調査会社のJuniper Research社が発表した白書、「Tuning in to Mobile TV」によると、モバイルTVの世界市場は2009年の32億ドル規模から、2015年には70億ドルに達する。現在の、モバイルTV市場は殆どが、モバイル通信回線を使ったストリーミングであり、 モバイル放送の規模はわずかでしかない。Juniperによると、2009年での世界における有料モバイル放送への加入者数は320万人程度で、モバイルTV視聴者全体の0.1%でしかない。Juniperは今後、専用の帯域を使ったモバイル放送が急成長を見せる可能性は低く、モバイルTVの主体はストリーミングのままで進むと予測している。この白書はJuniper Researchのウェブサイトからダウンロード可能。
QaulcommがFLO TV売却を検討
2007年にサービスが開始されたFLO TVは、低迷したままで、成長をしていない。アナログ停波でサービス地域が広がった事、それにFLO TVが専用端末のPersonal TVと自動車向けのシステムを売り始めたことで、事業がピックアップする事が期待されていたが、成功の気配は無い。FLO TVは、その加入者数を発表していないが、アメリカでの加入者は増え、日本でのサービス展開も進んでおり、新たに台湾のFAR EASTONEと契約し、台湾でのサービス開始を検討しており、事業は順調だと発表している。しかし、FLO TVの親会社のQualcommは、FLO TVの売却も視野にある事を発表している。
FLO TVは現在、AT&TとVerizonが売っているが、利用者の関心は低い。AT&TもVerizonも、スマートフォンを売る事に熱心で、FLO TVの販売には力を入れていない。QualcommはFLO TVの技術はデータ放送にも使え、将来的な物であるとしているが、モバイルTV放送向けとしては成功する可能性は減っている。携帯電話の利用者は、携帯電話をTVの代わりに使うことより、インターネット端末として使う事に関心を示している。
立ち上がり始めたモバイル放送
地上波を使ったモバイル放送(ATSC M/H)のテストは、5月からワシントンDCで行われている。利用者は、画質は予想より、かなり良く、また、受信状況も良いと評価をしている。ユーザからのサービスに対する調査はHarris Interactiveが行っており、週ベースに短いアンケートをしている。また、視聴データは、別途Rentrak社が収集している。Rentrakは、テストに使われている携帯電話、ネットブックにいつ、どの番組を見たかを記録するソフトウェアを搭載し、データ収集を行っている。Harris InteractiveとRentrakが収集しているデータは、統合されより詳しい視聴傾向を分析していく。このテストでは9局が合計で、23チャンネルの放送を行っている。
テストはまだ実行中であり、受信可能な携帯電話は一般向けには販売されていないが、ワシントンDC以外の地域でも40近い局が、モバイル放送を始めている。殆どの局は、モバイル放送の為にはHarris社のハードウェアを採用している。Harris社は、モバイル放送に必要な器材は$150,000前後で、購入可能だと発表している。Axcera社もモバイル放送の機器を販売開始しており、同社は$100,000でモバイル放送を開始する事が出来ると語っている。
$100,000から$150,000の投資で、モバイル放送を始めることが出来るが、それで十分かは分からない。モバイル放送が受信可能な範囲は、既存の放送の範囲とほぼ同じであるが、受信状況はケースバイケースであり、実際にサービスを提供しないと分からない。受信範囲を拡げるには、FLO TVが行っているような、低出力のアンテナを複数使う、SFN(Single Frequency Network)を採用する必要がある。SFNが必要かは、採用するビジネスモデルに大きくと左右されるであろう。モバイル放送を無料で提供するのであれば、受信可能地域がある程度限定され、受信状況が悪い場所があっても、大きな問題にはならないかも知れない。しかし、有料サービスとしてモバイル放送を提供するのであれば、受信状況が悪い地域があっては問題であり、SFNは必要になるであろう。
ワシントンDCでのテストは、どのビジネスモデルがベストかを判断する事がその目的の1つであるが、放送局の一部はすでに、有料放送に目を向けている。ネットワークのNBC、Fox、Ion Mediaは5月にMobile Content Venture(MCV)を設立し、有料モバイル放送のコンテンツを制作する事を発表している。MCVはBelo、Cox、Media Group、E.W. Scripps、Gannett、Hearst、Media General、Merideth、Post-Newsweek、Raycomの9つの放送局会社が作った、Pearl Mobile DTVグループと有料放送のサービスを立ち上げることを計画している。
有料サービスの方が潜在的な収入は多い。しかし、有料サービスを提供するには、既存の地上波放送とは異なるコンテンツを制作・調達する必要があり、また、SFN等でを採用する事で、サービス範囲を拡げる必要があり、投資額は増えることになる。それに見合う加入者を得ることが出来るかが、放送局に取り、重要なポイントである。
モバイル放送関連の別の話題で、FCCはモバイル放送向けの端末に対するアナログチューナの搭載を免除した。2002年にデジタル移行への準備の為に、TVチューナーにはデジタルとアナログの両方を受信する機能を持つ事が義務付けられた。アナログ停波行われたが、低出力局、中継局はまだアナログ放送であり、通常のTVでは依然として、両方のチューナを搭載する事が義務付けられている。
Tyco ElectronicsがADCを買収
Tyco Electronicsはブロードバンド通信機器メーカーのADC Telecommunications社を12.5億ドルで買収した。ADCは有線、モバイル通信向けのブロードバンド機器を開発しており、Comcast、Cox、AT&T、Verizon、Bell Canada、Sprint Nextel、Qwest等に製品を売っている。Tyco Electronicsは2009年の年商103億ドルの会社で、自動車向け電子、通信、医療、エネルギー等の分野に参入している。Tycoは、ADCの分散アンテナシステムが最も重要な技術だと評価している。ADCの2009年の売上げは19億ドルであった。
ホットなシリコン・チューナ市場
ICベンダーはチューナに必要な回路を半導体で実現したシリコン・チューナーの市場を狙い、競争を始めている。調査会社のIn-stat社は、シリコン・チューナーの市場は2014年で5億ドル市場になると予想をしている。NXP社が現在、トップベンダーであり、その他Microtune、Maxlinear、Trident、Braodcom、STMicroelectronics、TI等多くのベンダーが市場に参入をしている。
