2月14日でYouTubeは二十歳になった。TubeはCathode-ray Tubeのことで、Boob Tube(Boobはバカ者)がテレビの俗称であるようにテレビを意味している。しかし、テレビネットワークはYouTubeにTV番組が配信されることを大きな問題とし、YouTubeを敵視していた。しかし、TV番組のクリップがYouTubeに投稿され、バズれば視聴者は増え、プロモーション価値がある。これが理解されるると、TVネットワークはYouTubeでチャンネルを持ち、公式に番組のクリップを配信するだけでなく、一部の番組はフルにYouTubeで配信されるようになった。
TVネットワークがYouTubeを敵視しなくなったのはプロモーション効果があるだけでなく、直接的に競合しなかったからでもある。TV番組はテレビで視聴され、YouTubeはコンピューター、あるいはモバイル端末で視聴される。メディア消費時間を取り合うが、テレビの視聴時間の奪い合いではなく、同時に使われる場合もある。収入上も、YouTubeの広告はデジタル広告であり、テレビ広告の予算とは異なる。デジタル広告への出費が増えれば、テレビ広告の予算に影響はあるが、同じ予算の取り合いではない。また、テレビ広告の売上は最近までは減っていなかった。
しかし、CTVがYouTubeとTVネットワークの関係を変えた。YouTubeの視聴に使われるデバイスとしてCTVのシェアが急速に増えている。視聴者調査をしているTVisionによるとCTVでのストリーミングでの視聴時間に占めるYouTubeのシェアは21%で、Netflix(16%)を抜き、1位である。Nielsenのテレビ利用時間(ゲームでの利用も含む)でも、2025年2月にはYouTubeが11.6%を占め、トップになっている。2024年3月にYouTubeが2位になり、1位のDisneyと競合し始めた。オリンピックのお陰でNBCUniversalが1位になった2024年8月以外はDisneyがトップであったが、DisneyのシェアはABC、ESPN、Disney Channel等のTVネットワーク、それにDisney+、Hulu等のストリーミング・サービス等、複数のサービスの合計である。1つのサービスとしてはテレビ視聴時間に占めるYouTubeのシェアは圧倒的にトップである。テレビ利用時間に占める地上波ネットワークのシェアは2月で21.2%であったので、YouTubeは1つで、地上波ネットワークの2つ分以上の視聴がある。

TVision

Nielsen
では、YouTubeはアメリカ最大のTVネットワークと言えるであろうか。ABCと同様に、YouTubeはテレビで視聴されている。また、YouTubeもUpfrontを開催するようになっており、TV広告を奪い始めている。デバイスも広告予算も異なっていた昔とは違い、同じ土俵の戦いであり、YouTubeとTVネットワークは異なるものだとは言えない。元NBCUniversalの社長/CEOであったジェフ・ザッカーは「今、YouTubeがテレビである。短編動画、長編動画、ライブ、ケーブルテレビ等、多くのビジネスがひとつにまとまっている。YouTubeはあまりにも大きく、あまりにも強力で、無視できるメディア企業はないと思う。」と語っている。

Nielsen
テレビとはコンテンツが異なるのでTVネットワークとは違うと言えるかも知れない。放送事業者はその違いを強調し、自らのコンテンツを「プレミアム・ビデオ」と呼んでいる。Video Advertisement Bureau(VAB)はプレミアム・ ビデオを「信頼できるブランドセーフな環境で透明性をもって配信され、実際の人々が高品質の視聴体験で視聴しているコンテンツ」」と定義している。大手ブランドが広告媒体に使えるかが条件であれば、YouTubeはまだ劣っている。eMarketerによると、CTV広告売上におけるトップはHuluである。2024年のHuluのCTV広告の売上は$33.9億で、YouTubeの$33.4億をわずかに上回っている。TVisionによると、CTV視聴時間に占めるHuluのシェアは2.5%で、YouTubeは2倍の視聴時間があるが、CTV広告収入はほぼ同じである。この差は広告価格から来ている。プレミアム・ビデオのHuluのCPMは$23程度で、YouTubeのCPMは$12程度ある。YouTubeのCPMはSVODサービスよりも低いだけでなく、Roku Channel、Pluto TV等のFASTのCPM($18程度)よりも低い。
しかし、YouTubeのクリエーター達もプロであり、ビデオの質も大きくと向上している。CTVでの視聴が増えることで、ユーザ制作ビデオも長編になり、クオリティーも高くなっている。NABショーは昨年から「クリエイター・エコノミー」をテーマにし、クリエイターにプロ向けの機材を売り込んでいる。TVネットワークが「プレミアム・ビデオ」であるのも数年で終わるかも知れない。
