多チャンネルサービスの加入者が減り、多チャンネル向けネットワークの収入も減っている。以前は、エミー賞受賞作品の多くは多チャンネル向けネットワークの作品であったが、現在では多チャンネル向けのドラマの制作は殆ど無くなり、スポーツ、リアリティー番組、それにドラマの再放送になっている。放送を終了したチャンネルもあるが、まだ200以上が存在している。しかし、その存在を脅かす動きが8月に2つあった。1つは多チャンネル向けネットワークの価値が下がっていることで、Warner Bros. Discovery(WBD)は$91億、Paramount Globalは$60億の減損損失をした。
TVネットワーク会社は視聴者の少ないチャンネルを終了する、あるいは事業を売却することを検討している。多チャンネル向けネットワークの価値は減っているが、多チャンネルサービス加入者はまだ7000万世帯はり、収入はある。さらに、過去のコンテンツ資産もあり、買い手はいる。しかし、2つ目の出来事は多チャンネル向けネットワークのビジネスモデルをひっくり返す可能性がある。
vMVPDのFubo TVがDisney、WBD、Foxのジョイント・ベンチャーのVenu Sportsを独占禁止法違反で訴えていた件で、法廷はFubo TVが求めていたVenu Sportsサービス開始の差止めの仮処分を認めた。サービス開始の差止めの仮処分は珍しいことだで、裁判官はVenu Sportsが独占禁止法に触れている可能性が十分にあると判断した。Fubo TV等の多チャンネルサービス事業者はESPN等のVenu Sportsが配信するチャンネルを単体で契約することは出来ず、他のチャンネルとのバンドルで契約している。ESPNが欲しければ、Disney Channel、FX、National Geographic等の他のDisneyのチャンネルとも契約しなければならない。Fubo TVは3社が作ったVenu Sportsがスポーツチャンネルだけを配信出来るのは独占禁止法に違反していると訴えている。
裁判所はVenu Sportsだけでなく、このバンドル販売の行為自体が独占禁止法違反と判断する可能性もある。例え、バンドル販売が違反と判定されなくても、Venu Sportsを実現するには多チャンネル事業者に対してもバンドル契約を止めなければならなくなる可能性がある。200もの多チャンネル向けネットワークが存在しているのは、バンドル販売があるからだ。どのネットワーク会社にもESPNのような多くの視聴者が求めるチャンネルがある。DisneyはESPN2、ESPNU、ESPNews等の姉妹チャンネルを作り、ESPNにバンドルするだけでなく、他のDisneyのチャンネルもESPNにバンドルしている。
現在、DirecTVとDisneyは再送信契約の交渉を行っており、DirecTVはDisneyのチャンネルをアンバンドルさせようとしている。DisneyはすでにCharterとの契約時にDisney+を加える代わりに、視聴者の少ないチャンネルを切り捨てることに成功した。DirecTVはさらにDisney Channel、ESPN等のアンバンドルを求めているが、交渉は進まず、Disneyは9月初めにDirecTVに対する配信を停止した。DirecTVはこれは再送信契約の問題だけでなく、同社がFubo TVの裁判に賛同していることへの報復措置だとし、徹底的にDisneyと戦うと表明している。
もし、バンドル販売が無くなれば、多チャンネル事業者が契約するチャンネル数は現在の半分以下になり、100近いチャンネルが消えるであろう。加入者が減ることで、多チャンネル向けネットワークの価値が下がっており、バンドル販売が出来なくなれば、多チャンネル向けネットワークの価値はさらに落ちる。TVネットワークは不要な多チャンネル向けネットワークを売却しようとしているが、Fubo TVの裁判の結果が出るまで買い手は躊躇する可能性もある。
