アメリカの地上波放送局とネットワークは広告収入以外に多チャンネル事業者からの再送信料を得ている。Disney等のネットワーク事業者は多チャンネル向けネットワーク、それにネットワーク所有の放送局の再送信契約をまとめて行う。ネットワーク事業者が求める契約は「全部かゼロ」で普通で、4大地上波ネットワーク、あるいはESPN等の主要なネットワークの再送信をしたければ、視聴者が少ないネットワークとも契約しなければならない。これによりネットワークは契約額を増やしてきた。
ネットワーク所有の放送局が無い地域の地上波再送信契約は加盟局の親会社(Nexstar、Sinclair等)が行う。地上波所有会社は多チャンネル事業者との再送信料の約3分の1を得、残りは地上波ネットワークに支払う。放送広告が減ることで再送信料は放送局の重要な収入源になっており、契約料はここ数年で大幅に増えている。
コードカッティングにより多チャンネルサービスでの広告収入も減っており、多チャンネル向けネットワークも再送信料の値上げで収入を維持してきた。しかし、再送信料の値上げは、多チャンネル料金の値上げになる。料金の値上げはコードカッティングを増やすことになり、負のスパイラルであり、多チャンネル事業者は再送信料の値上げを拒否し始めている。
7月にはDirecTVはNexstarとの契約更新に合意せず、DirecTVでNexstarが所有する、あるいは管理している180近い放送局を見ることが出来なくなった。DirecTVでのNexstar局のブラックアウトは75日近く続いた。HearstとDish Networkも争っており、現在でも、Hearst所有の37局がDishではブラックアウトされている。
9月にはケーブルTVでは第2位のCharterとDisneyとの契約交渉がまとまらずに、DisneyのESPN、Disney Channel等のチャンネル、それにDisney所有のABC局がCharterでは視聴出来なくなった。Charterは加入者がこれらチャンネルを永遠に見ることが出来なくなっても、Disneyの要求を受け入れることは不可能であるし、争いは約2週間続いた。CharterがDisneyと契約出来なければ、多くのケーブルTV加入者を失うが、Charterの収入源はすでにブロードバンドにシフトをしている。DisneyはCharterと契約出来なければ年間約$22億の再送信料を失い、さらにCharterの1471万世帯分の広告収入も無くなる。
最終的にDisneyが折れ、再送信契約から視聴者数の少ないBaby TV、Disney Junior、Disney XD、Freeform、FXM、FXX、Nat Geo Wild、それにNat Geo Mundoを外すことに合意し、さらに、CharterのSpectrum Selectの加入者にはDisney+、Select Plusの加入者にはDisney+とESPN+を無料で提供する。また、DisneyがESPNのDTC版を開始した時点で、CharterのESPNが含まれるプランに加入している世帯は無料でESPNのDTC版も見られるようになる。この契約により、Charterは視聴者の少ないチャンネルを切ることが出来る。チャンネルが減ることに対する不満は出るであろうが、Disney+を無料で視聴出来るメリットがある。Disneyは予定していた再送信料収入は得ることが出来ないが、Disney+加入者は約980万世帯増え、広告収入は増加する。
このCharterとDisneyの契約は今後の再送信契約に大きな影響を与える。他の多チャンネル事業者はDisneyに対して同様の契約変更を求めるであろう。すぐには不可能であっても、次期の契約交渉ではCharterとの契約が基準になる。さらに、多チャンネル事業者はNBCUniversal、Paramount Global、WBD等に対しても視聴者の少ないチャンネルを契約から除き、DTCサービスをケーブルTV加入者に提供する事を求めるであろう。
これは、多チャンネルサービスが生き残る方法になるかも知れない。視聴者が少ないチャンネルを基本プランから切ることが出来れば、料金を安くすることが出来る。多チャンネルサービスがDTCサービスのアグリゲーターとなることが出来れば、支払いが1つになり、複数のアプリを使い分ける必要がなく、検索も統合が出来、消費者には魅力的なサービスになる。
