英国のケーブルTV事業者のNTLとVirgin Mobileは9.19億ポンドでNTLがVirgin Mobileを購入することで合意したと発表した。合併後の会社はVirginブランドを使うと思われ,ビデオ,携帯,固定電話,ブロードバンドを1つのブランドで提供する英国初のクアダプルプレー事業者となる。
BSkyBのモバイルとブロードバンドサービス
英国のBSkyBはSky by BroadbandとSky by Mobileと呼ばれる新サービスを開始した。Sky by Broadbandはインターネットを使ったPC向けのVODで,BSkyBのプレミアムサービスに2つ以上加入してる利用者に無料で提供される。Sky Movie 1と2の加入者は200の映画(1000以上に増える予定),Sky Sports1と2の加入者はプレミアシップ,UEFAカップからの1000以上のハイライトを視聴出来る。映画のダウンロードは2 Mbpsの回線で1時間程度かかるが,一度HDDに蓄積されると30日間は何回でも見ることが出来る。ビデオは30日後に自動的に消却される。1つの世帯(プレミアムチャンネルのアカウント)に対して1つのPCにしかダウンロードは出来ず,またDVD等にコピーする事も出来ない。
Sky by MobileはBSkyBのプレミアムサービスに2つ以上加入してる利用者,あるいはSky Betに加入している利用者に無料で提供される。1つのアカウントに対して2つの携帯電話にSky by Mobileのソフトウェアをダウンロードし,Skyの提供するビデオニュース,ビデオクリップを見る,あるいは外出先からSky+ DVRの操作を行うことが出来る。
NTLとTelewestの合併
英国の2大ケーブルTV事業者のNTLとTelewestの合併はNTLがTelewestを買収するのではなく,TelewestがNTLを買収する形で行われる事が合意され,2006年1月に公正取引局からの許可が下りた。TelewestがNTLを吸収する形にしたのは,NTLが持つプログラミング事業のFlextechを保護する為である。Flextechの重要なコンテンツはUKTV Gold,UKTV History等の10のチャンネルで構成されるUKTVであり,これはBBCの古い番組を使った物で,BBCが50%の投資を行っている。NTLがTelewestを買収した場合,契約上ではBBCがNTLの持つUKTVの50%を買い取ることが出来る。NTLとTelewestは合併後,Flextechを独自に運営するのではなく,パートナーを捜している。Five(元のChannel 5)を持っているドイツのRTLがFlextechに投資する意志があると報道されている。
CableCARDとDCAS
CableCARDの目的はシンプルな物である。1996年通信法にあるケーブルTV`事業におけるサービスとCPE(STB)の分離を行うためには互換性の無い部分であるコンディショナルアクセス(CAあるいはCAS)の機能をPCカードとして切り離し,互換性のあるチューナ部分を作ることである。もし,これが10年前であれば簡単に行われたであろう。しかし,ケーブルTVが単純な放送の伝送では無くなっている現在,CASをSTB(他のケーブルTVチューナを持つ製品)から分離する事はシンプルでは無くなっている。
最初の問題は現在のケーブルTVサービスはVODを含み,双方向化されている事である。現在提供されているCableCARD 1.0は単方向(放送)しかサポートしていない。これではIPG(Interactive Programming Guide)も,VODのサービスも受けることが出来ない。CableCARDを搭載したDCR(Digital Cable Ready)のTV等は2004年7月から出荷されているが,まだ6万台程度しか出荷されていない。
双方向アプリケーションのサポートはCableCARDの双方向化だけの問題ではない。双方向対応のCableCARD 2.0は規格化されているが,これを使い双方向アプリケーションを走らせるにはDCRで走るITVミドルウェアが必要となる。CableLabsは標準ミドルウェアとしてOCAP(Open Cable Application Platform)を開発している。双方向のDCR製品はOCAPを走らせる必要があり,さらにMSOの方でも提供している双方向アプリケーションをOCAP対応にする必要性がある。
