双方向性の追求

ケーブルTV事業者を代表するNCTAのCable Showが5月11日から13日に開催された。今年のCable Showの大きな話題は双方向性であった。ケーブルTVには以前から双方向性はあった。しかし、EPG(IPG)にしても、VODにしても、インターネットに比べると、その双方向機能は非常にベーシックである。インターネットによるTVコンテンツのストリーミングが増えている中、多チャンネルサービスも双方向機能を充実させていく必要がある。

多チャンネル放送のインタラクティブ性の向上の重要な要素にIPGがある。インタラクティブ・プログラミング・ガイドとは言っても、その殆どは昔からの番組表に若干の操作機能が加わった程度で、インタラクティブとは言いがたいのが現実である。Coxは、Cable ShowでそのTru2wayベースの次世代IPG、「Trio」を発表した。TrioはAppleの製品をデザインした事で知られるfrog designがそのインタフェースを作り、NDSがソフトウェア開発を行った。CoxはTrioをその新しい上級サービスの「Plus」の重要なコンポーネントとしている。Plusサービスは月額$5のオプションで、Tue2way対応のCiscoの新しいSTBにより提供される。

Trioの名前はその3つのパネルを使ったナビゲーションから来ている。左のパネルはチャンネル、真ん中がそのチャンネルの番組、右が番組内容を表示する。ユーザは放送番組、VOD、それにDVRに録画された番組の検索が出来る。画面の上部には「Zone Channels」があり、複数のチャンネルをモザイク式に表示している。Zone Channelは、ニュース等の関連チャンネルを同時に表示し、見たいチャンネルを簡単に探すことを可能にする。

Plusのサービスを受けるには新しいTru2way対応のSTBが必要になる。TrioをサポートするCiscoの新しいDVRはマルチルーム機能を持ち、DVRに録画された番組を他の部屋のSTB向けにMoCAを使い、送る事が出来る。Trioを使えるのは、Plusサービスに加入したユーザだけだが、既存のSTBのユーザに対してはCoxはその全システムでRovi社のPassport IPGに統一をする。

Cablevisionも、TrioのZone Channelと同じ様なモザイク画面によるナビゲーション機能を提供し始めた。CablevisionはActiveVideo NetworkのCloudTVプラットフォームを使い、スポーツ、ニュース、子供番組等のジャンルで、画面をモザイク表示し、ナビゲーションを行う機能を提供し始めている。

ComcastはそのIPG、I-GuideをCiscoのSTBにも対応させる事を発表した。I-Guideは、ComcastとRoviとのジョイントベンチャーのGuideWorksが開発した物で、これまではMotorolaのSTBにしか対応していなかった。しかし、2005年に発表されたI-Guideは、すでに先端的では無くなっている。GuideWorksはI-Guideのバージョンアップを行うと共に、16:9の画面に特化した新しいIPGの「Buckeye」を開発している。Buckeyeは、今年中にテスト導入が始まり、2011年には正式に導入される予定。

Roviはまた、Cable Showでその新しいインタフェースのTotalGuideをケーブルTV事業者に見せた。TotalGuideは、家電ベンダー向けのウェブベースのインタフェースとして始まったが、RoviはこれをTV用のIPGに改良し、リニア番組の選択から、STBからインターネットのビデオ、個人のメディアコレクションまで総合的に管理出来るインタフェースとして売り込んでいる。TotalGuideのユニークな機能は六次(six degree)のブラウジング機能で、現在見ているコンテンツのメタデータを使い、同じ俳優、似たテーマ等のビデオコンテンツにジャンプをする事が出来る。

TV番組にメタデータは完全ではなく、これまでにIPGはメタデータを積極的には使っていなかった。TiVoは自社でメタデータを管理し、それを有効に使うシステムを売り物にしている。徐々に多チャンネル事業者もこのTiVoのビジネスモデルに注目をし始めている。Comcast等は、TiVoのソフトウェアをSTBに組み込み、そのメタデータを使った機能を利用出来るようにしている。TiVoの機能で、特に関心が持たれているのはそのレコメンデーション機能だ。これまで、IPGは視聴者が見たい番組を探すことを可能にしているが、視聴者の好みに応じたレコメンデーションを積極的に行う事は無かった。VODで、お勧め番組が表示される事があるが、これらは広告であり、本当のレコメンデーションではない。多チャネル事業者のDish、Verizon、AT&Tは積極的にレコメンデーション機能を利用し始めている。

Dishはその最新のSling内蔵のVIP 922 DVRで、視聴者に対して、その視聴歴から選んだ明日放送される番組の中から4つをレコメンドする機能を提供している。このレコメンデーション機能は、ChoiceStream社の技術を使っている。AT&TもChoiceStream社を使い、そのVODで提供される番組をレコメンドしている。AT&Tはまた、サービスのグレードアップのオファーにもChoiceStreamのレコメンデーション機能を使っている。AT&Tは、その視聴者が興味を持ちそうだが、現在加入していないパッケージの中から番組をレコメンドし、無償で視聴可能にする事で、グレードアップをさせようとしている。

VerizonもVODでレコメンデーション機能を使っている。TV番組のレコメンデーション技術を提供している会社としては、ChoiceStream、Rovi、Jinni、ThinkAnalytics等がある。Google TV(後記)の詳細は発表されていないが、レコメンデーション機能は搭載するであろう。多チャンネルサービスで提供されるチャンネル数は増えているが、視聴者が知らなければ、その意味は無い。いかに新しいチャンネルを見せ、また、有料のVODサービスを使わせるかは、多チャンネル事業者に取り、大きな課題であり、レコメンデーション機能は重要になっている。

IPGだけでなく、番組、広告の双方向化も進められている。ケーブルTV事業者はCable Showにおいて、双方向規格のEBIFに対応するSTBを持つ世帯は2010年末までに2500万世帯を越えると発表した。Comcastは1900万世帯のSTBを今年の末までにEBIF対応にする予定で、Time Warner Cableは600万世帯をEBIF対応にする計画を発表している。TWCはニューヨークで、EBIFを使った双方向広告をスタートさせている。

ケーブルTV事業者はEBIFを使った双方向サービスの共通ブランド名をSelecTVとする事を発表している。OCAP技術をTru2wayのブランド名で呼ぶように、EBIFを使ったサービスをケーブルTV事業者はSelecTVと呼ぶ。SelecTVのブランド名はCanoe Venturesが管理し、ケーブルTV事業者、プログラミング事業者等にライセンスされる。

Canoe Ventureが中心になっている双方向広告は、この4半期の末に開始が予定されているが、多チャンネル向けのネットワークを持つNBC Universal、Rainbow Media、Discover Network、Comcastの4社は、Canoeに協力し、双方向広告を放送する事を発表した。