U.S. Digital Television(USDTV)が倒産をした。USDTVはアルバカーキ,ダラス,ソルトレーク市,ラスベガスでデジタル放送局から空いている容量を借り,20チャンネル程度の多チャンネルサービスを$19.95で提供してきた。同社は2004年3月にサービスをソルトレーク市とラスベガス開始し,ケーブルTV,衛星サービスにまだ加入していない世帯に対して,低価格な多チャンネルサービスを提供する事で数ヶ月で5000世帯の加入者を得ることで期待された。USDTVは4年間で5万世帯に加入者を増やす計画であったが,その後の加入者増加は低く,サービス地域を増したにも関わらず,1.6万世帯程度にしか増えなかった。USDTVの負債は1,000万ドルから5,000万ドルと推定されている。
USDTVの倒産は地上波局へ衝撃を与えている。地上波局は多額の投資を行いデジタル化を進めている。もし,局の収入がデジタル化移行も同じであれば,投資の回収は出来ない。デジタル化の最大の魅力はHDの放送を行っている時点でも,SD画質の番組を2,3チャンネル放送出来ることある。放送局はこのマルチキャストにより収入を得られる新しいビジネスモデルを考えている。
NBC系の局は現在,空いた容量で地域のフォーカスした天気予報の番組を流している。CBS系の局の一部はUPNの番組をマルチキャストで放送する事を試した。Ion Media系の局は子供番組の制作会社と協力し,子供向けのマルチキャストチャンネルを計画しており,また,マルチキャスト向けの新しい音楽チャンネルのThe Tubeも誕生している。
しかし,マルチキャストは満足な広告収入を得るのには至っていない。その理由はマルチキャストを見る事が出来る世帯が非常に限られているからである。米国のTV世帯の85%以上はケーブルTV,DBS等の多チャンネルサービスに加入し,地上波もケーブル,あるいはDBSで受けている。マルチキャストチャンネルが再送信されなければ,殆どのテレビ視聴者はこれを見ることは出来ない。マルチキャスト放送を受信出来る環境にある世帯は全米でたったの500万世帯と推定されている。放送局は議会,FCCに対してマルチキャストのチャンネルも主チャンネルと同様な再送信義務(Must Carry)の対象にする事を求めている。多チャンネル事業者は当然,これに反対している。地上波局の再送信は多チャンネル事業者の収入にはならない。新たに1つの地域で何十ものチャンネルを再送信する容量があれば,広告収入が入る多チャンネル向けのネットワークを送信する,VODに使う,ケーブルモデム,あるいはVoIPに割り当てる方が良い。FCCもこれまではマルチキャストの再送信義務には消極的である。
もし,マルチキャストのMust Carry無しでは広告収入は望めない。そこで,これらのチャンネルを有料放送として提供するビジネスモデルが検討されている。無料放送の為に帯域を得ている放送局が有料放送をする事は問題があり,さらには現実性があるかのマーケティングテストもしにくい。しかし,第3者の容量を貸し,そこが有料放送のサービスを行うのであれば,問題は少ない。USDTVのビジネスプランに放送局は喜び,Fox Television,Hearst-Argyle,LIN TV等の地上波局を持つ会社が2600万ドルの投資をした。
しかし,USDTVの低料金で多チャンネルサービスを提供すると言うビジネスプランには致命的な間違いがあった。USDTVはESPN,CNN等の多チャンネル向けネットワークでポピュラーなネットワークを20程度を20ドルで提供する事は低所得世帯を狙うことになり,加入しても未支払いの世帯が増える事になる。また,20程度のチャンネルで視聴者を満足させる事は出来ない。USDTVで多チャンネルサービスを知った視聴者の一部はそれ以上のチャンネルを求め,結局はケーブルTV,あるいはDBSに移ってしまう。この結果,USDTVのチャーンは4%と高く,1年で半分の加入者が辞めてしまう事になる。チャーンが高い中,USDTVは$200近い値段で購入しているSTBを$100で提供していた事は収益を出すことをほぼ不可能にする。
放送局はUSDTVが大成功しなくとも,ある程度の視聴者を得て,地上波による有料放送サービスの可能性が示されること期待していたので,USDTV倒産の衝撃は大きい。USDTVとは違った層を狙う物であっても,一度失敗した,有料放送のビジネスモデルで投資家を集めることは難しくなる。放送の容量はあるのだが,それにより収入を得る方法は見えていない。
