スポーツのストリーミング配信

ドラマはオンデマンドでの視聴が当たり前になり、放送の重要なコンテンツはニュースとスポーツと言われていた。しかし、FASTの登場でニュースもストリーミングになり始めている。放送に残っているのはスポーツである。スポーツもストリーミングで見ることは出来るが、まだ放送が主体である。

リーグ/チームは試合をストリーミングすることに強い関心を示している。豊富な資金を持つテック系の会社と契約する魅力もあるが、それ以上に重要なことは若い、新しいファンを得ることである。放送に依存している限り、放送を見なくなっている若い世代をファンにすることは出来ない。また、ファン層が年取っていくのであれば、将来性も無くなる。しかし、スポーツをストリーミングで提供するには複数の課題がある。

最大の問題はマネタイズの方法である。放送でのマネタイズの方法は広告と視聴者からの料金である。メージャーな試合であれば、多額の広告料を得られる。iSpot.tvによると2022年のスポーツ放送からネットワークが得た広告収入は$177億であった。2022年の放送広告収入は約650億で、その内の$470億がネットワークの収入であったので、スポーツはネットワークの広告収入の37%を占めている。ローカル局もスポーツ放送でスポット広告の収入をえるので、スポーツからの広告は$177億以上になる。2022年のCTV広告の規模は$200億であった。ネットワークのスポーツ放送からの広告収入より僅かに大きいだけでる。スポーツのストリーミングではまだ、放送規模の広告収入は得ることが出来ない。

ストリーミングでのスポーツ配信の収入は利用者からの料金がほとんどである。ストリーミングでの独占スポーツ配信としては、Amazon Prime VideoはNFLの木曜の試合、Apple TV+はMBLの金曜の試合とMLS Pass(シーズンで$79)、YouTubeはNFL Sunday Ticket(シーズンで$449)、PeacockのMLBの日曜朝の試合、Paramount+のUEFA Champions League等がある。SVODサービス、あるいはシーズン・パスである。

SVODでスポーツ配信はそれで儲けるためよりも、加入者を引き付けることが目的である。例えば、NBCUniversalのPeacockは地上波のNBCが放送する多くの試合を同時配信しているが、全てではない。一部の試合はPeacockの独占で、NBCでは放送されない試合もある。MLBの日曜朝の試合、それに来期のNFLでは2試合がPeacock独占になる。これらの試合が見たければ、Peacockを試す必要がある。

有料サービスとして十分な収入を得るのも困難である。DisneyのESPNは多チャンネル向けネットワークであり、多チャンネル事業者から1加入者当たり、月約$10の料金を得ている。ESPNはベーシック・チャンネルであるので、ESPN視聴者だけでなく、多チャンネルサービスに加入している6000万世帯全体からの収入がある。ESPNの総視聴者数は2500万人である。1世帯に1人としても、ESPNを見ているのは多チャンネルサービス加入世帯の40%である。ESPNをストリーミング化した場合、同じ収入を得るためには料金を$20以上にする必要がある。

DisneyにはストリーミングサービスのESPN+もあり、$10で提供している。ESPNとESPN+の試合は異なり、ESPNで放送する試合は、ESPN+ではストリーミングされなく、ESPN+での試合はESPNでは放送されていない。ESPN+からの収入も加えると、Disneyはストリーミング版のESPNは$30以上に設定する必要があり、売るのには困難になる。

また、スポーツのストリーミングをインターネットが支えることが出来るかと言う問題もある。昨年のAmazon Prime VideoのNFLの木曜の試合は平均で960万人の視聴があった。Amazonは1000万人の同時視聴を支えることが出来るが、誰でもが出来ることではない。2023年のスーパーボウルは700万人がストリーミングで視聴をした。しかし、これはFox.comだけの配信ではなく、Fubo TV、YouTube TV等のvMVPD、それにNFL.com等の合計である。スポーツに必要な大規模の同時配信をサポート出来る設備を持つことは可能であるが、コストを回収は容易ではない。

放送か、ストリーミングかではなく、両者を使い分けるオプションもある。NASCARは2月から10月までのシーズンを、春、夏、プレーオフの3期に分け、放送とストリーミングを使い分けることを検討している。現在は前半と後半の2期制で、Foxが前半、NBCUniversalが後半の権利を得ている。3シーズンにした場合、Foxが春、NBCUが9月と10月のプレーオフで、視聴者が少ない夏期をストリーミングのみで配信する。NASCARの下位カテゴリーのXfinity Seriesはストリーミングだけでの配信になる。ストリーミング事業者としてはNBCUのPeacock、それにAmazon等が名乗り出ている。

スーパーボウルのような視聴者の規模が多い試合をストリーミングするのは効率的ではない。同様に同じ時間帯に複数の試合を放送するために、ESPNのようにESPN、ESPN2、ESPNU等、複数のチャンネルを作るのも非効率である。放送とストリーミングのそれぞれの特徴を生かし、使い分けるのもいいオプションであるが、権利を分けすぎるとファンがチームをフォローすることを困難にする。例えば、MLBは地上波のFox、ケーブルTVチャンネルのFS1、ESPN、TBS、MLB Network、そしてストリーミングサービスのApple TV+、Peacock、ESPN+で放送されている。それぞれ独占であるので、MLBのファンはケーブルTVに加入し、さらに3つのSVODサービスに加入する必要がある。さらに、ネットワークで放送されない試合を見るのには地域スポーツネットワーク、あるいはMLB.TVに加入することになり、新しいファンの獲得にはマイナスである。