月別アーカイブ: 12月 2006

ATSC規格のモバイル放送

北米のデジタル地上波放送で採用されているATSC(Advanced Television System Committee)規格で使われているVSB(Vestigial Side Band)ではモバイル向けの放送は不可能と言われてきた。しかし,Sinclair Broadcast Group,Samsung,Rohde & SchwarzはAdvanced-VSB(A-VSB)と呼ばれる技術を開発しており,実証実験を成功させた。A-VSBはTurbo-Codingと呼ばれるFEC(前進型誤信号訂正)技術を使う。Turbo-Codingにより困難な環境での受信は非常に良くなるが,その為にビット数を使う。1.5 MbpsのTurbo-Codingの信号は375 Kbps程度のビデオ信号しか送る事が出来ない。しかし,A-VSBは既存のATSCで採用されている8-VSBに下位互換性があり,通常のHDTVの信号と共にモバイル向けの低レゾルーションのビデオ信号を送ることが出来る。

Sinclairは1990年代後半からATSCの規格がモバイル放送に対応していない事を問題にしてきた放送局会社であり,現在A-VSBに積極的に取り組んでいる。Sinclairは9月にこの技術を開発しているSamsungとRhode & Schwarzとの協力で,Sinclairが持つ,ニューヨーク州のバッファローのWUTV局でA-VSBの放送を実際に行ってのテストをした。テストではWUTVは通常の8-VSBを使ったHDTV放送に加え,2つの1.5 MbpsのA-VSBの放送を送った。A-VSBの放送は,モバイル向けのアンテナを取り付けた車で受信された。車にはA-VSBのレシーバとSamsungのYEPPポータブルデジタルメディアプレーヤが搭載され,MPEG-4で送られたビデオを受信した。テストは最高速度80マイルでで動く環境で行われた。Sinclairは十分なレベルでの受信が出来,150マイルにも耐えられると発表している。

使われたA-VSBのレシーバはSTBサイズであり,モバイル環境向けではない。モバイル対応にするにはFECの回路を小型化する必要がある。Samsungは小型化は可能であると語っている。このテストの結果を受け,ATSCではA-VSBの評価を10月から開始した。早ければ2007年7月頃にはA-VSBをATSCの規格とする事の検討が始まる。

関心を集めるBroadLogicのTeraPix

ケーブルTV事業者の最大の悩みはいかにしてアナログ放送を止め,100%デジタルに切り替えるかである。現在のケーブルTVはアナログとデジタルのハイブリッドであり,地上波再送信と基本的なケーブルチャンネルはアナログで放送し,それ以上のプレミアムチャンネルをデジタルで放送している。アナログチャンネルは全体の帯域の半分近くを占め,伝送効率は悪い。しかし,米国で販売されているテレビはアナログケーブル放送に対応しており,アナログで放送していればベーシックなサービスのみに加入している世帯ではSTBは不要であり,デジタルサービス加入世帯でもその全てのテレビにSTBを設置する必要は無く,コストは安い。しかし,いつまでもアナログで放送を続ける訳にはいかない。電話事業者の光ファイバーに対抗するサービスの提供にはより多くの帯域が必要であり,それはアナログ放送を終わらせることで得られる。さらにアナログ地上波放送は2009年2月に終了し,それ以後もアナログケーブル放送をするのであれば,デジタル放送をアナログ変換して放送する必要が出てくる。

ケーブルTV事業者がアナログ放送を止めるには,その加入者が持つ全てのTVにデジタルSTBを付けなければならない。アナログケーブルTVの加入者数はまだ3000万世帯以上ある。1世帯には数台のテレビがあり,STBの1台のコストは$100はするので,そのコストは膨大な物になる。いかに安い値段でSTBを作れるかが課題であった。

BroadLogic社のビデオプロセッサー,TeraPix BL80000はこの大きな問題に新しい解決方法を提供出来ることで大きな話題を集めている。10センチ四方程度のTeraPixは80チャンネルのMPEG-2をいっぺんにアナログ信号に変換する事が出来る。ケーブルTV事業者はTeraPixを内蔵したゲートウェイをアナログケーブルTVサービス加入者宅の外に取り付ければ,このゲートウェイがベーシックチャンネルをアナログに変換して宅内に送る。工事は家の外で済み,アナログサービスへの加入世帯はSTB等の新しい機械を触ることなく,同じようにサービスを受け続ける事が出来る。特定のチャンネルは変換せずに,そのままデジタルで流すことが出来るので,プレミアムサービスのチャンネルを見たければ,必要なテレビだけにデジタルSTBを取り付ければ良い

