SonyはParamount Globalの買収を一度はオファーしたが、両社はフィットしてないとの理由で再提案を行わないことを明らかにした。実際にParamount GlobalとSony Pictures Entertainment(SPE)の戦略は大きく異なる。Paramount Globalはコンテンツの制作だけでなく、配信事業も持つ、垂直統合を目指した会社である。これと反対に、SPEは「Arms Dealer(武器商人)」とも呼ばれる、自らは配信事業を持たずにコンテンツの制作に特化する道を選んでいる。
Paramount GlobalはNational Amusements, Inc.(NAI)の前社長のサムナー・レッドストーンがCBSとViacomの買収により作り上げた垂直統合の企業である。コンテンツの制作としてCBSとParamount Studiosがあり、その配信事業として、地上波ネットワークのCBS、18地域での地上波放送局、Showtime、Nickelodeon、MTV、BET等の多チャンネル向けネットワーク、イギリスのChannel 5、アルゼンチンのTelefe等の海外の放送事業者、ストリーミング・サービスのPluto TV、BET+、Paramount+を持ち、さらに親会社のNAIはアメリカ、イギリス、それにラテンアメリカで1,500以上の映画館を持つ。
SPEはコンテンツ制作専門であり、放送/配信事業は殆ど持っていない。多チャンネル向けネットワークのGame Show NetworkとSony Movie Channel、アニメ専門のストリーミングサービスのCrunchyroll、それにいくつかのFAST向けチャンネルを持っている程度である。ストリーミングには参入したが、vMVPDのPlayStation Vueは2020年に終了させ、AVODサービスのCrackleは2020年に売却している。
一時は垂直統合がコンテンツ事業の将来だと言われたが、放送離れにより、市場構造が変わることで、テレビ・ネットワーク、それに局を持つことがマイナスになり始めている。SPEがParamount Globalを買収した場合、映画スタジオのParamount Studios、テレビ番組制作部門、それに一部のネットワークに関心はあるが、半分近くは多分は不要であろう。欲しくても、アメリカ企業では無いSonyがCBSを持つことはほぼ不可能である。Sonyはプライベート・エクイティ・ファンドのApollo Managementとの共同でParamount Global買収のオファーをしたのは、SPEが欲しいものを取り、残りは解体して、Apolloが売る、あるいは資産がなくなるまで運営する考えであった。しかし、Paramount Globalの親会社のNAIはParamount Globalの解体を望まず、Skydanceを選んだ。
しかし、Skydanceと合併しても切り離さなければならない事業もある。最大の問題は多チャンネル向けネットワークである。Q2にWarner Bros. Discoveryは$91億、Paramount Globalは$60億の減損損失をした。どちらも多チャンネル向けネットワークの価値が下がっているからである。Paramount Globalはアメリカの社員の15%に相当する2000人規模のレイオフを行っている。これにより、テレビ番組制作部門のParamount Television Studiosが無くなり、CBS Studiosに統合される。多チャンネル向けネットワークのBETは売りに出されている。垂直統合の解体をしなければならない。
