ATSC 3.0放送の新たな動き

ATSC 3.0へ移行するための帯域の割当はなく、さらにATSC 1.0での放送を引き続き行う規制がある。移行する局は同じ地域の放送局とパートナーシップを組み、それら局の主チャンネルをATSC 3.0で放送してもらう代わりに自局の主チャンネルとサブチャンネルをATSC 1.0で放送してもらう必要がある。ATSC 3.0局は1つのチャンネルで4、5局分の放送をしており、4K等の高度な放送をするための帯域の余裕はない。そのため、ATSC 3.0での放送は1.0と大差なく、ATSC 3.0を見る必要性はなかった。しかし、ATSC 3.0のリーチは75%近くに達し、ビルドアウトのステージはほぼ完了し、利用の普及に向けた動きが始まっている。

放送局所有会社のSinclairは昨年からいくつかの局でHDR(解像度はHD)での放送をテストしていたが、今年からATSC 3.0で放送している全局でHDRでの放送を開始する。Sinclair以外の局もHDRでの放送を予定しており、放送局のコンソーシアムのPearl TVは2024年はHDR放送の幕開けになると語っている。

E. W. ScrippsのデトロイトのWMYD局はATSC 3.0で放送している番組を一時停止、再スタート、最初からリプレイする機能を提供し始めている、ラスベガスの局でもこの機能を開始し、NAB Showでデモをしていた。

ComcastのNBCUniversalが所有する局でも番組を一時停止、再スタートする機能を追加するだけでなく、朝のNBCの番組の「Today」が放送されている間に、インターネットから配信するローカルニュースに切り替える機能を提供する。ローカルニュースに加え、ハイパーローカルな天気予報等も提供する。サービスはNBCUniversalが所有するNBCとスペイン語放送のTelemundo系の局で行われ、テストとして、ニューヨーク、ロサンゼルス、フィラデルフィアとマイアミでスタートする。

また、FastStreamと呼ばれる技術を持つROXi社はPearl TVと契約し、ATSC 3.0で放送をしている局に対して、ミュージック・ビデオのチャンネルの提供を開始する。ROXiはCESでSinclairとの契約を発表していたが、Pearl TVとの契約により、多くの局がROXiのチャンネルを提供することが可能になる。ROXiのFastStreamはATSC 3.0のアプリを使ったストリーミング・サービスである、番組表としてはチャンネルであるが、チャンネルに変えるとインターネットからストリーミングされ、番組の途中から見るのではなく、最初からの再生となり、聞きたい音楽を指定することも出来る。ROXiミュージック・ビデオのチャンネルだけでなく、ニュース、ショートビデオ、スポーツ等のチャンネルも提供する。

ATSC 3.0を使ったデータ放送でも動きがあった。Sinclairはデータ放送向けプラットフォームのBroadspanを発表した。BroadspanはSinclairの放送局がATSC 3.0に移行している30地域でサービスが開始になり、CDN事業者のEdgioがストリーミング事業者向けに4Kでの配信をするためのネットワークに使う。しかし、Broadspanが使える帯域は限られており、9 Mbpsの速度しか出ない。新たに設立されたデータ放送会社のPeak3もBroadspanと契約している。

ATSC 3.0でのデータ放送における最大のニュースはAT&TがATSCに加入したことである。AT&TはCY Networksの技術を使い、データ放送のサービスを開始する。CY NetworkはATSC 3.0チューナを内蔵したCaros>>l(Carouselと発音するを使い、AT&T店舗のデジタルサイネージ向けにATSC 3.0でデータを送るテストを行い、年内に事業として開始する。テストにはE. W. ScrippsとNexstarのJVのOTA Wirelessが参加する