CES 2011でのトレンド

CES 2011の参加者数は140,000人で、不況前のレベルに回復をした。2009年の参加者数は113,000人、2010年は120,000人であった。2011年の海外からの参加者数は30,000人で、過去最大であった。

2011年CESでのThe Compassに関係するトレンドとしては、コネクテッドTV、モバイルデバイスとTVの連携、それに権利処理の3つが大きな物であった。どの程度の視聴者がTVをインターネットに接続するかは分からないが、インターネット接続機能はTVセットの標準になり始めている。調査会社のDisplaySearch社によると、2010年に出荷されたTVの21%はコネクテッド機能を持っていた。同社はコネクテッドTVの出荷は2014年には1.22億台に達すると予想している。

コネクテッドTVに関する話題を下記にまとめる。

  • Googleは、CESでGoogle TVを登載した製品を公開予定であった東芝、シャープ、LG等に発表の中止を求め、すでに製品を発売しているLogitech社に対しても、発売の一時停止を要求したとの報道もあったが、Logitech社はこれを否定し、LG等は(大きくないが)Google TVの展示を行っていた。しかし、Google TVとコンテンツ事業者との問題は未解決のままである。
  • AppleはCESに展示をしていないが、その新Apple TVの出荷台数が100万台を越えた事を発表した。第1世代のApple TVは$299で、不評であったが、新しいApple TVは$99で発売されている。Appleはまた、1日平均で400,000本のTV番組と150,000本の映画がiTunes Storeで販売、あるいはレンタルされていると発表している。
  • Rokuは100万台目のRoku Boxを出荷し、1月4日にRoku Boxに対するストリーミングが10億本目を越えたと発表した。Rokuでアクセス可能なチャンネルは140を越えており、Rokuの利用者におけるRokuの利用時間は1週間平均で11時間に達している。
  • Netflixへのアクセスは、コネクテッドTVでは当たり前になっているが、ソニー、シャープ、東芝、Dynex(Best BuyのTV)、Haier、パナソニック、Samsung等のメーカーは、1つのボタン操作でNetflixをアクセス出来るようにリモコンにNetflixボタンを付ける。Netflixの利用者は1690万人に達している。
  • 船井は、Active VideoのCloud TV技術を採用したTV、Blu-rayプレーヤをそのPhilipsブランドで発売する。Active VideoのCloud TVは、インテリジェント機能をクラウドに置くソルーションで、ケーブルTV事業者のCablevisionがすでに採用をしている。ユーザの操作は上り回線で送られ、処理はクラウドで行われ、その画面だけがTVに送り返される。TV(あるいはSTB)にはインテリジェンスは不要で、コストの削減が出来る。製品は2011年第2四半期に予定されている。
  • ソニーとSamsungは、Time Warner Cable(TWC)の加入者に対し、コネクテッドTVを使うことで、STB無しでTWCのサービスを受ける事を可能にする。TWCはそのケーブルTV放送と同じ番組をIPで配信をし、ソニー、SamsungのコネクテッドTVはそれをアクセスする事が可能になる。このサービスは、TWCの加入者だけに対して提供され、TWCのサービス地域外で利用をする事は出来ない。
  • Yahoo!は双方向サービスを可能にするYahoo! Connected TVを発表した。Yahoo!は2009年からウィジェットをTVで使う、Yahoo! TVを提供してきたが、この新しいプラットフォームはインターネットを使い、既存のTV番組に双方向性を加えることを可能にする。Yahoo! Connected TVは番組の音声、あるいは画面のウォーターマーク等からどの番組が視聴されているかを知り、その番組(広告)に合わせた双方向サービスを提供する。番組の内容にマッチしたクイズ、投票、TVショッピング、資料請求等が行える。Yahoo!はすでにABC、CBS、Home Shopping Network、Showtime、Fordとの契約を発表し、D-Link、ソニー、東芝等がYahoo! Connected TVをサポートする製品を発売する。また、Broadcom、Trident等のICベンダーが、Yahoo! Connected TVを組み込んだチップセットを開発している。
  • CiscoはTV放送、ストリーミング、それにソーシャルメディア等のアプリケーションを統合し提供する事の可能なTVプラットフォーム、Videoscapeを発表した。Videoscapeはネットワーク上の機器、ソフトウェア、STBで構成され事業者に対して、TVとインターネットを統合したサービスを容易に提供する事を可能にする。
  • Orbはインターネット接続機能のあるBlu-rayプレーヤとPlayStation 3向けに、Hulu Plus等のサイトのコンテンツを視聴可能にするソフトウェア、Orb BRを発表した。ソフトウェアは$19.95で発売され、インターネット対応の通常のBlu-rayプレーヤをコネクテッドTVのボックスにする事が出来る。Orbはスマートフォン向けのアプリも提供し、コンテンツの検索をスマートフォンで行うことを可能にする。Orbは$99のOrb TVと呼ばれるコネクテッドTVボックスも発表している。
  • Sonic SolutionsはDivX TVでコネクテッドTV分野に参入をした。DivX TVはビデオ、他のインターネットコンテンツをTV上で利用可能にするプラットフォームであり、また、Sonic社のRoxioNowをサポートし、有料コンテンツのVOD機能も提供する。Divx TVを使った最初の製品はLGのTVとBlu-rayプレーヤになる。LGはYahoo TVを採用したNetcast TVをこれまで提供してきた。

