FCCのブロードバンド普及計画には、多チャンネルサービスにおけるSTBの標準化を行うAllVidと呼ばれる規制案が含まれている。FCCは、ブロードバンド普及の鍵はビデオであり、STBの標準化はブロードバンド普及に貢献すると語っているが、その背景には、失敗であったCableCARD規制をどうにかしなければならない実情がある。
1996年の通信法は、FCCに対して、ケーブルTVにおけるサービスとハードウェア(STB)のアンバンドルの促進を行う規制作りを求めた。それにはSTBの標準化が必要になる。チューナ部の標準化は容易であるが、異なるCAS(コンディショナル・アクセス・システム)を標準化する事は不可能である。FCCはCASをCableCARDとして別にすることで、ケーブルTVのチューナを組み込んだTV等を販売する事を可能にした。CableCARDの普及のために、ケーブルTV事業者が貸し出すSTBにもCASを内蔵する事が禁止されている。
しかし、この規制は成功をしていない。CableCARD対応のTV、DVR等は販売されたが、その売り上げは良くない。ケーブルTVのSTBは依然として事業者からのレンタルであり、ハードウェアをサービスからアンバンドルさせるにはまったく至っていない。ユーザとして、値段が高くなるデジタルケーブルTV対応のTVを買うより、STBをレンタルした方が楽である。特に、CableCARDにレンタル料金がかかるのであれば、デジタルケーブルTV対応のTVを購入するメリットは少ない。また、デジタルケーブルTV対応のTVを買っても、サービスをケーブルTVからDBS(デジタル衛星)、あるいはIPTVに乗り換えたら、結局はSTBが必要になり、組み込みのCableCARD対応機能は無駄になる。
FCCとして、一度作ったCableCARD規制を失敗でしたと、引っ込める訳には行かない。その規制の根拠は通信法であり、FCCはこれに代わる何らかの規制を作らなければならない。
AllVidはCableCARDをリプレースする物である。対象は、ケーブルTVだけでは無く、他のビデオサービスも含まれる。コンセプトは、それぞれのサービス事業者がそのビデオプログラミングをIPビデオに変換するゲートウェイを提供し、これにAllVidアダプター(あるいはアダプター内蔵のTV等)をホームネットワークでつなぎ、各部屋のTVで視聴可能にする。FCCはAllVidに関して、関係者から意見を集めている段階である。
このAllVidの対象はケーブルTV、DBS、IPTV等の既存の多チャンネルサービスだけなのか、あるいはHulu等のサービス、Roku等のコネクテッドTVデバイスも含まれるかは未定である。これらがどの様に関わるかでその規制の範囲は大きくと変わる。
多チャンネル事業者は、AllVid規制には反対である。CableCARDの失敗が明らかにした様に、不要な標準化規制は産業の革新を奪い取る物だとしている。AllVid規制の賛成派は、家電ベンダーで、Google、Sony、Best Buys、TiVo等の7社はAllVid Tech Company Allianceを設立し、FCCに対してロビーを始めている。
Google、Sony等は多チャンネルサービス、それ以外のビデオに対しても共通インタフェースを提供する事が出来るように、AllVidの中で、コンテンツ、データ、EPG情報を分離して提供させることを求めている。これに対して、多チャンネル事業者は、そのサービスの構成要素を分離させることで、家電事業者はそれを再パッケージし、視聴者から新たに収入を得ることを考えていると批判している。また、コンテンツ事業者との契約上、サービス要素を分離して提供する事は不可能だと答えている。
Netflix、Hulu等のインターネットを使ったビデオの配信が進んでいる中、多チャンネル事業者に取り、AllVidは大きな問題をもたらす。現在、多チャンネル事業者は閉鎖された環境でサービスを提供しており、そのサービスとNetflix、Amazon On Demand等を統合する事は出来ない。視聴者がNefflixを使う場合、TVの入力を変え、別の環境に行く必要がある。同じ映画がケーブルTVとAmazon On Demandで提供されていても、通常にTVを見ているのと同じケーブルTVの環境でVODをする方が楽である。もし、AllVidにより、同じシステム環境から多チャンネルが提供するコンテンツも、インターネットで提供されるコンテンツも同等にナビゲート、検索、アクセス出来た場合、多チャンネルサービスの優位性は減り、視聴者を失って行くリスクがある。
