Stream等の自治体はProject Lightspeedの一環として光ケーブルを引き始めたAT&Tに対して,フランチャイズ契約無しでビデオサービスが提供可能なネットワークを引くことを禁止する条例を作った。これに対して,AT&Tはこれらの自治体を訴訟している。
RealNetworkがOCURに認められる
CableLabsはPCからケーブルTVの番組をアクセスする事を可能にするOpenCable Unidirectional Receiver(OCUR)の規格にすでにOKされていたMicrosoftのWindows Media Digital Rights Management(WMDRM)に加え,RealNetworksのHelix DRMを認めた。OCURはCableCARDを使い,STB機能をPCに内蔵する事を可能にする。RealNetworkのDRMはTime Warner CableがサンディエゴでテストをしたケーブルTV番組をブロードバンド回線で,PC向けに放送するサービスに採用されていた。
