ATSC M/Hモバイル放送の現状

今年のNABはモバイル放送が主役になるはずであった。しかし、NABはで目立ったのは3Dだけで、モバイル放送の影は薄かった。規格が正式になる等の進歩はあったのだが、1年前から余り進歩が感じられない。3Dが話題を奪ってしまった事もあるが、モバイル放送がNABで大きな話題になれなかった理由は2つある。

1つは、ビジネスプランが不明な事である。放送局は熱心で、すでに全米で45局がATSC M/Hに基づいたモバイル放送を行っているが、放送業界以外のパートナーが出来ていない。携帯電話事業者のいずれもモバイル放送へのサポートを発表していない。ワシントンDCのテストに参加しているSprintもまだ正式な支持はしていない。また、3Dにあるような、コンテンツ側からの大きなプッシュも出ていない。

2つ 目は、モバイル放送の大きなアピールの場になるはずのワシントンDCでのテストが遅れた事である。最初は昨年の秋の予定が、今年の初めになり、春になり、やっと5月3日の開始が正式になった。端末が準備出来なかったのが大きな理由だが、このために、CESでも、NABでもモバイル放送を話題にする事が出来なかった。

しかし、放送局のモバイル放送への熱が冷えている訳ではない。すでに45局がモバイル放送を開始しており、年末までには150局が参加の予定である。帯域の再編成のために、FCCが放送帯域を取り上げる動きを見せている中、放送局はモバイル放送の重要性を協調し、放送帯域を減らすべきでないと語っており、モバイル放送は帯域編成の戦いでの大きな武器になろうとしている。

遅れていた、ワシントンDCのテストもやっと開始になった。Sprintはその200のユーザにモバイル放送チューナ内蔵電話のSamsung Momentを無償で、貸し出す他、ATSC M/H対応のネットブック等のポータブルデバイスが提供される。テストにはワシントンDCの9局が参加し、20チャンネルの放送が行われる。殆どは、広告収入の無料放送だが、有料チャンネルもテストされる。課金には携帯電話回線が使われる予定。ATSC M/Hの推進コンソーシャムのOMVC(Open Mobile Video Coalition)は、このテストの為に調査会社のHarris Interactiveと視聴測定会社のRentrakを雇っている。

ワシントンDCで行われているテスト以外に、全米各地で放送局がモバイル放送を始めている。最近に開始された中にはデトロイトのWDIVとWXYZが含まれている。これらの局は、デトロイトの自動車メーカーが車向けの情報・エンターテイメントシステムを開発、テストする為に、モバイル放送を始めている。