Gemstar-TV Guide International社は1600万ドルで,IPG分野では競合のAptive Digitalを買収した。Aptiveは1996年にパイオニアの子会社,Pioneer Digital Technologiesとして設立され,IPGのPassportの開発を行ってきた。パイオニアは2005年5月にSTB事業からの撤退を決定し,Pioneer Digital Technologiesは2005年にAptivとしてスピンオフされた。Passportは現在,Time Warner Cable,Blue Ridge Communications,Brighthouse,Cox,Metrocast等の事業者が約850万台のSTBで採用されている。Time Warnerは自社開発のIPGを採用していくことを発表しており,Comcast,CoxはGemstar-TV GuideとIPG開発のJV,GuideWorksを設立している。
アナログケーブルTVはいつ終了するか
ケーブルTVのデジタル化は急速に進んでいる。1999年ではデジタルケーブルの加入者数は350万で,ケーブルTV加入者全体の5%程度であったのが,2006年では3140万世帯に増え,ケーブルTV世帯の47%に達した。
単にデジタルサービスへの加入世帯が伸びているだけでなく,ケーブルTV事業者のインフラストラクチャーも急速に進歩している。デジタルケーブルサービスが開始した時点では,デジタルはアナログサービスの一部を使った物であり,既存のアナログ放送にデジタルによりさらにチャンネル数を増やした物であった。デジタルサービスとは言っても地上波再送信,それにCNN等の基本的なケーブルTVチャンネルはアナログで提供されてきた。
デジタルサービス加入者は基本的なチャンネルがアナログで提供されている事に不満を持っており,ケーブルTVが完全にデジタルで放送されているDBS,IPTVと競合する為にデジタルインフラストラクチャーのアップグレードが必要であった。ケーブルTV事業者はデジタル放送のキャパシティーを増やし,地上波再送信,ベーシックのケーブルTVのチャンネルもアナログとデジタルで放送するサイマルキャストを2006年から始めている。Comcastはその加入世帯の80%はサイマルキャストを受けられる環境であると発表しており,Time Warnerはその27システム中,18でサイマルキャストを行っている。
これにより,ケーブルTV事業者はアナログチューナも持つアナログ/デジタルのハイブリッドSTBでは無く,フルデジタルのSTBが提供出来る様になっている。フルデジタルの方が,当然ハイブリッドSTBよりコストは安い。しかし,STBのコストが安くなったとは言え,ケーブルTV加入世帯の全てのTVにSTBを付けるには至っていない。デジタルケーブルTVへの加入世帯でもすべてのTVにSTBがつながってはいない。アナログで放送されている限り,地上波再送信とベーシックチャンネルはSTB無しで見ることが出来る。
さらに,地上波再送信とベーシックチャンネルにしか加入していない世帯にはアナログのままでサービスを提供し続ける事で,STBは不要であり,サポートコストも低い。しかし,アナログサービスを提供し続けることも問題がある。アナログサービスを止めればその容量を回収し,より多くのデジタルチャンネル,より高速なブロードバンド等が提供出来る。デジタルサイマルキャストを始めたシステムでは,アナログサービスを中止する事は出来る,しかし,それには全加入世帯の全TVにSTBを提供しなければならない。
ケーブルTV事業者は,地上波によるアナログ放送が終了する2009年2月17日以降も,デジタル放送をアナログ変換し,アナログケーブルTVサービスを続ける意志を示している。しかし,アナログサービスの加入者が過半数を割ることで,アナログサービスを提供し続ける事は管理上高価になっていく。特に,地上波アナログ放送終了以降ではアナログ変換を含め,アナログ環境をサポートするコストは増す。いつ,そしていかにしてアナログサービスを終了させるかが,ケーブルTV業界の大きな課題になっている。
衛星ラジオのシリウスとXMの合併
国土の広いアメリカでは長距離を運転する機会が多いが,ラジオを聞いていると頻繁に局を探さなければならない。この問題を解決するのが衛星によるラジオ放送である。衛星ラジオの事業者はSiriusとXM Radioの2つがある。衛星ラジオ向けの周波数帯域は1997年に競売され,サービスは2001年に開始した。XM,Sirius共に百数十のチャンネルを月額約13ドルで提供されている。
