MCNのその後

2013年5月にDreamWorksが成果報酬を含めて$1.2億でAwesomenessTVを買収し、MCN(Multi-channel Network)のバブルが始まる。欧州の大手TVネットワークのRTL Groupはその翌月にBroadband TVの51%を$3600万で買い、2014年にStyleHaulを$1.1億で買収する。同年にはDisneyによるMaker Studioの買収($6.7億)、Otter Media(AT&TとChernin GroupのJV)のFullscreen買収(約$3億)があり、2016年にはWarner BrothersがMachinimaを買収する。同年にはVerizonがAwesomenessTVの$24.5%を$1.59億で取得しており、AwesomenessTVの価値は$3年で約6倍の6.5億に膨らんだ事になる。

MCNはYouTube上の「TVネットワーク」である。YouTubeで収入を増やすためには視聴者(サブスクライバー)を増やす必要があり、その為には頻繁にビデオを制作する必要がある。YouTuber一人では制作出来る本数は限られるが、同じテーマのビデオを制作している複数のYouTuberをグループ化して「チャンネル」を作る事でビデオの本数を増やせる。さらに複数のチャンネルを作り「ネットワーク」化し、お互いをプロモートし合う等で、効率を高める事が出来る。

大手スタジオは新しい媒体(YouTube)で儲ける方法として、MCNに大きな期待を持っていたが、すぐに問題が明らかになる。DisneyのMaker Studio買収は基本の$5億に加え、$4.5億の成果報酬があった。それだけ期待が高かった訳だが、実際には大した売上は無く、支払ったボーナスは$1.7億程度であった。その後、DisneyはMaker Studioのスタッフの大きなレイオフを行ない、現在はDisney Digital Networkに吸収されている。Fullscreenは独自のSVODサービスを始めたが、18ヶ月で撤退している。

MCNの基本は大規模化である。参加するYouTuberを増やし、ビデオを増やし、チャンネルを増やす事で、視聴を増やし、広告収入を増やすのが基本戦略である。しかし、これには大きな問題点がる。YouTube上のビデオの本数が増える事で、広告単価は減っていく事になる。減った分の収入を得るためにMCNはYouTube以外にもコンテンツの提供を始める。Twitter、Facebook、Snapchat、Go90等との配信契約だけでなく、Fullscreenは自らSVODも開始する。MCNはYouTubeの競合を助けることとなり、競合が登場する事でYouTube自体の広告料が下がる。MCNはビデオを増やせば、増やす程に収益を出すことが出来なくなる。

また、本数を増やす事で、ビデオの質も落ちていく。YouTuberの数は膨大だが、プロになれる素質があるのは僅かである。有名になったYouTuberはMCNから離れ、大手スタジオと契約する事で、衰える質を補うために、MCNはさらにビデオ本数を増やすと言う悪循環になる。MCNの乱立で品質の悪いビデオが氾濫すると同時にNetflix等のSVOD事業者は大きな予算で質の高いオリジナルコンテンツを制作し始め、視聴者を増やしていく。コンテンツの数も重要だが、クオリティー低ければ意味はない。YouTubeも有料のYouTube Redでオリジナルコンテンツに力を入れ始めており、MCNは死語になりつつある。