多チャンネルサービスの料金形態はパッケージ制である。例えば、ケーブルTVでは、地上波再送信のベーシックと、ケーブルネットワークが含まれるエクステンデッド・ベーシックの2つのパッケージで構成され、さらにオプションとしてプレミアム(有料)チャンネルがある。殆どの事業者は、複数のエクステンデッド・ベーシックのパッケージを提供しているが、チャンネルを単独で得る事は出来ない。HBO等の有料チャンネルは、単独でも提供されているが、エクステンデッド・ベーシックへの加入が必要であり、それだけに加入する事は出来ない。
パッケージではなく、見たいチャンネルだけを買えるようにするアラカルト式にする要望は消費者団体等から以前から出ている。2006年には、FCCからアラカルト化を進める動きが出た。しかし、多チャンネル事業者はこれに激しく対抗した。事業者は、パッケージ方式により多チャンネルサービスの価格は安くなっており、アラカルト式にした場合、同等の値段でサービスを提供する事は不可能だと反対をした。FCCは、アラカルト化を進める法案の提出を望んだが、議会から十分なサポートを得ることが出来なく、この動きは消滅した。
多チャンネルサービスがパッケージ化されている大きな理由は、彼らへのコンテンツの販売がパッケージ化されている為である。コンテンツ事業者は1つのチャンネルあたり、1加入世帯毎にいくらとの値段を設定し、多チャンネル事業者と契約をしている。最も高価なチャンネルはESPNで一月の平均料金は$5.54である。逆に安いチャンネルは月額数セントである。コンテンツ事業者は、多チャンネル事業者に多くのチャンネルを放送させるために、パッケージとして売っている。ESPN等のデマンドが高いチャンネルは、デマンドの低いチャンネルとパッケージにされている。料金は月2セントのチャンネルであっても、ESPNとパッケージで売れば、視聴可能世帯は1億になり、年で2400万ドルの収入にあり、広告収入も入る。料金の安いチャンネルは、既存チャンネル(コンテンツ)のリサイクルであり、製作コストは低い。
以前は、多チャンネル事業者は、安く、チャンネルを増やそうとしており、パッケージ方式は歓迎であった。ESPNとの契約が1世帯あたり、月に数十セント増えても、それで数チャンネル増えるのであれば問題は無かった。しかし、多チャンネル事業者の態度は変わり始めている。CablevisionがViacomが不当なパッケージ販売をしていると裁判所に訴えた事(3月記事参照)で、アラカルト化は再度、大きな話題になり始めている。
これまでのパッケージ化の反対は、消費者団体が多チャンネル事業者に対して行なっていた物であるが、今回は、多チャンネル事業者が訴えを起こしている。Cablevisionの訴えによると、パッケージを拒否し、不要なチャンネルを省いた場合、Viacomは10億ドルの罰金を請求すると訴えている。Viacomは、10億ドルと言う金額はパッケージ割引が無かった場合の単純計算であり、不当な事はしていないと反論している。
2006年にはアラカルト化に対して猛反対していた事業者がコンテンツ事業者のパッケージ販売に反対をし始めたかの理由は2つある。1つは、チャンネルが増えすぎた事である。加入者はすでにチャンネルが増えても喜ばなくなっている。面白いチャンネルが加わるのであれば良いが、単にチャンネルが増え得ることはすでに望んでいなく、値上げの理由にはならない。また、多チャンネル事業者は帯域の有効利用を考えなければならない。帯域を増やすのは大きな投資である。ケーブルTV事業者に取り、視聴者の少ないチャンネルを増やすより、その帯域をVOD、ケーブルモデム等のサービスの拡張をした方が利益になる。
もう1つの理由は、OTT-Vのプレッシャーである。多チャンネルサービス内での競合はあるが、ケーブルTVでも、衛星でも料金形態はパッケージであり、競争上の大きなファクターでは無かった。しかし、Netflix等のサービスにより、パッケージ化に対する疑問が利用者から出始めている。ielsenは、放送を見ていない世帯が500万世帯になっていると報告しており、これまでと同じ方法で多チャンネルサービスを続けたのでは、これら世帯は増えていくであろう。パッケージ化見直しの動きを見せているのはCablevisionだけではない。Wall Street紙は、Verizonは、コンテンツ事業者とより柔軟な契約の交渉を始めていると報道している。同紙によると、Verizonは、視聴ベースの料金を導入する事を検討している。Verizonは視聴者がどのチャンネルを見ているかを調べ、実際の視聴経歴に応じた料金を請求する方式を導入しようとしており、コンテンツ事業者との交渉を行なっている。
