AT&Tは13地域でAT&T TVをテストとして提供してきたが、3月2日に全米で正式スタートした。AT&Tは専用の回線を使わずにブロードバンド上で提供されるサービスだが、通常のvMVPDとは異なり、専用のAndroid TVベースのSTBを必要とする。また、既存の多チャンネルサービスと同様に2年契約である。vMVPDのようにチャンネル数が少ないスキニーパッケージではなく、DirecTVと同様なチャンネル数がある。サービス料金は最初の1年は$40と安いが、2年目からは最も安いパッケージでも$93にジャンプする。サービスには500時間のクラウドDVRが含まれている。STBはAndroid TVなので、Google Play StoreからNetflix等のアプリをダウンロードし、利用する事も出来る。
これにより、AT&Tの多チャンネルサービスの戦略は大きくと変わる。AT&TはすでにAT&T TVがテストされていた地域ではU-Verse TVの販売を終了していた。AT&T TVの全米開始により、U-Verse TVのウェブサイトからの申し込みが終了した。マーケティングも終了し、電話だけで申込みとなり、事実上は販売終了である。DirecTV買収後、U-Verse TVにはほとんど力を入れていなかった。
U-Verse TVだけでなく、DirecTVの販売促進も終わる。AT&T TVが利用できない様なブロードバンド環境が良くない地域ではDirecTVのマーケティングはするが、それ以外の地域ではAT&T TV主体なる。AT&Tは2015年に$500億でDirecTVを買っている。U-Verse TVはAT&Tのサービス地域以外では提供が出来ないのでAT&TはDirecTVを買収したが、AT&T TVはAT&T以外のブロードバンド環境でも利用可能であり、DirecTVも不要になる。それだけでなく、vMVPDのAT&T TV Nowの販売促進も中止すうようだ。AT&T TV Nowの加入者はQ4で93万世帯に落ちている。
AT&Tは2015年にDirecTVを買収した時点で、衛星放送には先が無いことはわかっており、その加入者ベースが魅力的であったと語っている。そうであれば、DirecTVの加入者をAT&T TVにコンバートする事が重要になる。チャンネルのラインナップ、価格は同じであるが、専用回線を使った既存のサービスのような質の保証は無いAT&T TVに移行をするであろうか。AT&TがDirecTVの加入者が魅力的と言った理由はDirecTVは高価なサービスで、ARPUが良いためである。多くの加入者がDirecTVを好んでいるのは、質が良いからである。コンテンツは同じでも遅延があり、画質も回線状況に左右されるAT&T TVを良く評価はしないであろう。
DirecTVは2019年だけで400万世帯を失っている。DirecTVへの投資が無くなることで加入者はさらに減るが、AT&T TVにコンバート出来ない可能性も十分ある。AT&Tは多チャンネルサービスへの関心は失っており、DirecTVの加入者をコンバートするよりも先に手放すとの憶測もある。AT&Tは大きなコスト削減を予定しており、その一環としてDirecTVを手放すことも検討されているようだ。DirecTVを買収する可能性がある会社は同業のDish Networkである。以前であれば、司法省の許可は得られなかったが、どちらも加入者が減っている現在、衛星ラジオ事業者のSiriusとXM同様に合併許可が得られる可能性がある。
