FCCが約1年をかけて作った、ナショナル・ブロードバンド・プラン(NBP)が発表された。300ページ以上のNBPはhttp://broadband.gov/plan/ からダウンロード出来る。
NBPの目的は、アメリカにおけるブロードバンドの普及率を高める事である。アメリカは、ブロードバンド技術では大国だが、一般的なサービスの速度は遅く、普及率も65%程度でしかない。NBPの具体的な目標には下記が含まれる:
- 2020年には1億世帯が、100 Mbpsレベルのサービスを受けられるようにする。
- 4 Mbpsのサービスを最低限のサービスとして、ユニバーサル基金でカバーする。
- モバイル・ブロードバンドもユニバーサルサービスとし、ユニバーサル基金のブロードバンド版を作る。
- すべてのコミュニティーの公共設備の最低1つのに1Gbpsのネットワークへのアクセスを提供する。
- 公共安全向けの無線ネットワークの構築。
これらの目標に達するには、資金が必要になる。FCCは、政府が新たに240億ドルを投資する事を勧めている。その資源としては、税金、帯域競売、それにユニバーサル基金がある。FCCは、連邦政府がインターネット・サービスとコマースに対する税金の枠組みを作る事を勧めている。現在、インターネットに関する税金は州レベルであり、統一性が無い。連邦レベルの枠組みを作る事で、税制に一貫性を持たせ、また、連邦政府への財源にもなる。しかし、税金が増える事で、インターネットとEコマースが高くなったのでは、ブロードバンドの普及にはならない。また、州政府から税金を取り上げようとすれば、反対が出る。
FCCは、アナログ放送跡地の700 MHz帯に公共安全向けとして20 MHz帯域の「Dライセンス」を残している。FCCは民間事業者にこの帯域の半分を売り、その資金で、10 MHzの公共安全向けのネットワークを構築する事を計画している。しかし、公共安全に20 MHz全体を与えるべきだとの意見もある。20 MHzを公共安全に与えた場合、このネットワークを作る費用をどうするかが問題になる。
ブロードバンド普及の資金源としてもっとも現実的な事は、電話料金の一部として徴収され、低所得者に安く電話サービスを提供し、また田舎での電話回線の敷設を援助するユニバーサル基金(USF)、それにICC(Intercarrier Compensation)の利用範囲をブロードバンドにも拡げる事である。本年度のUSFの87億ドルは、田舎の電話事業者のネットワークアップグレードに使われる予定だが、現在ではブロードバンドは対象にはならない。USF、ICCをブロードバンドの普及に使うことは、理論的であるが、簡単にはいかないと思われる。
USFには大きな問題がある。それは、はっきりとした監査システムがなく、田舎の電話事業者に過剰と思われる支払いをしている事である。FCCがブロードバンドの普及の為に、USFの見直しをした場合、電話事業者への支払いは大きくと減る。電話会社は当然、これには反対であり、USFの見直し反対のロビーをしていくであろう。
NBPの目標のもう1つの大きな問題は、無線帯域である。全米にくまなくブロードバンドを普及させるには無線の利用が不可欠である。国土が広いアメリカでは、人口密度が非常に低い地域も多く、全世帯に光ファイバーは現実的ではなく、ブロードバンドのユニバーサル化には無線が必要になる。さらに、モバイルブロードバンドの普及にも新たな帯域が必要になる。FCCは、NBPで新たに500 MHzを2020年までに競売する事を予定している。計画では300 MHzは2015年までに競売となる。これは下記の帯域である。
| バンド名 | 競売時期 | 帯域 |
| WCS(2.3 GHz) | 2010年 | 20 MHz |
| AWS2、AWS3 | 2010年から2011年 | 60 |
| Dブロック | 2010年から2011年 | 10 |
| Mobile Satellite Service | 2010年から2011年 | 90 |
| TV放送 | 2012年から2015年 | 120 |
| 合計 | 300 |
FCCは新たな帯域を得るために、帯域政策を改めていく事を求めている。帯域免許は、競売制になっているが、政府が利用者に対して、貸している形態である。しかし、貸していると言っても実際的にこれを取り戻す方法は無い。FCCは帯域管理をより流動的に行う方法を作ろうとしている。
最初に必要な事は、帯域利用権限とその実際の利用をはっきりと把握する事である。FCCはそのデータベース作りを始めており、その為のウェブサイトのベータ版をすでに作っている(http://reboot.fcc.gov/spectrumdashboard/searchSpectrum.seam )。FCCは、各地域で、誰が、どの帯域を何の目的で使っており、さらにどの程度効率的にその帯域が使われているかを調べ、公開していく予定である。しかし、これだけでは、有効に利用されている帯域を返還させることは出来ない。FCCは使っていない帯域の権利を取り戻すために「アメとムチ」の方法を提案している。
アメは、お金である。利用免許を得ている帯域を返還する事業者に対しては、競売で得たお金を分け与える。例えば、FCCはTV放送帯域から120 MHzを空けようとしているが、競売金を帯域を返還した会社に分け与えることで、これを実現しようとしている。
しかし、帯域の権利は大きな価値があり、競売金の一部が入ったとしても手放すとは限らない。手放させるにはムチも必要であり、FCCはムチとして、帯域利用料金を徴収する事を提案している。その詳細はまだ決まっていないが、帯域利用料を徴収する事で、帯域権利を持っているがその帯域を効率的に使っていない(売上げが少ない)事業者は、赤字になり、返却をしざるを得なくなる。
NBPの必要資源(金と帯域)を得る方法もはっきりとしていなく、具体的な施策は少ない。また、NBPが実施されるには議会の承諾が必要であり、現実化するにはまだ多くの時間が必要になる。
FCCはこのNBPを作るのに2060万ドルを使った事を発表した。その内訳は、638万ドルがスタッフの給与、537万ドルがIT、ソフトウェア等が392万ドル、データと調査が401万ドル、その他91万ドルであった。
