低出力局をどう救うか

2009年2月17日にアナログ送信を終了する事が命じられているのはフル出力局だけである。1700以上あるフル出力局に加え、アメリカには3000近い低出力局(Low Power TV、LPTV)があり、これら放送局のデジタル移行の義務は無い。LPTV局は小さな町、あるいは都市の一部のコミュニティー向けに放送を行っている、小さな局で、デジタル移行をしたくても予算は無い。これら局には再送信義務は適用されないので、ケーブルTVで見ることは出来ず、視聴にはアナログチューナ付きのTVが必要になる。しかし、DTVコンバーターの仕様を検討した際に、LPTVの事は忘れられてしまったようで、DTVコンバーターにはアナログ放送をそのままパススルーする機能は標準の仕様にされていない。このため、DTVコンバーターを付けたアナログTVではLPTV局が映らなく、このままではLPTVは視聴不可能になってしまう。

LPTV局をいかに救うか? FCCのマーチン会長の提案はLPTV局もケーブルTVの再送信義務に含める事である。これにより、まずはLPTV局の受信オプションを増やすことが出来る。そして、視聴者が増えれば、スポンサーも増え、デジタル移行する収入が出来、すべてうまく納まると言う考えである。

しかし、当然の事、ケーブルTV事業者はこれには反対をしてる。デュアル・マストキャリーに加え、LPTVまで再送信したのでは、チャンネル容量が無くなってしまう。再送信の義務化があるチャンネルが増えれば、その分、義務ではないケーブルTVネットワークを減らさなければならない。ケーブルTVネットワーク向けチャンネルが減る事は、上の記事にある様なケーブルTVネットワークに取り大変な問題であり、ケーブルTV事業に取っても視聴者の少ないLPTVと視聴者の高いケーブルTVネットワークのチャネルを交換していたのではビジネスにならない。

小さいケーブル局は生き残れるか

Comcastの様に2300万の加入世帯を持つ大手ケーブルTV事業者だけでなく、アメリカには数多くの小さな局もある。加入者数が数千のケーブルTV事業者は300社以上もある。これらの小さなケーブルTV局がいかににアナログ停波を生き残るかも大きな問題である。

小さなケーブルTV事業者はまだ450 MHz以下のシステムで、デジタル放送は行っていない。彼らは2009年2月18日以後はデジタル地上波をアナログ変換し、放送する事で、サービスを続ける事は出来ても、デジタル(HD)無しでは生き残りは難しい。これら局はすでに、DBSにそのビデオ加入者を奪われており、ケーブルモデムでどうにか利益を出しているケースが多い。
だが、デジタル化をするには大きな投資が必要になる。デジタルゼロの現状から1年で、デュアルマストキャリー、HDチャンネルに対応出来るデジタル送信のレベルに達成させるには、資本力があっても大変な事である。

会社を売りたくても、買いたい人はいない。大手ケーブルTV事業者は加入者を増やしたいが、問題は抱えたくない。小さなシステムは効率が悪く、大手ケーブル事業者は手放すことはあっても、買うことは無い。
一部の小さな事業者はケーブルTV事業を辞めることも考えている。ビデオサービスはDBSの再販を行い、ケーブルモデムとVoIPだけにする考えである。しかし、ケーブルモデム、VoIPの利益率が高いのはケーブルTVと言うベースがあるからであり、そのベースを捨ては採算性を出すのは難しい。

WGAストライキが終了

米国の脚本家組合(Writers Guild of America、WGA)の100日間続いたストライキは2月12日に終了した。脚本家組合はAlliance of Motion Picture and Television Producers (AMPTP)との契約更新において、最低賃金の値上げ,DVDで販売したときの再利用料,インターネット配信時の再利用料,それにアニメーション,リアリティー番組に於けるWGAの管轄の扱いで交渉をしてきたが、行き詰まり,2007年11月5日にストライキに突入した。この中でも大きな問題はDVDも含めたニューメディアにおけるビデオコンテンツの再利用料金であった。現在、脚本家は映画、あるいはTV番組がDVD化された場合、最初の100万本まではグロス収入の0.3%,100万本以降は0.36%を得ている。インターネット等のニューメディアでの配信には再利用料は無い。

