テレビ局に対する所有規制は2つある。1つは局を所有する会社が持つことが出来る規模を規制するもので、1社が持てる局の合計世帯リーチ率を最大39%としている。アナログ放送時代の残りで、UHF局のリーチ率はVHF局の半分として計算される。もう1つは同一放送地域で所有出来る局の数を最大2局としているが、その地域で視聴者数でトップ4局の内の2局を所有することは出来ない。
放送局所有会社はこれら規制の緩和を求めてきたが、今回、FCCに対して完全な廃止を求めた背景にはATSC 3.0への移行がある。デジタル移行の時のように一時的に両方の規格で放送する帯域を与えることが出来ない。競売で減った帯域内で移行をする必要があり、地域内の1、2局がATSC 3.0に移行し、地域内の他局のチャンネルをATSC 3.0で放送している。1つの帯域で、複数のチャンネルを放送しており、4Kでの放送、データ放送等をする帯域の余裕はない。
解決方法の1つは、Nexstar等の大手が同地域で複数の局を所有することを許可し、移行期間中はATSC 1.0と3.0での放送をすることを可能にすることである。自局のチャンネルだけでなく、複数局を持つことが出来ない局のチャンネルもATSC 1.0でサイマルキャストすることで、限られた帯域内で、ATSC 1.0と3.0での放送を一時的に続け、ATSC 3.0へのスムーズな移行をすることが出来る。
これでATSC 1.0から3.0へのスムーズな移行が可能になるが、収入を増やすにはリーチ率の規制も取り払う必要がある。UHFに対する割引があるので、39%を超えることは可能である。例えば、Nexstarの公式なリーチ率は38.9%であるが、実質リーチ率は70%である。しかし、UHF割引はループホールであり、使えなくなる可能性があり、完全な廃止を放送局所有会社は求めている。
ATSC 3.0により新しい収入源としてアドレッサブル広告による全米広告市場への参入、それにデータ放送があるが、どちらも全米規模で提供する必要がある。地上波でのアドレッサブル広告をするために、何社、何十局から広告枠を買わなければならないのであれば、広告主は利用しない。データ放送も同様である。データ放送に関しては大手放送局所有会社のNexstar、Gray、Sinclaire、E. W. Scripsは全米規模のデータ放送を可能にするために、帯域を束ねて販売するジョイント・ベンチャーのEdageBeamを設立している。広告分野でも同様なJVを設立することは可能だが、ローカル広告での大手が手を組むことは独禁法に触れる可能性がある。また、1社で多くの地域で局を持つこと方がより大きな広告収入が得られる。
しかし、放送局所有規制の廃止がローカル局を救うとは限らない。ラジオ局は1996年の通信法で所有規制が緩和された。この結果、小規模局が買収され、数社の大手が誕生した。1つの会社が複数の局を持つことで、効率的な運営が出来、収益は増えるはずであった。しかし、効率的な運営とは同じコンテンツを系列局で使い回すことであり、局のローカル性、独自性が無くなくなった。結局、聴取者をポッドキャストに奪われていく。ラジオ局所有会社は買収時の負債が残り、経営状況は悪化している。ラジオ局の所有規制緩和はラジオの衰退を止めることは出来なく、ラジオ離れを加速化させている。テレビでも同じことが起きる可能性がある。
