AT&TはDirecTVを$485億で買収したことでアメリカ最大の多チャネルサービス事業者になったが、今度は$854億でTime Warnerを買う。この買収でAT&Tは、映画スタジオのWarner Brothers、有料チャンネルのHBOとCinemax、多チャンネルネットワークのTNT、TBS、CNN等を持つTurner Broadcasting、それに「Time」、「Entertainment Weekly」、「Sports Illustrated」等の雑誌を持つTime Inc.を得る。
ComcastによるNBC Universalの買収と似ているが、AT&Tの目的は多チャンネルサービス事業のためでは無く、OTTとモバイルサービスでの優位性である。
AT&Tは11月にDirecTV Nowと呼ばれるOTTベースの多チャンネルサービスを開始する。これは衛星を使ったDirecTVをリプレースするサービスではなく、DishのSling TVの様に多チャンネルサービスに加入していない人を狙ったサービスである。月額は$35で、AT&TはDirecTV NowにAT&Tのモバイル網からアクセスした場合、そのデータ量は課金されないとも言っている。
Time WarnerはHBOのSVOD版のHBO Nowを開始している。Time WarnerはTV Everywhere(TVE)を提案した会社であり、HBOのOTT/SVOD化は行わないと約束した。しかし、多チャンネルサービス加入者に於けるTVEの利用率は6年経っても20%程度である。インターネットでの番組配信は多チャンネルサービス加入者に限定する事で多チャンネルサービスの減少をストップさせるはずであった。だが、TVEが開始してからの多チャンネルサービス加入者は100万以上減ったのに対し、Netflixの加入者はから1362万から4648万へと3.5倍の成長をしている。
HBOはNetflixに対抗する事が可能なサービスの1つである。SVOD版のHBO Nowの加入者は100万人程度でしか無いが、多チャンネルサービスの有料チャンネルとしてはHBOは最大であり、姉妹チャンネルのCinemaxを含むと4600万世帯の加入者がある。世界全体ではCinemaxを含め約1.4億の加入世帯があり、Netflixより多い加入者を持っている。
Time Warnerは最近、TV Everywhereは失敗であった事を認め、HBO以外のチャンネルもOTT化する事を発表している。Tuner部門も11月に名画専門のSVODサービスのFilmStruckを開始し、CNNを含めたTurner系チャンネルのOTT化も来年から始める。TV部門だけでなく、出版部門のTime Inc.も雑誌の「People」と「Entertainment Weekly」をベースにしたAVODサービスのPeople/Entertainment Weekly Networkを最近スタートしている。AT&TはTime Warnerの買収が認められれば、OTT化を加速させ、その配信の為に5Gネットワークへの積極的な投資も約束している。
AT&TのTime Warnerの買収はFCCと司法省の許可が必要になる。しかし、FCCの審査を逃れる事が出来る可能性もある。FCCの権限は通信と放送であり、コンテンツ事業者に対する権限は無い。NBC Universalは放送局を持っているので、Comcastの買収の際はFCCの審査があった。Time WarnerはCBSと共同で持つ地上波ネットワークのThe CWがあり、その局に対しての投資等があるが、大きな額ではなく、これらを売却すればFCCの審査を避ける事が出来る可能性がある。司法省だけの審査であったもTime WarnerのHuluへの投資が問題になるであろう。AT&TがTime Warnerを買うことで、DirecTV Nowに競合するOTT多チャンネルサービスを行うHuluの10%を持つ事になる。ComcastはNBC Universal買収時の条件としてHuluの運営には携わらない事になってはいるが、Huluを通じ多チャンネルサービスでは1位と2位の会社が協力関係に入ることにもなる。