多チャンネルサービスのチャンネル数が200を越え、さらにコネクテッドTVにより、アクセス可能なコンテンツの数が増えることはコンテンツを探す事を困難にしている。Google TVはそのソルーションの1つであるが、TVを検索画面に使う使うこと、それにキーボードが必要な事に対する不満もある。モバイルデバイスのスマートフォン、タブレットをナビゲーションに使う事への関心が膨らんでいる。スマートフォンをTV、あるいはSTBのリモコンにするアプリはすでに発表されているが、さらに、スマートフォン、タブレットをTVコンテンツの検索に使うアプリも登場している。ComcastのXfinity TVアプリはTV番組、VODのコンテンツ、それにDVRに録画されている番組をまとめて検索する事を可能にする。また、VODで提供されているコンテンツはiPadで検索し、TVで視聴するだけでなく、タブレットでも視聴する事が可能になっている。

Comcastはまた、Samsungとの協力で、SamsungのGalaxyタブレットで、Xfinity TVアプリ同様の機能を提供するだけでなく、通常のComcastのTV放送も視聴出来るようにする。TWCがソニー、SamsungのTVに対してIPで番組を配信するのと同様に、このサービスの利用はComcastの加入者の宅内に限られる。

CEAは今回のCESで80以上のタブレット製品が出展されたと発表しており、2011年のタブレット出荷台数は世界で3000万台になると予想している。タブレットは理想的なTVのリモコンになるだけでなく、第2のスクリーンとして、ビデオの表示、それにTV番組に対する双方向機能を提供する方向に進むと予想されている。

TVコンテンツが複数の 媒体で提供される事はコンテンツの権利処理を複雑化させる。Comcastの提供する番組がタブレットで視聴可能なる事は良いが、それを見ることが出来るのが加入者の家庭内だけでは、価値が半減する。屋外でも視聴可能にするには、コンテンツとサービス事業者間の契約、権利処理の見直しが必要になる。利用者が利用するビデオ対応のプラットフォームは増えるが、コンテンツの視聴権利は1つのプラットフォームでしか無いことは不便であり、また、非合法のコンテンツ配信を増やすことにもなる。

コンテンツを複数のプラットフォームに対応させる方法として、UltraViolet(DECE)が動き始めている。UltraViolet(UV)には60社以上が参加しており、2011年の中期にはUV対応のDVD、Blu-rayの出荷が始まる。購入者は12のデバイスを登録する事が出来、購入したビデオをBlu-rayプレーヤで再生するだけでなく、モバイルデバイス等でストリーミング視聴する事が可能になる。UV対応のモバイルプレーヤは2011年後半、UV対応のTV等は2012年の出荷になる予定。UVには主要なコンテンツ、サービス、プラットフォーム事業者が参加しているが、DisneyとAppleは参加していない。

UVが進められている背景にはコンテンツの購入が落ちている事がある。DVDの販売は減少している。Blu-rayの販売は増えているが、DVDの減少を補うことは出来ていない。EST(Electronic Sell Through、電子販売)が進むことが期待されていたが、ESTは伸びていない。調査会社のBTIG Research社によると、ESTは2009年の5.89億ドルから2010年には6.83億ドルと16%の増加をした。しかし、通常は売り上げの増加が期待出来る第4四半期では、2010年の売り上げは、2009年より、8%の減少をしている。ESTが増えない理由は、物理的な保有が出来ないこと、視聴可能なプラットフォームが将来も存続するかに対する不満があると言われ、UVはそのソルーションとして期待されている。しかし、ストリーミグにより、VODが簡単になっている現在、コンテンツを保有する価値が減っており、UVが立ち上がってもコンテンツの販売は増加をしないとの見解もある。