衛星ラジオは自動車会社とタイアップする事で普及をし始めた。XMラジオはGM,ホンダ等と手を組み,Siriusはフォード,クライスラー,BMW等と契約している。最近では,自動車だけでなく,家庭向け,パーソナル向けの衛星ラジオレシーバも出ている。最初の時点では,衛星ラジオの加入者数は伸び悩んでいたが,ここ数年で大きくと成長し,加入者数は2006年末で1350万に達した。この成長を支えているのは独自のコンテンツである。Siriusは有名なジョッキーのハワード・スターンをCBSから引き抜き,XMは野球のメージャーリーグと中継の契約をしている。衛星ラジオで無ければ聴けないコンテンツを提供する事で,加入者数を伸ばす事が出来たが,そのコストは膨大になっている。加入者が伸びる事でXM,Siriusの売上げは順調に増えている。XMの2006年第3四半期の売上げは2.4億ドルで,同期のSiriusの売上げは1.7億ドルであった。しかし,共に赤字を出し続けており,2006年第3四半期の赤字はXMが8400万ドル,Siriusが1.6億ドルであった。
XMとSiriusは合併の交渉を行ってきたが,2007年2月20日に合併の合意に達した事を発表した。合併により,重複する機能を削り,黒字に転向する狙いである。しかし,この合併が実行されるにはFCCと司法省の許可が必要になる。許可,非許可のポイントは衛星ラジオと言うサービスを以下に見るかである。もし,衛星ラジオと言う市場だけで見れば,2つしかない事業者が一緒になることは独占禁止法に触れ,許可はされない。しかし,市場を広く見れば,アナログラジオ,デジタルラジオ,インターネットラジオ,さらにはiPod等のパーソナル・オーディオが競合であり,XM,Siriusが合併しても独占環境にはならない。
この合併はラジオだけでなく,テレビ業界にもインパクトを与える。もし,XMとSiriusの合併が許可されれば,衛星TVサービスのDirecTVとEchoStarの合併の可能性が再登場する。DirecTVとEchoStarの合併は4年前に拒否された。しかし,衛星TVサービスを多チャンネルサービス全体で見た場合,1つの強い事業者になることはケーブルTVサービスに対するより大きな競合になる,さらに,電話事業者のビデオサービスの参入により,競合の幅は増えており,この合併に対するハードルは低くなっており,合併の噂が再度出ている。XMとSiriusの合併が許可されることで,DirecTVとEchoStarの合併も進む可能性がある。
もう1つのインパクトはモバイルビデオに対するインパクトである。XM,Sirius共に自動車,あるいはパーソナルデバイス向けのビデオ放送サービスに参入の意志を見せている。これを行うには帯域の確保が必要である。合併により重複するチャンネルを無くすことで,ビデオサービスを提供する容量は確保出来る。モバイルビデオサービスが本格的なスタートを始めようとしている今,自動車メーカーとすでに契約のあるXM/Siriusが参入する事は大きなインパクトを与える。
Time Warner Cableが独立
2007年3月1日から,Time Warner Cableの株がTWCとして独自に取り引きされ始めた。Time WarnerはTWCをスピンオフし,独立させることを進めてきた。しかし,TWCがComcastと共同で買収したAdelphiaの株主の一部が,買収の一環として得たTime Warnerの株の配布をめぐって訴訟を起こした事で,TWCの独立化はストップしていたが,この訴訟は取り下げられ,TWCの独立化が完了した。
CAS切り離し規制の罰金は最大$320,000
FCCは2007年7月1日から実施されるSTBからCASを切り離す規制を守らなかった事業者に対する罰金は最大で$320,000であると発表した。それぞれの違反の罰金は最大1日毎$32,500で,最大の罰金は$320,000になる。7月1日よりケーブルTV事業者はCASを内蔵したSTBを提供出来なくなり,STBはCASを独立化させる必要がある。CASはCableCARDと呼ばれるPCMCIAカードで提供されるが,ケーブルTV事業者はより安いソルーションとしてダウンローダブルCAS(DCAS)の開発を行っている。