MSOはFCCに対して2006年からOCAPの導入を開始させ,2009年7月1日には全システムでの導入を完了させる事を約束している。Time WarnerはSamsungとの契約で同社のOCAP対応のTVを使い,ノースカロライナのシステムでテストを行ってきており,ニューヨーク等のシステムで今年からOCAPの導入を始める事を発表している。ComcastはSamsung,PanasonicからOCAP対応のSTBを購入する契約を発表しており,フィラデルフィア,デンバー,ユニオン(ニュージャージ),ボストンのシステムでの導入を開始する。ComcastはOCAPを使ったアプリケーションとしてSTBのリモコン1つでホームシアターの音声等,全機能をコントロールする機能を開発している。
CableCARDの導入
|
MSO |
CableCARD利用世帯数 |
CableCARDレンタル価格(月額) |
CableCARDインストレーション価格 |
| Adelphia |
5,874 |
$1.75 |
$40.00 |
| Cablevision |
3,799 |
$1.25 |
$34.95 |
| Charter Cable |
3,900 |
$1.50 |
$32 |
| Comcast Communications |
27,875 |
$0 |
$23.12 |
| Cox Communications |
6,895 |
$1.99 |
$22.91 |
| Time Warner Cable |
9,240 |
$1.75 |
$18.95 |
| 2005年10月にMSOがFCCに対して行った報告から | |||
しかし,OCAP対応だけで問題は済まない。CableCARD 2.0は双方向であるが,上り下りとも1つのストリームにしか対応していない。DVR機能では最低でもデュアルチューナであり,2つのストリームへの対応が必要とされる。今後,放送と双方向アプリケーションを組み合わせたサービスも考えられ,複数のストリームのサポートは不可欠である。CableLabsは現在,6つのストリームに対応するCableCARD,「Mカード」を開発している。ケーブルTVが単純な放送以上になっている今,STBが持つ機能は重要である。MSOとしてSTB(その機能)がアンバンドルされ家電店で売られるようになっても良いが,それら製品が今後提供されるアプリケーションに対応出来ないと困る。レンタルであれば,新しいアプリケーションを提供するのに新しいSTBは必要とされれば交換する事が出来るが,新機能を提供するたびに視聴者に新しいDCRのTVを買ってもらうことは無理である。コンシューマもVODが出来ないTVとか,次世代のIPGには対応出来ないTVを買うはずは無い。ケーブルTVサービスとSTBのアンバンドルを成功させるにはDCR製品は未来対応で無ければならない。TVは通常1,2年で買い換える製品ではなく,これを数年後のITVアプリケーションに対応させておくことは困難である。
未来のアプリケーションに対応させるには現在使われていない機能も盛り込む必要があり,ハードウェアは複雑化する。MSOはデジタルケーブル加入世帯を増やし,いずれは100%デジタルの環境にしようとしている。その為には出来るだけ低コストのSTBが必要である。2007年7月1日からMSOはCAS内蔵のSTBの提供が出来なくなるが,ベーシックなSTBもMカード対応の高価なSTBにしていたのではサービスは普及出来ない。
CASをSTBから切り離す方法としてMSOはソフトウェアベースのCASをヘッドエンドからダウンロードする,ダウンローダブルCAS(DCAS)を認めることをFCCに求め,FCCはこれを認めた。DCASはCableCARD,そのインタフェースが不必要な分,ハードウェアコストを下げることが可能なだけでなく,加入者に対してCableCARDを届け,インストールしたり,サービスを辞めた時点でCableCARDを回収する手間も省ける。
しかし,DCASは新たな課題を作っている。MSO,それに家電ベンダーは今後,CableCARDとDCASの両方をいかにサポートするのか。永続的に両方をサポートするのか,あるいはいずれかはDCASのみに移行するのか,それはどの様に行うのかを考える必要がある。Time WarnerはDCASは2006年末から一部で採用が始まり,本格的な導入は2007年から行われ,2008年には全国規模でDCASが導入されると語っている。DCASはSamsungが昨年末にサポートを発表したのに続き,CESではLGもDCASのライセンス契約を行った事を発表した。
ホームメディアセンター
