ラスベガスに続き、フィラデルフィア、ナッシュビル、それにソルトレイクシティでもATSC 3.0でのNEXTGEN TV放送が開始した。ラスベガスでの放送と同様に複数の放送局のパートナーシップでサービスが実現している。構造としては、パートナーシップの内の1つか、2つの局がATSC 3.0に移行し、その地域のATSC 3.0ホスト局としてパートナーシップ内の局の主チャンネルをすべてATSC 3.0で放送する。残りの局はATSC 3.0に移行した局の主チャンネルと副チャンネルをATSC 1.0で放送する。
フィラデルフィアの場合、パートナーシップはSinclair保有の2局、WPGH(Fox加盟局)とWPNT(MyNetworkTV加盟局)、それにHearstのWTAE(ABC加盟局)で、WPNTがATSC 3.0にコンバートし、自局の主チャンネルに加え、WPGHとWPNTの主チャンネルをATSC 3.0で放送する。WPNTの主チャンネルMyNetworkTVはWPGHが、副チャンネルのStadium、Comet、TBDの3つをWTAEがATSC 1.0で再送信する。
ナッシュビルではCW加盟局のWNAB(Tennessee Broadcasting)とMyNetworkTV加盟局のWUXP(Sinclair)がATSC 3.0に移行し、自局の主チャンネルとWTVF(ScrippsのCBS加盟局)、WKRN(NexstarのABC加盟局)、それにWZTV(SinclairのFox局)の主チャンネルを放送する。WNABとWUXPの主チャンネルと副チャンネルは残りのパートナー局が引き続きATSC 1.0で放送をする。WNABはTennessee Broadcasting社が持つが、Sinclairに運営をアウトソースしているので、実質的には5社中の3社がSinclair系である。
ソルトレイクシティではSinclairのKUTV(CBS加盟)局とKJZZ(独立系)局、それにNexstarのKTVX(ABC加盟)局とKUCW(CW加盟)局がパートナーシップを組んでいる。
このようなアレンジメントが必要なのは、ATSC 3.0には後位互換性が無く、さらに、NTSC からATSC 1.0への移行時のように移行期間中に使える2つ目のチャンネルが与えられていないためである。既存の受信機ではATSC 3.0に移行したチャンネルは見えないので、FCCはATSC 3.0に移行したチャンネルは、同地域の他局と契約し、ATSC 1.0での放送を継続する事を義務化している。
放送局は移行期間中に未使用のチャンネルをATSC 1.0の放送に使う許可を求めていたが、FCCは最近にこれを却下した。空きチャンネル(ホワイトスペース)はブロードバンド・サービスに利用する事が認められており、MicrosoftのAir Bandイニシアチブ等が動き始めており、FCCはこれを優先した。しかし、FCCはATSC 3.0での放送をNEXTGEN TVと呼び始めたことは放送局には大きな収穫である。
ATSC 1.0で放送するパートナー局が見つけられない等の事情で、再配信規制が出来ない局は免除をFCC申請する事が出来、FCCは申請があった場合、60日間以内にその決定を出す事を約束した。また、ATSC 1.0での再送信が求められる期間は2023年までとし、それ以後はATSC 1.0での再送信は不要になる。ATSC 1.0での再送信がなくなった場合、視聴者はATSC 3.0対応の受信機を購入する、あるいは多チャンネル放送での再送信で視聴する事が必要となる。
この時点で多チャンネルサービス事業者はATSC 3.0を受信し、1.0に変換し、再送信することになる。またNEXTGEN TVが普及していれば、ケーブルもATSC 3.0での放送をする可能性がある。ケーブルTV事業者代表のNTSCはFCCに対してケーブルTV事業者にもATSC 3.0をRAND(Reasonable And Non-Discriminatory – 妥当で差別のない)ライセンスで提供する事を求めていたが、FCCはこれを却下し、大きなパテント問題が出たら検討するとの約束だけににとどめた。
また、ワシントンDCではNEXTGEN TVの緊急警報システムのテストが行われる。ATSC 3.0では特定の地域の受信機だけに警報を送る事が出来る。テストを行うのはSinclair社のWJLA局とFox保有のWTTG局で、テストは2週間単位の4フェーズ構成で行われる。最初のフェーズでは決まったスケジュールで文字情報だけでのテスト警報が特定の時間に、特定の人に送られる。次のフェーズではこれに実際の警報が加わる。3フェースでは、限定された文字以外の情報が追加され、最後のフェーズでは地図情報等のリッチメディアを使った警報がテストされる。