問題はTeraPixを使ったゲートウェイのコストである,サンプル出荷では1つ$300ドルもするが,大量生産が始まれば値段は下がる。1台のゲートウェイのコストが現在のSTB程度で出来れば,十分であろう。このコストを回収するためにアナログサービスの値段を上げる必要があっても,1つの家庭に数台のSTBを設置する事と比べれば,問題は少ない。また,利用者に取ってもSTBを使わなければならないことは面倒であり,STBが不可欠なDBS,IPTVとの競合で有利になる可能性もある。

しかし,課題も多く残っている。デジタル移行の際には大量のTeraPixゲートウェイが必要となり,それを各世帯に取り付けていくのは簡単ではない。家の外に取り付ける事で,STBの様に家庭に入らなければならない工事より簡単ではあるが,ゲートウェイは厳しい環境に耐える設計になっている必要があり,これはコストを高くする。また,電源をどこから取るかも問題である。外に取り付ける場合,家の中から電力を取ることは簡単に出来ない,同軸ケーブルで信号と同時に電力も送る方法も提案されているが,これも安全性等の面から課題がある。

しかし,TeraPixはデジタルからアナログへの変換をそれぞれのTVで行うのではなく,ゲートウェイとして一カ所で行うと言う新しい可能性をもたらせている。BroadLogic社はサンノゼに本社を持ち,約30人が勤務している。2回のベンチャー資金で合計3200万ドルを得ており,ベンチャーキャピタル以外ではCisco,Intel,Time Warner等の会社が投資を行っている。

CEAはOCAPの採用義務化に反対

コンシューマエレクトロニックスベンダーを代表するCEA(Consumer Electronic Association)はFCCに対して,デジタルケーブルTV対応(DCR)のSTB,テレビ等に対してOCAP(OpenCable Application Platform)の採用義務を無くすことを求めた。FCCはデジタルケーブルTVにおけるサービスとCPE(Customer Premise Equipment)のアンバンドル化の実現の為に,ケーブルTV事業者に対してSTBの標準規格の開発を求め,家電メーカーにその規格を採用したDCR(Digital Cable Ready)製品の販売を促している。このSTBの標準化はOpenCable規格と呼ばれ,ハードウェアの規格とOCAPと呼ばれるミドルウェアの規格で構成されている。ハードウェアの規格はSTB本体とPCカードを使う取り外し可能なCASカードで出来ている。このハードウェア規格でベーシックなデジタルケーブルサービスに対応し,双方向のCASカードで通常のVODに対応することが出来る。しかし,基礎的なVOD以上のインタラクティブなアプリケーションを走らせるにはOCAPが必要になる。

OpenCable規格はOCAPも含んだものであり,双方向のDCR製品はOCAPも採用しなければならない。CEAはケーブルTV事業者はそのベーシックサービスではOCAPを使ったアプリケーションは提供する予定が無く,OCAPのサポートはDCR製品のコストを高くするだけであり,OCAP無しのDCR製品の開発を認めて欲しいと訴えている。

ケーブルTV事業者はDCR製品が広まることは,そのサービスがDBS,IPTVより普及を保つことを助ける物であり,DCRを支持をしている。しかし,同時にケーブルTV事業者はDCRの普及はその進路を家電ベンダーとの調和にゆだねる事になり,恐れを持っている。多チャンネルサービスの将来は単純なビデオサービスではなく,高度なインタラクティブサービスを提供する事で得る収入が重要になっている。サービスとCPEの提供が一緒に出来れば,スムーズに新しいサービスの提供を始めることが出来るが,CPE(STB)の提供を家電メーカーに依存してでは新しいサービスに必要な機能をSTBに加えることが困難になる。ケーブルTV事業者を代表するNCTA(National Cable Telecommunications Association)この様な要望はCEAとNCTAが継続的に行っている会議の場で話し合うべきであり,FCCに陳情するべきでは無いとの声明を発表した。

盛り上がるCAS分離期限延長の動き

MSOに競合し,すでにケーブルサービスのある地域で競合サービスを提供する「オーバービルダー」の1社,RCNも2007年7月から実行予定のSTBからCASの分離義務に対しての延期をFCCに陳情した。RCNは特にフルデジタルのMotorola DCT700を分離の対象から外すことを求めている。RCNは光ファイバーベースのネットワークで,フルデジタルのサービスを提供しており,アナログチューナが無い,低コストのDCT700を主に使っている。RCNは現在,同社はMotorolaから84ドルの価格でDCT700を仕入れているが,これに代わるCableCARD搭載のDCH-100の値段は232ドルであり,CASの分離が実施され,DCT700に代わり,DCH-100を採用し始めた場合,サービスの値上げを余儀なくされるとして延期を求めている。

さらには議会もこの延期をサポートし始めている。上院通商委員会長のテッド・スティーブンス,下院エネルギーと通商委員会長のジョー・バートン,それに下院議員のフレッド・アップトンはFCCに対して,CableCARD採用の義務化を取りやめ,DCASの開発が完了した時点でCASの切り離しを義務化すべきだとの書面を送った。

