2014年のNABへの登録者は98,015人で、前年の4%増であった。実際の来場者数はまだ発表されていない。昨年の実際の来場者は93,850人であった。展示者数は1,746社で、利用スペースは7%増え、945,000平方フィートであった。混雑度を低く感じたのは利用スペースが増えたためであろうか。
今年のNAB前の、プレスリリースには買収関係が目立った。昨年にプライベートエクイティーのGores Groupに買収された、HarrisのBroadcast事業は1月にエンコーダー会社のImagine Communicationsを買った。そして、3月にGores GroupはHarrisの伝送系以外を分離し新しい会社を作り、社名をImagine Communicationsとした。Imagine社は、NAB中にTV Everywhere向けの製品拡大の為に、Digital Rapids社の買収を発表した。
Harrisの伝送系部門はHarris Broadcastの設立当時の社名Gates RadioにちなみGatesAirとなった。これにより、Harrisの名前は放送業界から消えた。Broadcast部門を売った、Harris Corporationは通信機器会社として残っている。
存在しなくなった会社にはMiranda Technologiesもある。Mirandaは昨年7月に電線会社のBeldenに買収されていた。そのBeldenは今年3月にGrass Valley Groupを買収し、Mirandaと合併させた。新しい会社はMirandaのカラーであった紫を引き継いでいるが、社名はGrass Valleyになり、Mirandaは無くなった。
NAB中にはその他、Dalet社によるAmbefinの買収(共にMAM関係)、ChyronHego社によるZXY Sports TrackingとWeatherOneの買収等もあった。グラフィックス分野のChyronは2013年5月に同じ分野のスウェーデンのHegoと合併し、ChyronHegoになっている。今回、買収した会社は共にノルウェイのグラフィックスの会社である。
映像関係の展示会としてNABは栄えているが、地上波放送局を代表するNABとしては危機が続いている。FCCは2015年に地上波の返上と競売を予定しているが、これが実施されれば、放送局数は減少し、NABの勢力も弱まる。FCC会長のGordon Smith氏はそのキーノートスピーチで、FCCはNABの味方では無くなっており、帯域の有効利用の為にシェアしろと言いながら、放送局同士の広告の共同販売を禁止しており、ダブルスタンダードで、信じる事が難しくなっていると発言した。その翌日にはFCC委員長のTime Wheelerがスピーチをした。彼は放送は重要だが、放送事業者もインターネットを使ったサービスを開始し、破壊者側になる必要があると言い、ブロードバンドへのシフトを促した
NABでの展示ではブロードバンドへのシフトが明白になっている。今年の大きな動きはクラウド化であった。クラウド化の提案は昨年もあったが、これまでのソルーションには専用ハードウェアが必要であり、Amazon Web Service(AWS)等のInfrastructure as a Service(IaaS)を使うことは難しく、プライベート・クラウド向けであった。しかし、今年はImagine、Grass Valley、AVID、Harmonic等、殆どの会社がソリューションのソフトウェア化を行い始めた。GPUが不可欠であったエンコード分野でもElementalは、GPU無しでも使うことが可能なソフトウェアエンコーダーを発表した。
クラウドのインパクトは2ある。1つは、制作分野で、撮影したビデオをクラウドに上げ、すべての処理をする事が可能になり始めている。これにカメラの低価格化を加えると、プロレベルの制作を誰でもする事が可能になり、プロとアマの差は使うことの出来るハードウェアの違いでは無くなっている。Maker Studioの買収に対してDisney以外にRelevance Mediaも名乗りを上げているように、YouTubeでスタートしたユーザ制作のコンテンツから成功するプロフェッショナルが誕生し、重要なトレンドになっている。
クラウドが与えるもう1つのインパクトは、コンテンツのインターネット配信を容易にする事だ。すでにクラウド上で、ほぼすべてのインターネット配信のサービスを提供するに必要なコンポーネントがあり、少ない先行投資でサービスの開始が可能になっている。クラウドを使うメリットには、ビジネスモデルを含めた市場環境の変化に応じてコンポーネントを入れ替える柔軟性、それに特別イベントの時だけに大きなストリーム数に対応出来るスケーラビリティ等もある。Comcastの子会社でビデオコンテンツのストリーミング・プラットフォームを提供しているthePlatformはAbobeと契約し、Adobe PrimetimeをthePlatform上で利用可能にした。Adobe Primetimeは認証、DRM、広告挿入等を含めた、TV Everywhereサービスを提供するのに必要な要素を提供する。
クラウドサービスで得られないのはコンテンツ自体だが、それもサービスとして提供される可能性がある。CDNで知られるAkamaiはOTTビデオ配信サービスのプラットフォームを提供してきたが、NABではVubiquity社との協力で、「Content as a Service」のビジネスを提供する事を発表した。小規模な多チャンネル事業者、あるいはOTT事業者向けにコンテンツライセンスの契約から配信まですべてを提供する。Comcastが中小ケーブルTV事業者向けに提供しているコンテンツ配信のHITS(Headend in the Sky)でもコンテンツのライセンスのオプションがあるので、そのOTT版である。
