ケーブルTVのデジタル化は急速に進んでいる。1999年ではデジタルケーブルの加入者数は350万で,ケーブルTV加入者全体の5%程度であったのが,2006年では3140万世帯に増え,ケーブルTV世帯の47%に達した。
単にデジタルサービスへの加入世帯が伸びているだけでなく,ケーブルTV事業者のインフラストラクチャーも急速に進歩している。デジタルケーブルサービスが開始した時点では,デジタルはアナログサービスの一部を使った物であり,既存のアナログ放送にデジタルによりさらにチャンネル数を増やした物であった。デジタルサービスとは言っても地上波再送信,それにCNN等の基本的なケーブルTVチャンネルはアナログで提供されてきた。
デジタルサービス加入者は基本的なチャンネルがアナログで提供されている事に不満を持っており,ケーブルTVが完全にデジタルで放送されているDBS,IPTVと競合する為にデジタルインフラストラクチャーのアップグレードが必要であった。ケーブルTV事業者はデジタル放送のキャパシティーを増やし,地上波再送信,ベーシックのケーブルTVのチャンネルもアナログとデジタルで放送するサイマルキャストを2006年から始めている。Comcastはその加入世帯の80%はサイマルキャストを受けられる環境であると発表しており,Time Warnerはその27システム中,18でサイマルキャストを行っている。
これにより,ケーブルTV事業者はアナログチューナも持つアナログ/デジタルのハイブリッドSTBでは無く,フルデジタルのSTBが提供出来る様になっている。フルデジタルの方が,当然ハイブリッドSTBよりコストは安い。しかし,STBのコストが安くなったとは言え,ケーブルTV加入世帯の全てのTVにSTBを付けるには至っていない。デジタルケーブルTVへの加入世帯でもすべてのTVにSTBがつながってはいない。アナログで放送されている限り,地上波再送信とベーシックチャンネルはSTB無しで見ることが出来る。
さらに,地上波再送信とベーシックチャンネルにしか加入していない世帯にはアナログのままでサービスを提供し続ける事で,STBは不要であり,サポートコストも低い。しかし,アナログサービスを提供し続けることも問題がある。アナログサービスを止めればその容量を回収し,より多くのデジタルチャンネル,より高速なブロードバンド等が提供出来る。デジタルサイマルキャストを始めたシステムでは,アナログサービスを中止する事は出来る,しかし,それには全加入世帯の全TVにSTBを提供しなければならない。
ケーブルTV事業者は,地上波によるアナログ放送が終了する2009年2月17日以降も,デジタル放送をアナログ変換し,アナログケーブルTVサービスを続ける意志を示している。しかし,アナログサービスの加入者が過半数を割ることで,アナログサービスを提供し続ける事は管理上高価になっていく。特に,地上波アナログ放送終了以降ではアナログ変換を含め,アナログ環境をサポートするコストは増す。いつ,そしていかにしてアナログサービスを終了させるかが,ケーブルTV業界の大きな課題になっている。
