脚本家のストライキが終わる

脚本家の組合、Writers Guild of America(WGA)とスタジオ代表のAlliance of Motion Picture and Television Producers(AMPTP)は次の3年間の労働契約に合意し、150日に近いストライキが終わった。脚本家は仕事に戻り、AMPTPは俳優代表のSAG-AFTRAとの交渉を再開した。

WGAの要求には賃金の値上げ、労働条件等も含まれるが、大きな2つのポイントはAIの利用と残余支払いである。AIの利用に関しては8月に法廷が著作権局がAIを使った作品に対しては著作権を与えない事を支持する判決を下したことで、大きな進歩があった。スタジオは著作権を得ることが出来ない作品に投資することはありえなく、AI利用を要求する必要性は減った。

AIに関しては下記の内容で合意している。

  • AIは文学的な素材を書いたり書き換えたりすることはできず、AIが生成した素材は原典とはみなされない。つまり、AIが生成した素材は、作家のクレジットや権利を損なうために使用することは出来ない。
  • 脚本家がサービスを提供する際にAIを使用することは可能であるが、スタジオがAIソフトウェアの使用を要求することは出来ない。
  • スタジオは、脚本家に提供する資料がAIによって生成されたものである場合、またはAIによって生成された資料、素材が含まれる場合、それを開示しなければならない。
  • WGAはAIを訓練するためのに脚本家の作品を利用することは契約、その他の法律で禁止されていることを主張する権利を留保する。

作品からの二次利用から生まれる残余収入はこれまでのすべてのアーチストとスタジオの紛争の背景にある。これは技術の進歩で起きる問題でもある。最初の二次利用に関する争いは1930年代にニューヨークのラジオ局が生ドラマを録画し、それを俳優への支払い無しで他の時間帯にある放送局で放送したことで始まった。SAG-AFTRAの前身のAmerican Federation of Radio Artistsが局と戦い、1942年に最初の残余収入の権利を得た。映像コンテツではケーブルTV、ビデオ・カセット、インターネット等の登場の度に争いが起きている。WGAは2001年にインターネットでの配信もVTR等と同様に二次利用として、1.2%の残余収入を得た。

現在の問題は、ストリーミング向けの作品には二次利用のコンセプトが存在しないことである。ストリーミング向けに制作されたコンテンツは長期間ライブラリーとして配信される。ストリーミングのもう1つの問題は映画、テレビ番組の二次利用を減らしたことである。ストリーミングの普及でディスクでの販売、ケーブルTVでの再放送は大きくと減っている。テレビ、劇場向けのコンテンツが減り、ストリーミング主体になることは残余収入が激減することになる。

監督代表のDGAは1981年の交渉で、HBO等の有料チャンネルからは二次利用の固定額ではなく、加入者あたりの支払いを得ることで合意した。一定期間の再放送では二次利用の支払いは起きないが、それを過ぎた再放送では加入者数に応じた残余支払いをする。この方法は後にWGA、それにSAG-AFTRAも採用している。ストリーミングでも同様に視聴者数に応じた支払いを求めていたが、AMPTPはこれは不可能であると反対していた。

WGAとAMPTPは結局、ヒットしたコンテンツに対するボーナスと海外での配信の利用料の増加で合意をした。ストリーミング向けの大きな予算のコンテンツはリリースから90日以内にアメリカでの20%の加入者が視聴した場合、脚本家はTV同等のコンテンツであれば$9,000から$16,400、映画であれば$40,500のボーナスを得る。ボーナスはストリーミング向けに制作されたコンテンツのみが対象で、TV向けに制作され、二次利用としてストリーミングされるコンテンツには当てはまらない。また、海外での配信の二次利用の支払額は76%の増加になる。