CableCARDとDCAS

CableCARDの目的はシンプルな物である。1996年通信法にあるケーブルTV`事業におけるサービスとCPE(STB)の分離を行うためには互換性の無い部分であるコンディショナルアクセス(CAあるいはCAS)の機能をPCカードとして切り離し,互換性のあるチューナ部分を作ることである。もし,これが10年前であれば簡単に行われたであろう。しかし,ケーブルTVが単純な放送の伝送では無くなっている現在,CASをSTB(他のケーブルTVチューナを持つ製品)から分離する事はシンプルでは無くなっている。

最初の問題は現在のケーブルTVサービスはVODを含み,双方向化されている事である。現在提供されているCableCARD 1.0は単方向(放送)しかサポートしていない。これではIPG(Interactive Programming Guide)も,VODのサービスも受けることが出来ない。CableCARDを搭載したDCR(Digital Cable Ready)のTV等は2004年7月から出荷されているが,まだ6万台程度しか出荷されていない。

双方向アプリケーションのサポートはCableCARDの双方向化だけの問題ではない。双方向対応のCableCARD 2.0は規格化されているが,これを使い双方向アプリケーションを走らせるにはDCRで走るITVミドルウェアが必要となる。CableLabsは標準ミドルウェアとしてOCAP(Open Cable Application Platform)を開発している。双方向のDCR製品はOCAPを走らせる必要があり,さらにMSOの方でも提供している双方向アプリケーションをOCAP対応にする必要性がある。

MSOはFCCに対して2006年からOCAPの導入を開始させ,2009年7月1日には全システムでの導入を完了させる事を約束している。Time WarnerはSamsungとの契約で同社のOCAP対応のTVを使い,ノースカロライナのシステムでテストを行ってきており,ニューヨーク等のシステムで今年からOCAPの導入を始める事を発表している。ComcastはSamsung,PanasonicからOCAP対応のSTBを購入する契約を発表しており,フィラデルフィア,デンバー,ユニオン(ニュージャージ),ボストンのシステムでの導入を開始する。ComcastはOCAPを使ったアプリケーションとしてSTBのリモコン1つでホームシアターの音声等,全機能をコントロールする機能を開発している。

CableCARDの導入

MSO

CableCARD利用世帯数

CableCARDレンタル価格(月額)

CableCARDインストレーション価格

Adelphia

5,874

$1.75

$40.00

Cablevision

3,799

$1.25

$34.95

Charter Cable

3,900

$1.50

$32

Comcast Communications

27,875

$0

$23.12

Cox Communications

6,895

$1.99

$22.91

Time Warner Cable

9,240

$1.75

$18.95

2005年10月にMSOがFCCに対して行った報告から

しかし,OCAP対応だけで問題は済まない。CableCARD 2.0は双方向であるが,上り下りとも1つのストリームにしか対応していない。DVR機能では最低でもデュアルチューナであり,2つのストリームへの対応が必要とされる。今後,放送と双方向アプリケーションを組み合わせたサービスも考えられ,複数のストリームのサポートは不可欠である。CableLabsは現在,6つのストリームに対応するCableCARD,「Mカード」を開発している。ケーブルTVが単純な放送以上になっている今,STBが持つ機能は重要である。MSOとしてSTB(その機能)がアンバンドルされ家電店で売られるようになっても良いが,それら製品が今後提供されるアプリケーションに対応出来ないと困る。レンタルであれば,新しいアプリケーションを提供するのに新しいSTBは必要とされれば交換する事が出来るが,新機能を提供するたびに視聴者に新しいDCRのTVを買ってもらうことは無理である。コンシューマもVODが出来ないTVとか,次世代のIPGには対応出来ないTVを買うはずは無い。ケーブルTVサービスとSTBのアンバンドルを成功させるにはDCR製品は未来対応で無ければならない。TVは通常1,2年で買い換える製品ではなく,これを数年後のITVアプリケーションに対応させておくことは困難である。

未来のアプリケーションに対応させるには現在使われていない機能も盛り込む必要があり,ハードウェアは複雑化する。MSOはデジタルケーブル加入世帯を増やし,いずれは100%デジタルの環境にしようとしている。その為には出来るだけ低コストのSTBが必要である。2007年7月1日からMSOはCAS内蔵のSTBの提供が出来なくなるが,ベーシックなSTBもMカード対応の高価なSTBにしていたのではサービスは普及出来ない。

CASをSTBから切り離す方法としてMSOはソフトウェアベースのCASをヘッドエンドからダウンロードする,ダウンローダブルCAS(DCAS)を認めることをFCCに求め,FCCはこれを認めた。DCASはCableCARD,そのインタフェースが不必要な分,ハードウェアコストを下げることが可能なだけでなく,加入者に対してCableCARDを届け,インストールしたり,サービスを辞めた時点でCableCARDを回収する手間も省ける。

しかし,DCASは新たな課題を作っている。MSO,それに家電ベンダーは今後,CableCARDとDCASの両方をいかにサポートするのか。永続的に両方をサポートするのか,あるいはいずれかはDCASのみに移行するのか,それはどの様に行うのかを考える必要がある。Time WarnerはDCASは2006年末から一部で採用が始まり,本格的な導入は2007年から行われ,2008年には全国規模でDCASが導入されると語っている。DCASはSamsungが昨年末にサポートを発表したのに続き,CESではLGもDCASのライセンス契約を行った事を発表した。