アドレッサブルTV広告の成長

特定視聴者だけに配信されるアドレッサブルなテレビ広告には増えており、2020年には$60億程度の規模になる。テレビ広告の市場規模は$700億であるので、アドレッサブル広告は10%近くを占める事になる。既存のテレビ広告は停滞しており、25%から30%で成長をしているアドレッサブル広告への期待が高いが、市場は断片化している。

アドレッサブルTV広告は大きく2つに分けることが出来る。1つは多チャンネルサービス上のものでeMarketerによると2020年には$33億になる。ケーブルTVより、衛星でのアドレッサブル広告の方が進んでおり、Dishは2012年からこの機能を提供している。衛星放送でのアドレッサブル広告は事前にDVRに広告を録画しておき、STB上で挿入される。衛星放送でのアドレッサブル広告が進んでいるのは全米キャンペーンが可能だからである。ケーブルTVでは、複数の事業者を使わないと全米広告が出来ない欠点がある。

ケーブルTV事業者はこの対応のためにCanoe Venturesを設立した。Canoeの目的はケーブルTV事業者が共通規格のリアルタイム広告挿入機能を導入し、全米規模でのアドレッサブル広告機能を提供する事の促進であった。しかし、この目的は完全には達成さなかった。放送番組へのアドレッサブル広告は出来ず、Canoe VenturesはVODに対する広告挿入だけを行っている。Comcastは新たにケーブルTV業界でのアドレッサブル広告の販売をするためにOn Addressability Initiativeを6月に設立した。イニシアティブにはComcast以外ではCoxとCharterが参加を発表している。

アドレッサブル広告はインターネットを使ったOTT型の多チャンネルでも提供されている。インターネットで提供する方が簡単であるが、加入者数が少ないので、広告規模も少ない。

2つ目はネットワークのウェブ、あるいはアプリ(Huluを含む)で配信されているTV番組への広告である。Magnaによるとこの市場の規模は2020年で26億である。この分野ではHuluが最大であるが、AT&Tが力を入れ始めている。同じインターネット上であり、他のインターネット媒体と統合したキャンペーンが可能である。AT&Tはインターネット広告のプログラマティック販売のプラットフォームのAppNexusを買収し、広告会社のXandrを設立している。

Xandrは最近Xandr Investと呼ばれるTV広告とデジタル広告を融合する機能を提供し始めており、TVとOTT広告だけでなく、モバイル、ウェブ、音声、ディスプレイ等の他の広告媒体も販売していく。Xandrはこの一環として、Communityと呼ばれるマーケットプレイスを立ち上げ、Tuner系のネットワークとCrunchyroll等のAT&TのOTTサービスに加え、Hearst、Newsy、Philo、Tubi、Xumo等の他のOTTサービスへの広告挿入も始めている。

AT&Tは同社の媒体をすべてXandrにまとめるためにTurnerをOpen APから脱退させている。Open APは既存のリニア放送の広告をデータ重視で販売する為にFox、Turner、Viacom、NBCが参加しいたコンソーシアムである。Open APは広告をターゲットした購買層が最も見ている番組に流すために、4つのネットワーク会社が共通したメトリックスを使うことを目的に2017年に設立された。しかし、TurnerはAT&TのWarnerMedia買収後にOpen APを辞めている。

これら2つに加え、新たなTV広告のアドレッサブル化もある。その1つはスマートTVを使った物である。スマートTVにはコンテンツの自動認識機能があり、これを使う事でインターネットで配信する広告をリニアで放送されている番組、さらには録画された番組での広告と差し替える事が可能である。この機能の普及のためには規格化が必要であり、VizioのスマートTV等に搭載されている自動コンテンツ認識機能(ACR)のInscape、それにDisney、Zandr、Comcast等がProjectOARを設置しており、最近にFoxもメンバーに加わっている。

次世代の放送規格のATSC 3.0も音声ウォーターマークにより、番組認識が出来、リアルタイムでの視聴データの収集、インターネットを併用したアドレッサブル広告が出来る。ATSC 3.0の放送は始まろうとしているが、対応したTVセットの販売は2020年以後である。

YouTube、AmazonのIMDb TV、Crackle+、Roku Channel等のAVODサービスでの広告はTV広告市場規模には含まれていない。しかし、これらのサービスにもTV番組があり、TV(コネクテッドTV)で視聴されることもある。これらAVODサービスも含めると、アドレッサブルTV広告市場はされに断片化される。既存のTV広告は手軽に広範囲の広告が出来ることが魅了であるが、アドレッサブルTV広告には様々なプラットフォーム、データ、仕組みがあり広範囲のキャンペーンは困難であることが問題である。