Comcastによる452億ドルでの買収案にTime Warner Cable(TWC)が合意した。TWCの買収に対しては数社が関心を示していた。Comcastもその1社だが、ケーブルTV業界の最大手が同じ業界の2位の会社を買収する事は簡単には許可されない。TWC買収に最も積極的に動いていたのはCharterで、最初はComcastもCharterに協力をすると発表していた。以前にComcastとTWCが共同でAdelphiaを買収したように、2社で買収して地域を分ける考えで、Comcastはニューヨークとノースカロライナを欲していた。2社での共同買収の方が、FCCと司法省の許可も得やすい。しかし、CharterはTWCを怒らせ、最終的には言い争いになっていった。ComcastはCharterが主役ではTWCを買収する事は不可能と判断し、独自の買収に動いた。
この買収が完了するにはFCCと司法省の合意が必要になり、決定した訳ではない。FCCと司法省がどの様な決定をするかは、多チャンネルサービスだけでなく、様々な業界に大きな影響を与える事になる。
ComcastのケーブルTVサービスへの加入者数は2170万世帯で、TWCは1120万世帯の加入世帯を持っている。2社合計の加入者数は3290万世帯となる。FCCは過去にケーブルTV事業者が持つ事が出来る加入世帯の上限を30%とする規制を作ったが、裁判所により無効にされている。保有上限の規制は現在無いが、ComcastはTWC買収の条件として、加入世帯は多チャンネルサービス市場の30%とし、3000万世帯に減らし、約300万世帯に対応する地域を手放す事を約束している。しかし、加入者が3000万世帯に減らしても、2位のDirecTV(2025万世帯)3位のDISH Network(1406万世帯)より遥かに多くの加入者を持つ事になる。
また単純に加入者の数だけの問題ではない。TWCを得ることで、Comcastはニューヨーク市、ロサンゼルス、ダラス等を得て、アメリカの大都市のほとんどを得る事になる。NFLのチームがある32都市の中でComcast/TWCがサービスを提供していない都市はセントルイス、ニューオリンズ、タンパだけになる。タンパ市は、TWCが管理しているBright Houseの地域で、Bright HouseはそのままComcastに管理契約を移行するであろうから、実際には2都市である。3000万の加入者を持つ事以上に、1社が全米の大きな都市のほぼ全部でメディアと通信をサービスをする事のインパクトが大きい。
![ImageCapture[03-08-2014-7]](https://www.nsirinc.com/compass/wp-content/uploads/2014/03/ImageCapture03-08-2014-7.jpg)
Comcast、TWCはケーブルTV事業者であるが、大手通信事業者でもある。ComcastとTWCの持つブロードバンド加入世帯の合計は3180万世帯、デジタル電話加入世帯は1500万世帯になる。ビジネス向けの通信サービスでもComcastの昨年の収入は32億ドル、TWCは23億ドルである。通信事業者としてはAT&T、Verizonの方が大手である。AT&Tの2013年の売上は1,288億ドル、Verizonは1,206億ドルであったのに対して、Comcastは647億ドル(NBCUniversal含む)、TWCは221億ドルであった。しかし、コンシューマ向けブロードバンド市場では、Comcast/TWCが圧倒的な大手になる。AT&Tのブロードバンド加入世帯数は1650万世帯、Verizonは900万世帯で、Comcast/TWCはAT&T、Verizonの合計より多い加入者を持つ。Comcast/TWCは携帯電話のサービスを持たない。しかし、どちらもその事業地域でWiFi網の構築に力を入れている。主要都市をカバーするWiFiサービスが出来れば、携帯電話サービスにも大きなインパクトを与える。Verizonは、Comcast、TWC等とパートナーシップがあるが、この合併が決まれば多分、手を切るであろう。
この合併が承諾されれば、多チャンネル業界の統合が進む。Charterはその加入者を増やすために新たな買収先を探している。Cablevision、Cox等の他のケーブルTV事業も買収するか、あるいは吸収されるかを考えなければならなくなる。DirecTVとDISHの合併の可能性もある。また、これに対しVerizonとAT&Tがいかに反応するであろうか。新たな投資をするか? モバイルに力を入れるために多チャンネル(とコンシューマ向け固定ブロードバンド)事業を売ってしまうのか? さらに、VerizonとAT&Tが多チャンネル事業をスピンオフし、合併させる可能性もある。
Comcast/TWCはコンテンツ事業者にも大きなインパクトを与える。TWCは昨年にCBSと再送信料の争いをして負けた。しかし、この争いがComcast/TWC相手であったら結果は違ったかも知れない。ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコ、シカゴ等のアメリカの大都市の殆どのケーブルTVで再送信が無くなれば、CBSも妥協をしたかも知れない。特に、ComcastはNBCUniversalを持っており、コンテンツは豊富にあり、CBSを失っても他のその打撃を軽くする事が出来る。また、ComcastはNBCUniversalを持っている事で、TVネットワーク業界の内情を知り、戦いにくい相手になる。
ComcastがTWCを得る事は、Netflix等のOTTビデオへの影響も多い。ComcastはNetflixに対向するXfinity Streampixを持っているが、その対象世帯は3000万となり、Netflixに対する重要な挑戦者になる。NetflixはそのサービスをOTTで提供するだけでなく、ケーブルTV事業者と契約し、STB経由での提供を可能にしようとしている。海外ではイギリスのVirgin Media等がすでにNetflixと契約をしている。TWCはNetflixと交渉をしている1社である。TWCにはComcastのStreampixの様なサービスは無く、高速ブロードバンドの普及にTWCはNetflixとの契約に関心を持っていたが、Comcastの買収により、この交渉はストップする。
買収の影響はSTBにも及ぶ。ComcastはX1を業界のディファクトにしようとしている。3000万世帯を持つことは、その目的に近づく。ComcastはX1をアウトソースサービスをして、他の事業者に採用させようともしている。TWCは加入世帯数250万のBright House(フロリダ州)のシステムを運営している。Bright Houseの元はTime Warner系であり、現在でもTWCがコンテンツ事業者との契約を含め、システムの面倒を見ている。ComcastがTWCを手に入れる事が出来れば、Bright HouseもX1を採用するであろう。X1が広まる事は他のプラットフォームの成功が困難になる事も意味している。TWCはケーブルTVのチャンネルをその加入者に対してブロードバンド経由で提供し、コンピュータ、スマートフォン、タブレット、Xbox 360、Roku等で視聴可能にしている。Apple TVにも対応させる予定であり、TWCとAppleは次世代Apple TVに関しての協力を話し合っていたとも噂されている。AppleはケーブルTVサービスとの融合を狙ったApple TVを開発していると噂されているが、ComcastのX1の勢力が増すことは参入を困難にさせる。これはTiVoにも影響を及ぼす。TiVoはSuddenlink、RCN等の中小ケーブルTV事業者と契約する事で加入者を増やしており、X1は大きな競合になる。
