Paramount Globalの買収劇

映画劇場チェーンのNational Amusements, Inc.(NAI)は子会社のParamount Globalを売りに出している。いくつかの会社が興味を示し、オラクルのラリー・エリソンの息子、デヴィッド・エリソンが持つSkydanceが独占交渉権を得たが、話はまとまらなかった。これにより、Skydanceによる買収には反対していたと言われるCEOのボブ・バキシュが辞任した。そして、SonyとApollo Global Managementが共同でParamount Globalとの交渉を始めたが、これもまとまらなかった。

Skydanceの新たな条件をParamount Globalは承諾したと報道されているが、NAIからの発表はまだない。買収交渉が簡単にまとまらない1つの理由は、NAIのParamount Global株の所有構造にある。NAIはParamount Globalの77%の議決権株を持っているが、普通株は5%程度しか持っていない。SkydanceはNAIを買収し、その後にParamount Globalと合併をする提案をしているが、NAIに都合が良い条件はParamount Globalの株主に取り、必ずしも良いとは限らなく、その逆もある。

もう1つの理由は買収した会社がParamount Globalをそのままの状態で残すことをNAI社長のシャーリ・レッドストーンが望んでいることだ。Paramount Globelはシャーリの父、サムナー・レッドストーンが築いた会社であり、解体し、一部を売却する買収案を拒否している。問題はParamount Globalの全事業を欲しい、あるいは全部を所有出来る会社は限られている。例えば、SonyはParamount Picturesは欲しいが、CBSは不要であり、欲しくても外国資本がTVネットワークを持つ許可を得ることは困難で、手放すことになる。

Paramount GlobalはParamount Pictures、CBS、Viacomが一緒にして出来た会社で、いずれも過去に関係があった。Paramount Picturesは1929年から1932年の間、CBSの49%を持っていた。Viacomは元はCBS Enterpriseと呼ばれるシンジケーション部門で、ネットワークによるコンテンツ事業の保有が違法になり、1971年にスピンオフされた。NAIは1987年にViacomを買収し、1989年にParamount Picturesを加え、1995年にViacomとCBSを合併させた。一時、CBSとViacomを別会社にしたが、2019年に再合併し、ViacomCBSになり、2022年にParamount Globalにリブランドした。

現在、Paramount Globalの事業部は映画、TVメディア、それにストリーミングである。2023年の売上は$296.5億(前年から2%減少)で、$6.1億の差損があった(前年は$11億の利益)。売上に占める割合はTVメディアが67%、ストリーミングが23%、映画が10%である。Paramount Picturesはアメリカ国内の劇場映画からの2023年の売上ではWarner、Universal、Sonyに続く第4位であるが、映画部門の売上は前年から20%の減少をしている。

TVメディアに含まれるのは地上波のCBS、多チャンネル向けネットワークのComedy Central、MTV、Nickelodeon、BET、CBS Sports等、29の放送局、海外のネットワーク等である。Paramount Globelの多チャンネル向けネットワークは子供と若者向けが多く、一時はポピュラーであった。しかし、若者は放送離れし、親は子供には広告の多い放送を見せるのは止め、ストリーミングに移行したことで、視聴者を大きくと減らしている。TVメディアの売上は前年から8%の減少であった。

ストリーミングでのサービスにはParamount+(広告付き)、Paramount+ with Showtime(広告無し)、BET+、Pluto TV(Pluto TV)がある。Pluto TVは利益が出ていると発表されているが、全体では赤字で、2023年は$16.6億の差損があった。売上は前年から34%の増えたが、赤字は前年の$18.2億から9%減っただけである。Paramount Globalの既存事業のTVメディアと映画部門の売上は減っている。ストリーミングは成長をしているが、大きな赤字であり、Netflix、Amazon、Disney等に対抗できる規模はない。