FCCがATSC 3.0を承認

FCCは次世代放送規格としてATSC 3.0を承認した。これにより、放送局はIPベースで、4K、モバイル放送、ターゲット広告等の新しい機能を可能にするATSC 3.0での放送を開始する事が出来る。ATSC 3.0は低迷している地上波放送を立ち直らせる技術として期待されており、放送事業者のSinclair、放送事業者コンソーシアムのPearl Group等の放送局会社が導入を進めている。Sinclairはその子会社のOne Mediaを含めた全局でATSC 3.0での放送を2018年から開始する。また、地上波放送局代表のNational Association of Broadcaster(NAB)と家電メーカー代表のConsumer Technology Association(CTA)はFCCからATSC 3.0のテスト放送を行う許可を得、Tribune社が持つシカゴのWJW(Fox加盟局)でテスト放送の開始をする。

FCCの採決は3-2で、2人の民主党委員がATSC 3.0に反対をした。反対の主な理由はATSC 3.0は完全に任意で行われ、移行の予定、それに規制もほとんど無しで、業界が自主的に行う為である。ATSC 3.0には後方互換性が無い。このためASTC 3.0に移行した局の放送は既存のテレビでは視聴不可能になる。FCCはATSC 3.0に移行する局は、同じ地域のATSC 1.0局と周波数帯域共有の契約をし、そのサブチャンネルでATSC 1.0放送での放送を継続する事を義務化している。しかし、移行は任意であるため、多チャネルサービス事業者にはATSC 3.0を再送信する義務は無い。多チャネルサービス事業者は、再送信契約時にATSC 3.0は別扱いにし、放送局がATSC 3.0での放送を再配信契約に組み込む事を出来なくする様に求めていた。しかし、FCCはこれを拒否した。ATSC 3.0での再配信は義務ではないが、再送信契約時に放送局がこれを多チャネルサービス事業者に求める事は可能になる。

ATSC 3.0への移行は義務ではないので、テレビ、あるいはスマートフォンへのATSC 3.0対応チューナの搭載義務は無い。しかし、ATSC 3.0の規格化には韓国メーカーが積極的に参加し、自国では一足先にATSC 3.0での放送を開始している。SamsungとLGはそのテレビとスマートフォンにATSC 3.0チューナを搭載して行くことはほぼ確実的である。SamsungとLGが次世帯規格対応としてATSC 3.0の搭載を広告すれば、他のメーカーも追従をしなければならない。

民主党委員がATSC 3.0に反対したもう1つの理由はSinclairによるTribuneの買収である。SinclairはTribuneを買収する事でATSC 3.0の提供地域を広げようとしている。この買収により、Sinclairは233局を持ち、世帯リーチ率72%の巨大な会社となる。世帯リーチ率の上限は39%であり、本来はこの買収は不可能である。しかし、パイ委員長はウィーラー時代のFCCが無効化したUHFチャンネルのリーチを半分に計算する免除を再度有効化し、この買収を可能にした。民主党はSinclairとパイ委員長の関係を調査するまでATSC 3.0の承認を待つことを求めていた。SinclairはATSC 3.0のパテントも持っており、ATSC 3.0のチューナ搭載が始まるとライセンス料も得られることから、Tribune買収によりそのATSC 3.0における地位がさらに大きくなる事から、反対も多い。

放送局に取りATSC 3.0への移行は義務とし、新たな帯域と移行資金を得る方が良いであろうが、あえて任意での移行を求めているのは時間的な余裕が無いからである。アメリカでは地上波も多チャネルサービスで見るのが普通であり、地上波の直接受信は以前から少なかった。最近ではOTT事業者にも押され、地上波の視聴はさらに減っている。移行を義務とし、その為の予定、規則、それに資金を議会で通すには数年はかかる。それを待っていたのでは、地上波放送のポジションはさらに弱まり、再生不可能になっている可能性が高い。