映画ビジネスの回復とPVOD

映画館が再オープンし、映画ビジネスの回復し始めている。The Numbersによると、2021年7月9日までの国内の興行売上は$14.61億で、2020年全体の売上($20.5億)の71%に達しており、8月中には2020年を上回る。劇場公開になった映画の本数も2020年の23本を抜き、34本になっている。本数としては2019年の44本を追い越すであろうが、売上はまだ一昨年の14%にしかなっていないく、完全な回復には遠い。

The Numbers

7月9日にはDisneyの「Black Widow」がリリースされ、最初の1週間で$8000万の売上があった。9日からの1週の興行売上は全体で$1.17億に達し、パンダミック以後初めて$1億を超えた週となった。「Black Widow」の海外での興行売上は$7800万あり、合計で$1.58億の売上があった。さらに「Black Widow」はDisney+でのプレミアムVODとして$30でも公開になり、Disneyによると最初の週だけで$6000万の売上があり、「Black Widow」の1週間の合計売上は$2億を超えた。

Black Widow以前の記録は6月25日に公開になったUniversalの「F9: The Fast Saga」で、最初の週で$7000万の売上があった。Black Widowはこれを抜き、さらにPVODとしても$6000万の収入を得たことで、Disneyの映画の公開と同時にDisney+上でPVODとしてリリースする戦略に懐疑的であった人も成功を認めている。PVODの売上が$6000という事は、200万世帯以上が利用したことになる。1世帯で平均で3人が視聴したとすると、600万人が見たことになる。

しかし、これは劇場側には大きな損失となる。チケットが平均$9で、600万人をPVODに失ったことになると、劇場は$5400万を損したことになる。劇場を代表するNational Association of Theater Owners(NATO)は「Black Widow」は興行的には失敗であったと、批判している。NATOによると、「Black Widow」の2週間目の興行売上は67%もの減少をしただけでなく、2週目の金曜から土曜だけで、41%の減少があった。NATOはDisneyはBlack WidowをPVODで配信したために、2週目には人気は冷え、Disneyとしても大きな売上の機会を逃したと言っている。

だが、NATOの主張は必ずしも正しくない。PVODで提供したことで、劇場観客を失ったのは事実であるが、Disneyが収入を失ったとは言えない。劇場での売上からDisneyが得るのは半分程度である。これに対して、PVODではVudu等の第3者のプラットフォームを使ってもコミッションは20%程度でる。Disneyの場合は自社のプラットフォームで配信したので、まるまる$6000万の収入があった。最初の1週間のDisneyの劇場からの収入は$1.58億の半分の$8000万とPVODからの収入は$6000万となる。Disney+のPVODとしたことで、新たにDisney+に加入した人もあるので、PVODにより減収になったとは言えいない。

また、PVODで公開したことで「Black Widow」の人気が廃れるのが早く、損したとも言えない。「F9」はPVODでの配信はなかったが、2週目の興行売上は67%の減少で「Black Widow」と同じである。また、これまでの「F9」の売上は$1.69億であるのに対して、「Black Widow」は$1.67億であり、この2つの比較ではPVODの影響は特に無い。

PVODの成功は一時的であり、映画は映画館での視聴が好まれるとの意見もある。PVODの利用に関心があるかに対して、Hub Entertainment Researchが調査をしている。同社はPVODの料金が$10、$20、$30とした場合、サービスの利用に関心があるかを調べた。35歳以上ではPVODが$30であった場合、75%は利用しないと答えている。料金が$10でも58%は利用しないと答えており、劇場での視聴を好んでいる。だが、18歳から34歳では$30でも半分以上の52%は利用に関心があり、$10であった場合は70%が利用する。どちらも需要があるわけだが、頻繁に映画に行く人の年齢は25歳から39歳で、2019年では観客全体の10.7%を占めていた。PVODは一時的なものではは無く、利用者は増えていく可能性が高い。


Hub Entertainment Research