Comcastは同社の次世代ネットワーク向けのSTB(RNG = Real Next Generation)戦略を発表した。これはアナログ無しのフルデジタルネットワーク向けのSTBで,Comcastはローエンド,ミッドレンジ,ハイエンドの3つのタイプを提供する。ローエンドのRNG100としてはSamsungから20万台の標準解像度のSTBを購入する(オプションで50万台追加可能)契約を結んだ。このSTBはDOCSIS 2.0を内蔵し,OCAPに対応し,MPEG-2とMPEG-4の両方をサポートする。ミッドレンジではPanasonicのDVR内蔵のHD対応STBをRNGT200として採用する。Panasonicとは最低で25万台のSTBを購入する契約を結んだ。また,ComcastとPanasonicは共同でOCAPのエクステンションを開発し,OCAPのエクステンション対応の製品はSTBのリモコンから全て操作可能にする事を予定している。
Panasonicが提供するHD対応のDVRタイプのSTBは現在ではハイエンドであるが,これがRNGではミッドレンジとなっている。RNGのハイエンドのSTB,RNG1000はメディアセンター機能を持つ物で,まだ開発中であり,ベンダーは未定と発表されている。
多チャンネル環境を想定したホームメディアセンター環境としてはDigeoのMoxi Media Centerがある。Charter等のMSOがすでにMoxiを採用しており,ComcastもMoxiのテスト導入を行っている。次世代バージョンのMoxi IIでは複数のクライアントSTB,Moxi Mateをサポートし,マルチルームのネットワーク環境を構築出来る。Motorolaが新しく発表したSTB,QIPシリーズは同軸ケーブルを使った高速ホームネットワークのMoCAをサポートし,STB間,あるいはPCとコンテンツの共有が出来る。
よりPCとの接続環境を意識したソルーションの1つにIntelのViiv(ヴァイヴ)がある。Viivはホームネットワーク上のビデオコンテンツのトータルなソルーションであり,ビデオコンテンツを著作権保護をしたままでサーバー,STB,TV等の間で配信する事を可能にする。Viivは家庭内のサーバー,ネットワーク,クライアントの仕様だけでなく,コンテンツの販売から,ユーザインタフェースまで,トータルなソルーションを提供しようとしている。DBS事業者のDirecTVはViivをサポートする事を発表している。
Viivのサーバーは現時点ではMicrosoft Media Center PCになっているが,Microsoftは独自でメディアセンターのソルーションを提供している。同社の次世代OSであるVistaはCableLabsからOpenCable対応の認定を受けており,Vistaを搭載したPCにCableCARDを使ったチューナカードを搭載し,デジタルケーブル対応のメディアセンターとして使うことが出来る。MicrosoftはMedia Centerのエクステンション,MCXを開発しており,MCXを搭載したTVではMedia Center PC上の著作権保護されたビデオコンテンツを見ることが可能になる。このソルーションはCableCARD搭載のTVと同じで単方向であり,VOD等のアプリケーションには対応していない。しかし,MicrosoftはそのSTB向けのOSのMicrosoft TV Foundation EditionはOCAP互換になり,さらにMCXにも対応すると発表しており,いずれはVista Media Center PCもOCAP対応になるであろう。
この他,S-Aの買収を行う予定のCiscoも当然,ソルーションを開発中であろうし,また,iPodによりネットワークからのコンテンツ購入に火を付け,ビデオコンテンツの販売も始めているAppleがこのトレンドを全く無視しているとは考えられない。さらに,ビデオに力を入れ始めているポータルのYohoo!,Google等もメディアセンターへの関わりを強めてくるであろう。Yahoo!はPCに接続されたTVでウェブ,ネットワーク上のビデオ,さらにPC上のマルチメディアコンテンツにアクセスする事を可能にするソフトウェアのYahoo Go TVをCESで発表している。CBSのTV番組等の販売を始めたGoogleにはまだメディアセンター的なソルーションはないが,GoogleはPC向けのソフトウェアGoogle Packの提供を始めており,いずれはこれにメディアセンター的なソフトウェアが加わると噂されている。
