T-MobileとSprintの合併とケーブルTV

T-MobileとSprintの合併はケーブルTV事業者に複数のインパクトを与える。1つは彼らがいかにケーブルTV事業者と付き合うかである。現在、ComcastとCharterはVerizonとのMVNO契約でモバイル通信を提供している。これは、Comcast等が持っていた周波数帯域をVerizonに売った時に得た条件である。SprintはケーブルTV事業者とは仲良く、一時はモバイルサービスを提供するジョイントベンチャーもあったが、この事業は失敗した。しかし、その後もComcastがSprintを買収する等との噂もあり、関係は続いていた。

最近、ComcastとCharterはモバイル通信サービスのバックエンドでの協力を始めたが、その一環として、新たなMVNO契約の交渉を検討しており、その相手はSprintと思われている。SprintはすでにAltice USAとMVNO契約をしている。しかし、Sprintを買収するT-MobileがケーブルTV事業者との関係を望むかは不明である。これまで、ケーブルTVとT-Mobileの接点は少なく、T-Mobileがどの様にケーブルTVと付き合うかは予測出来ない。

また、T-MobileのSprint買収により、ケーブルTV事業者に対するブロードバンド市場での競合が増える事になる。ブロードバンド市場ではケーブルTV事業者が勝っている。ケーブルTV事業者と通信事業者のブロードバンド市場でのシェアは2010年では55%対45%であったのが、現在では65%対35%になっている。通信事業者はFTTHの普及はあきらめており、ケーブルTV事業者が大きくとシェアを伸ばしている。

通信事業者はFTTHを進める気は無いが、ブロードバンド市場を捨てた訳ではなく、固定5Gでカムバックを狙っている。Verizon、AT&T共に2018年には固定5Gのサービスを開始する予定である。固定5Gで1 Gbpsでのサービスを提供出来れば、ケーブルTV事業者への大きな競合になる。T-Mobileは5Gに積極的であるが、持っている周波数帯域は600 MHz主体と言う事で、予定しているサービスは最高で450 Mbps(スタート時は100~200 Mbps)の移動体サービスでり、固定ブロードバンドには注目していない。しかし、Sprintの買収で2.5 GHzの周波数帯域を得ることで、オプションは広がり、固定5Gも提供する可能性がある。

5Gサービスの開始予定

 

Verizon

AT&T

T-Mobile

Sprint

サービス

固定

固定/モバイル

モバイル

モバイル

時期

2018年後半

2018年末

2019/2020年

2019年前半

地域 LA、サクラメント等、5地域 アトランタ、ダラス等、12地域 NY、ラスベガス、LA等30地域 NY、DC、シカゴ等、9地域
周波数

28 GHz

39 GHz

600 MHz

2.5 GHz

速度

1 Gbps

1 Gbps(固定)

100~200 Mbps

250~300 Mbps

投資

$170~178億

$230億

$49~53億

$50~60億

 

さらに、T-Mobileはブロードバンド市場でケーブルTV事業者の競合になるだけでなく、ビデオサービスでも競合する。同社はブロードバンド回線でケーブルTVサービスを提供しているLayer3 TVを昨年末に買収している。T-MobileはLayer3 TVを使い、どの様なサービスを展開するかは発表していないが、サービス開始は近いと言っている。AT&TはすでにOTT多チャネルサービスのDirecTV Nowを提供しており、DirecTV Nowよりさらにチャンネル数が少ない、AT&T Watchを提供する予定もある。AT&T WatchはAT&Tのモバイルサービス加入者には無料にする可能性がある。Verizonは自社でのOTT多チャネルサービス開発はやめたが、他サービスの再販で参入予定である。T-MobileのSprint買収で、AT&T、Verizon、T-Mobileの競争は激しくなり、戦いの場はモバイル上でのビデオサービスになる可能性が高い。モバイル事業者がモバイル対応の多チャネルサービスでの戦いを始めると、自前のモバイル網を持たないケーブルTVには対応が難しい争いに巻き込まれることになる。