フランチャイズ交渉を早める規則

FCCは電話事業者の多チャンネルビデオサービスの参入をスムーズに進めるためにフランチャイズ交渉を早める規制を提案している。テキサス,カリフォルニア,ニュージャージ等では州単位のフランチャイズを可能にする法を通過させたが,他の州は電話会社は個々の自治体と交渉する必要がある。自治体は色々な条件を出し,交渉が遅れることは常である。この案では自治体は電話会社等,すでに回線を敷設する既存の権利を持っている事業者との交渉期間は90日間と決められる。既存の権利が無い事業者との交渉期間は6ヶ月。FCCは1995年から2005年の間でケーブルTVの料金は95%も上がっており,電話会社の参入を早めることが競争市場を作るのに重要だと語っている。

RCNを狙うComcastとVerizon

Telcoに取ってはCLEC(Competitive Local Exchange Carrier),MSOに取っては オーバービルダー(すでにケーブルがある地域で新たにケーブルTVを提供する事業者)であるRCNは2006年9月に自社を最も高い入札者に売ることを発表した。RCNはボストン,ニューヨーク,東ペンシルバニア,ワシントンDC,シカゴで光ファイバー上でブロードバンド,ビデオ,電話サービスを提供している。この競売はプライベートエクイティー会社等の関心を集め,現在で15億ドルから18億ドルの入札額になっている。競売は2007年1月まで続くと思われるが,RCNの購入にはプライベートエクイティー会社だけでなく,Comcast,Verizonも関心を示している。Verizonに取ってはこれらの地域でビデオサービスに参入する近道になる。Comcastはシカゴ,ボストン,ワシントンDCではすでにケーブルシステムを持っており,RCNの購入の価値は少ないように思える。しかし,RCNがVerizonの手に落ちることはComcastに取り,大きな脅威であり,ComcastがRCNの競売に関わっているのはRCNをVerizonに渡さない為だとの意見もある。

CableLabsがM-Card認証テストを開始

CableLabsはOpenCable規格の一部で,CASを内蔵したCableCARDのマルチストリーム版(通称M-Card)の認証テストを開始する。これまでのCableCARDは1つのストリームにしか対応出来ない。テレビであれば,これで問題は無いが,複数のチューナを持つDVRでは問題が出る。TiVoのSeries3はデジタルケーブルTVに対応しており,2つのケーブルTVチューナを内蔵している。M-Cardも使えるが,まだ出荷にはなっていないので,TiVoは2つのCableCARDのスロットを取り付けることでこの問題を回避している。M-Cardの認証テストは2007年1月から開始の予定。

Charterがオンデマンド広告をテスト

Charter CommunicationsはそのセントルイスのケーブルTVシステムで,無料VODのビデオへのリアルタイムなオンデマンド広告挿入のテストを開始した。テストにはAtlas On Demand,C-COR,Harmonics,TVN Entertainment等が協力している。広告はVODのビデオに事前に挿入されるのではなく,視聴者が選んだ時点で適切な,最新の広告を挿入していく。他のケーブルTV事業者も同様なオンデマンド広告のテストをしているが,Charterはそのテストはこれまででは最大規模の物になると発表している。

DisneyとComcastがVOD契約

DisneyはComcastのVODサービスに対してそのコンテンツを提供する契約を結んだ。DisneyのABCは他のネットワークより先にその番組をiTunesで販売を始め,また,いち早く自社のウェブサイトからでも提供を始めていたが,ケーブルTVのVODで番組を提供する事ではNBC,CBSが早く,ABCはまだであった。今回の契約で,DisneyはABCのDesperate Housewives,Lost等のドラマ,ESPN,Toon Disneyの番組を2007年秋より,Comcastの無料VODで提供を開始する。Disneyの映画は有料VODとして,1本3.99ドルで提供になる。また,ComcastはDisneyと共同で経営してきたケーブルTVネットワークのE! NetworkのDisneyのシェア39.5%を12.3億ドルで買い,E!は100%Comcastの子会社になる。

U-VerseがHDを開始

AT&Tは現在テキサス州のサンアントニオでそのIPTVサービスのU-Verseを提供しているが,11月から25のHDチャンネルの提供を開始した。サンアントニオのU-Verseでは1世帯に対して最大4ストリームを提供出来るが,HDはその内の1つに限られている。しかし,AT&Tは2つのHD,2つのSDを提供する帯域はあり,しばらくテストを行った後に,HDストリームを2つに増やすと発表している。HDパッケージは月額$10で提供される。AT&Tはこの他,PCのブラウザーからDVRの録画予約を行えるサービスも発表した。AT&TはU-Verseのサービスをヒューストンでも最近介しており,年内には最低でも7つの地域でサービスを立ち上げる予定。

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