WGAはDVDの再利用料金は倍増、そしてインターネットでは配信により得られたグロスの2.5%を求めていた。これに対して,DVDは現状維持、ニューメディアでコンテンツを販売した場合(Electronic Sell Through、EST)はDVDと同じレート、ストリーミング配信は有償,無償,広告のありなしに関係なく,「プロモーション」利用であり,再利用料は払わないとの答えを出した。

WGAがストライキに入っている間に、監督を代表する労使組合のDirectors Guild of America(DGA)もAMPTPとの契約更新の交渉を行っていた。AMPTPはダブル・ストライキは避けたく、また、DGAはすでにインターネット配信の再利用料が契約にあり、WGAより交渉は楽に進んだ。2008年1月17にDGAはESTの場合、TVコンテンツは0.7%、映画は0.65%(それまでの80%増)で合意した。広告付きのストリーミング配信の場合、番組がTVで放送されてから最初の17日間はプロモーション扱いで、再利用料金無し、その後26日間まではTV再放送料金ベースの3%(1時間のプライムタイム番組で約$600)、さらに配信を続ける場合は新たに3%(3%+3%で年合計約$1200)で契約した。

このDGAの契約更新で、WGAとAMPTPの交渉も進み始め、WGAは2月12日にストライキを解除した。ニューメディアでの配信に関しては下記の様になっている。

  • ダウンロード(レンタル): 配信者のグロスの1.2%
  • ダウンロード(販売)(EST): TV番組の場合、最初の10万本までは配信者のグロスの0.36%、それ以降は0.7%。劇場映画の場合は最初の5万本まで、0.36%で、それ以降が0.7%。DVD販売も同じ。
  • 劇場映画の広告付きストリーミング: 配信者グロスの1.2%
  • ストックTV番組の広告付きストリーミング: 配信者グロスの2%
  • 新TV番組の広告付きストリーミング: ほぼDGAと同じ

これで、TVから新しい番組を消してしまったWGAのストライキは終わったが、再利用料の問題が完全に解決した訳ではない。これから、映画俳優を代表するScreen Actors Guild(SAG)とテレビ俳優を代表するAmerican Federation of Television and Radio Artists(AFTRA)の契約更新の交渉が開始しようとしており、ここでもニューメディアの再利用料は重要なポイントになる。

ENGデジタル移行の延長決定

The Compass2008年1月号で記事にしたENG(Electronic News Gathering)に使われるBAS(Broadcast Auxiliary Services)のデジタル移行が送れている問題に対して、FCCは期限を延長する事を決定した。このデジタル移行で空くスペースを現在持つ800 MHz帯と交換する事になっているSprint Nextelがこの移行に必要な経費を持つことになっているが、移行は大きくと遅れている。FCCは移行期限を2009年5月5日へ延期する事を決定した。

Liberty MediaのDirecTV購入が完了

Liberty MediaによるDirecTVの株40%をNews Corpから購入する事に対して、FCC、司法省共に許可を出し、2月28日に買収が完了した。これで、元TCIのCEOで「ケーブル・カウボーイ」と呼ばれ、DBSを「Death Star」と呼び、敵視していたジョン・マローンがDirecTVの指揮を執ることになる。マローンの大きな戦いの1つは、地上波放送局を代表するNABとの再送信の問題になる。DirecTVは現在、210のテレビ放送地域の内、144で地上波再送信を行っている。DirecTVは6地域を追加し、150地域に増やす予定を持っているが、衛星による地上波再送信を全210地域で行う予定は無い。DirecTVは全地域で地上波再送信を行うキャパシティーは無く、また、採算性も無いとしている。しかし、NABはケーブルTV事業者に対する「マスト・キャリー」の様にDBS事業者にもサービスを提供する全地域でその地域の地上波再送信をする事を求めており、FCCに対してLibertyのDirecTV購入許可の条件にこれを加える事を求めていた。FCCは却下したが、NABはこの戦いを引き続いて行うことを宣言している。