多チャンネルサービス事業者は、コンテンツ事業者(多チャンネルネットワーク)に対して送信料を払っている。この送信料を巡る争いは年々加熱している。最近では、DirecTVがAMCと喧嘩し、DirecTVはAMCのチャンネルの放送を7月初めに停止している。ComcastとTennis Channelは1年以上の争いをしており、FCCの裁定までに発展している。
7月中旬には、2000万世帯の加入者を持つ全米で2位の多チャンネル事業者のDirecTVとMTV、Nickelodeon、Comedy Channel等の17の多チャンネルネットワークを持つ大手コンテンツ事業者のViacomが送信料の争いを始め、DirecTVはViacomの全17チャンネルの放送を中止した。DirecTVは、Viacomは30%近い値上げを要求し、$10億ドルの契約を求めていると語っていた。これに対して、ViacomはこれまでのDirecTVとの契約は業界の平均以下であり、不当な料金は求めていないと反論した。2社は、プレスリリースだけでなく、ソーシャルメディアも使った争いをした。
争いは1週間続いたが、最後には和解し、Viacomの17チャンネルはDirecTVに戻った。新しい契約条件は公開されていないが、DirecTVの支払いはこれまでの1加入者あたり、月$2.25から、$2.80に増えたと推定されている。他の多チャンネルネットワークとの契約は$3程度と推定されており、まだDirecTVとの契約は低めである。また、DirecTVはViacomが投資している有料チャンネルのEPIXの放送にも合意した。
送信料の争いは以前からあるが、最近では大きな紛争になる事も珍しく無くなっている。多チャンネルネットワークには広告収入と送信料の収入がある。Viacomの様なポピュラーなチャンネルを持つ会社に取り、広告収入の方が重要であり、DirecTVの様な大手とは契約金が低くても、その加入者のベースを得ることが重要であった。しかし、広告収入の成長が鈍りがちな現在、視聴者料は重要な収入源になり、争いも大きくとなってくる。
以前は争いが激しくなっても、送信を中止する事はめったになかった。放送が中断されれば、多チャンネルネットワークは収入を失い、多チャンネル事業者はその加入者を怒らせることになり、お互いにデメリットの方が高かった。しかし、競合が増えることで状況は変わっている。多チャネル事業者は、ケーブルTV、衛星、IPTVと増え、多チャンネルネットワークは1つのサービスに頼る必要は無くなっている。また、チャンネルは100以上に増えており、多チャンネルサービスが数個のチャンネルを失っても、チャンネル数が数十であった時代より加入者の怒りも少ない。結果、今回のようにお互いに簡単には譲らない争いが増えてくる。
さらに、TV番組のインターネット配信は、送信料問題に新たなインパクトを与えている。多チャンネル事業者がTV EverywhereでTV番組を配信する事を許可する条件として、コンテンツ事業者は当然送信料の値上げを求める。逆に、コンテンツ事業者がHulu等でその番組のキャッチアップ配信をする事は、多チャンネル事業者を有利にする。キャッチアップ配信があれば、その番組の放送が中断しても加入者の怒りは低い。また、コンテンツ事業者が無料配信をしているのであれば、多チャンネル事業者に対し同じ番組の放送の値上げを要求する根拠が無くなる。Viacomは、DirecTVとの交渉が始まる直前にその番組のキャッチアップ配信を放送翌日から、21日後に変えている。
