ケーブルTV事業者の産業団体のNational Cable Telecommunications Association(NCTA)の展示会、Cable Showがシカゴで開催された。展示した会社は前年(ロサンジェルス)より少なかったが、参加者数は、13,000人で2010年とほぼ同じであった。
NCTAは2001年にNational Cable Television Associationから、現在のNational Cable & Telecommunications Associationに名前が変わっている。ケーブルTV事業者は、ケーブルモデム、電話サービス等も提供し、テレコム事業者になっているが、そのサービスの中心は依然としてテレビであった。しかし、TV Everywhere、それにiPadへの配信で明らかになっている様に、ケーブルTV事業者はテレビだけでなく、多様なディスプレイのサポートを進めており、Cable Showではそのトレンドがより明らかになった。
通信気業者として、ケーブルTV事業者を見た場合、その大きな疑問は、電話事業者の光ファイバー、それに無線ブロードバンド(特にLTE)にいかに対応するかである。ケーブルモデム(DOCSIS)はこれ以上の高速化が出来ないとも言われていたが、ComcastはCiscoの技術を使った1 Gbpsの下流速度のデモを会場で行い、さらに、Arris Groupのブースでは4.5 Gbpsのソルーションが出展されていた。Broadcomは、ケーブルモデム用のチャンネルを帯域のどこからでも選ぶ事の出来る技術を発表した。これ自体は速度を速める物ではない。しかし、これにより、ケーブルTV事業者の帯域管理が容易になり、チャンネル再編成無しで、空きチャンネルをすぐにケーブルモデムにあてがうことが可能になる。
ケーブルTV事業者のLTEへの対抗策は明らかになっていない。Clearwireがその答えと思われたが、WiMAXへの期待は薄らいでいる様であり、また、Coxも自ら無線ネットワークを構築する計画を中止している状態で、ケーブルTV事業者の長期的な戦略は不明である。しかし、短期的な対策として、ケーブルTV事業者はWiFiに再度目を向けている。ケーブルTV事業者は一時、WiFiホットスポットを作っていたが、収益化する方向が定まらず、そのままになっていた。しかし、タブレット向けにビデオを提供する事が重要な戦略になっており、WiFiサービスが再注目されている。CablevisionはそのWiFi網を現在の3Mbps(上流)/1.5 Mbps(下流)から、15 Mbps/4 Mbpsにアップグレードする計画を発表した。Cablevisionは、そのケーブルモデム加入者に無料で、WiFiサービスを提供している。Cable Showでは、ComcastのCEO、Brian RobertsはWiFiを「Game Changer」(状況を劇的に変える物)と呼び、CablevisionとTime Warner Cableとホットスポットを広める事で協力する事を発表した。
しかし、LTEへの対策以上に、ケーブルTV事業者の注目は、マルチスクリーンにある。CablevisionのWiFi網のアップグレードには、電話事業者の無線ブロードバンドへの対抗の理由もあるが、その大きな動機は、マルチスクリーン・サービスの拡大がある。Cablevisionは、すでにiPad向けにそのケーブルTVの全チャンネルを同時再配信している。番組はケーブルモデムで配信され、家庭内のWiFiルーターから送られているので、サービスは家庭内だけが対象である。しかし、Cablevisionはその先のサービスとして、屋外でもiPad等で、ケーブルTVで見られるチャンネルを受けられるようにする事も視野に入っている。
Cable Showでは様々なマルチスクリーンのソルーションが提供された。SeaChangeは、マルチスクリーンを切っ掛けにナビゲーション市場に参入をした。TV事業者がビデオコンテンツをTV、PC、会うマートフォン、タブレット向けに提供をする場合、そのバックエンドも重要だが、フロントエンドがそれ以上に大きなインパクトを持つ。加入者に目にはいるのは、伝送の仕組みではなく、フロントエンド(ナビゲーション)である。それぞれのデバイスから、番組を簡単に見つける事が出来なくては、マルチスクリーン化の意味は無く、別々のインタフェースでは使いづらく、相乗効果も無い。SeaChangeのNitroは、そのマルチスクリーンのバックエンド・ソルーションのAdrenalinに対応するナビゲーションで、HTML5をサポートし、リニア、オンデマンドの番組検索、マルチルームDVR、ブックマーク、ソーシャルネットワーク機能等を様々なデバイス上で利用可能にする。
SeaChangeがマルチスクリーンをベースにナビゲーション市場に参加したのと反対に、ケーブルTVのIPGの大手のRoviは、ナビゲーションからマルチスクリーン向けのソルーションに参入をした。同社は、STB向けの新しいIPG、TotalGuide、それにPC、タブレット、スマートフォン向けにビデオコンテンツを提供するVideo Distribution Solution(VSD)を発表した。
Comcastのオンラインビデオ部門のThePlatformはAlcatel-Lucent社との協力で、他のケーブルTV事業者に対するマルチスクリーン向けのソルーションのアウトソース・ビジネスを開始した。Comcastは以前から中小規模ケーブルTV事業者向けのプログラムの配信サービスを提供してきたが、この新しいサービスは、中小規模ケーブルTV事業者が自らマルチスクリーン・ソルーションを導入する事無く、TV Everywhereを提供する事が可能になる。サービスはThePlatformのmpxとAlcatel-Lucent社のCDNプラットフォームのVelocix Digital Media Delivery Platformを組み合わせる。ThePlatformのmpxはケーブルTV事業者とコンテンツ事業者間のビジネスポリシー、権利、それにメタデータの管理を行うシステムである。
Time Warner Cable、Cablevisionが開始したiPadへの同時配信は、ケーブルモデムを使いIPベースでビデオを送っている。ケーブルTV事業者は、QAMとIPビデオを同時に配信する事で、マルチスクリーンへの対応を考えている。IP配信に移行する為には良い方法であるが、同時に配信をするには容量を確保する必要がある。Motorolaは、QAMで配信されたビデオを家庭内で、IPに変換し、WiFiで送るTelevationと呼ばれるデバイスを発表した。
Televationは1 GHzのQAMチューナ、CableCard、WiFiルーター内蔵し、選択されたチャンネルをMPEG-2からMPEG-4に変換し、IPベースでWiFiを使い配信を行う。デバイスが、独自のDRM機能を持ち、認証されたデバイスだけで視聴出来るようになっている。Televationを導入する事で、ケーブルTV事業者は、番組をIP配信する事無く、スマートフォン、タブレット、あるいはコネクテッドTV等にTV番組を送れる。Televationは、事業者向けに販売され、一般向けの販売の予定は無い。

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