アメリカのテレビ業界には3つの大きなステークホルダーがいる。ネットワーク、その放送をする事業者(地上波局、多チャネルサービス)、それにテレビメーカーである。この1つ欠けても放送サービスは成り立たなく、3者の関係は持ちつ、持たれつであった。しかし、OTTがこの構造を破壊している。
4K化に躊躇する放送事業者に変わり、テレビメーカーはOTTサービスを新しいパートナーにしている。4Kでの放送は先のことであり、テレビを売るにはNetflix、M-Go、Amazon等の4Kでの配信をしているOTT事業者との関係が不可欠である。4Kでは放送局(多チャネルサービス事業者)とテレビメーカーの関係は薄く、スマートTVにいかに多くの4K対応OTTサービスのアプリを搭載出来るかが鍵になっている。
3者の関係を乱しているのはテレビメーカーだけでは無い。番組配信をする多チャネルサービスもOTTを支持する事でネットワークを慌てさせている。OTTは多チャネルサービスの大敵であったが、Netflixをパートナーにする会社が急激に増えている。最初に、Netflixとの関係を築いたのは中小のケーブルTV事業者である。ケーブルTV加入者は減少方向であり、TVネットワークとの契約金は上昇し、利益率は悪くなっている。しかし、SVODの普及により、ケーブルモデムへの加入者は増え、より高速(高価)なサービスがポピュラーになり、利益率は高い。ケーブルTVサービスを売り込むより、Netflixへのアクセスを増やしたほうが利益になる。すでに、Suddenlink、RCN等の事業者STB(TiVo)からNetflixへのアクセスを可能にしている。STBでNetflixの視聴を可能にしているだけではなく、CableOne、Suddenlink等は契約金の高騰を理由にViacom系等の既存多チャネルネットワークとの契約を破棄している。
SVODの普及により儲かっているのは大手のAT&T、Verizon、Comcast、Time Warnerも同様である。4社ともにNetflixとネットワーク直接接続の契約を行い、加入者に対してNetflixがより良く視聴できる事をアピールしている。さらにComcast、それにVerizonともに、Netflixに競合するサービスのStreampix(Comcast)、Redbox Instant(Verizon)から撤退をした。
大手多チャネルサービス事業者として真っ先にSTBでNetflixをアクセス出来るようにしたのは衛星放送事業者のDISH Networkである。DISHのブロードバンド収入は低く、また、Netflixの最大の競合のビデオレンタル事業者のBlockbusterを買収していた。しかし、NetflixをSTBで見られるようにする事で加入者が喜び、チャーンを減らせるほうが重要な事である。
これらの動きは、TVネットワークにも影響を与えている。TVネットワークは古い番組をNetflix等に売る事で儲けてきた。AMCの様に番組をNetflixで配信した事で、ファンが増え、視聴率が増えた例もある。1年前の番組はNetflix、Hulu Plus、Amazon等に配信させるのが当たり前になっている。さらにシーズン中にキャンセルされたTV番組の残りをOTT事業者に渡す事も増えている。TVネットワークの多くは、1年後の番組であれば、視聴率への悪影響はミニマムで、また、広告収入で争う事も無く、OTTサービスは競合ではないと考えていた。
しかし、HBOの様にNetflixを敵視し、Amazonとは契約してもNetflixとは契約しないネットワークもある。HBOと同じ有料チャンネルのStarzは、真っ先にNetflixと契約した会社の1つであるが、2012年で契約が切れた後は同社との契約更新はしていない。Netflixが続々とオリジナル番組を発表し、多チャネルサービス事業者とのパートナーシップを進めていく事で、同社がTVネットワークの競合になり始めた事を危惧するネットワークが増えている。Discovery、それにFox系のFXは最近、Netflixよりも、Hulu Plusを優先する契約をした。Discoveryは、Hulu Plusに対してのコンテンツ提供は12ヶ月後だが、Netflixに対しては18ヶ月後とした。FXは、Hulu Plusとの独占契約をした。
自らOTTサービスを始めて、Netflixとの競合に乗り出すネットワークも出ている。HBOは2015年からOTTでの配信を開始し、真っ向からNetflixに競合する準備をしている。CBSが持つ有料チャンネルのShowtimeも同様にOTTでのサービスを立ち上げる予定である。地上波ネットワークのCBSは、CBS All Accessと呼ばれる月額$6のSVODのサービスを開始した。CBS All Accessは、WatchABCの様に番組のキャッチアップ、過去のシーズンのオンデマンド、それに一部の地域ではライブ配信も提供する。しかし、TV Everywhereでの配信ではなく、Netflix等のSVODと同様に有料のSVODサービスである。
他のTVネットワークはまだ、独自のOTTサービスを開始し、既存の放送事業者をバイパスする事は考えていない様だ。しかし、HBOがOTTサービスで成功をすれば、これを見習うTVネットワークが増えるであろう。調査会社のStrategy AnalyticsはHBO、それにShowtime等のTVネットワーク系のSVODが成功すれば、Netflixは国内加入者の30%(約1100万人)を失う可能性があると予測している。
