iPadへの大きな期待

AppleのiPadは発表のかなり前から大きな話題になっていた。製品は発表されたが、発売は3月であり、果たしてその大きな期待にかなう物かは明瞭ではない。Appleの製品に対しての大きな期待はいつもの事であるが、iPadに対しては特に大きな期待がある。これは、製品としてのiPad\以上に、Appleがコンテンツ販売で新しいビジネスモデルを見つける事への期待である。

コンテンツ事業者は、コンテンツの電子販売に対するビジネスモデルを模索している。文字コンテンツ(新聞、雑誌、書籍)の電子化は、音楽、動画より容易であり、その歴史も長い。電子ブックは1990年代に登場しているが、大きな普及は見せていない。AmazonのKindle等で、1990年代に新聞社のKnight Ridder等が公開した、電子新聞を読む「タブレット」が現実化した。しかし、15年経ってもそのコンセプト自体には大した成長は無い。単に紙に印刷した内容を、そのまま電子化しただけであり、プラス・アルファが見えていない。

新聞、雑誌業界は、人々がウェブサイトで情報を得るようになった事で、大きな打撃を受けている。自らウェブサイトを運営しているが、その広告収入で、出版物売上げの減少を補うことは出来ていない。ウェブサイトの有料化は最初に試され、失敗しているが、New York Times等は再度、有料化の計画を発表している。出版業界は、タブレットの登場で、Ebookが読みやすくなることで、人々が有料のコンテンツを求めるようになることに期待をしている。しかし、単純にコンテンツを紙、あるいは、ウェブからタブレットに動かしただけでは、成功はしないことは明らかである。出版業界は、自分たちではこれ以上のアイデアが出なく、Apple、そしてiPadが何か新しいビジネスモデルを示してくれることを期待している。

動画コンテンツ業界も、新しいビジネスモデルを求めている。音楽業界は、電子化に逆らい、消費者を訴えてまでもこれまでのビジネスモデルを守ろうとした。しかし、電子化の波には逆らえず、AppleのiPod/iTunes等に音楽の流通を奪われてしまった。動画コンテンツ業界は、この失敗から学び、Apple、Google、Yahoo!等が動画流通の仕組みを作り上げてしまう前に、自ら電子流通に参入し、Hulu.com等を作った。しかし、そのHuluも収入を出せなく、悩んでいる。昨年にHuluの有料化の噂が出て、Huluはそれをすぐにうち消したが、また有料化の話が復活している。

コンテンツ業界は、iPadの成功により、何か新しいビジネスモデルが出来るきっかけが生まれる事に期待をしている。この期待に添うにはまず、iPad自体が成功し、クリティカルマスに至る必要がある。Ebookリーダーとしてでは、これは難しいかも知れない。それは、Ebookのユーザは年齢が高く、静かな層であるからだ。AmazonのKindleは300万台売れている割りには、あまり話題にはなっていない。もしも、Kindleが300万人の若者に売れているのであれば、持ち歩き、自慢し、ブログに書き、話題になっているであろう。しかし、実際のKindleのユーザの殆どは家で、静かに読書をしており、話題作りには貢献をしていない。

成功のきっかけを作るには話題を作る、若者層に使わせる必要がある。大学で教科書のリーダーとしてEbookを使うことは、大きなインパクトになる。アリゾナ州立大学でKindleを教科書のリーダーとして使う計画は、視覚障害者の団体に訴えられ、一時中止になった。しかし、Kindleはより大きなフォント、メニューの読み上げ機能等を加え、対応をしようとしている。学校市場から、Macを成功させたAppleに取り、iPadを教科書のリーダーとして普及される事は、その戦略に当然と入っている。だが、Macが例とすると、学校市場からの参入で急速な普及に至る事は期待出来ない。IPadがゆっくりとクリティカルマスに達するのを、コンテンツ事業者、特に出版業界は待っている事が出来ないかも知れない。