TVとPCの融合

これまでTVとPCとの融合と言うと殆どはPC向けにブロードバンドでビデオを提供するサービスであったが,1月に多くのTVとPCの融合を本格的に可能にする製品の発表があった。

まずは,MicrosoftのWindows Vistaである。Vista搭載のPCはCableCARDをサポートする事が可能であり,デジタルケーブル対応のPCを提供する事が出来る。Dellは早速,CESでCableCARD対応のデジタルケーブルTVチューナを内蔵したDell Home Media Suiteを発表した。このXPS 410デスクトップPCがベースのシステムは1テラバイトのハードディスクを持ち,デジタルケーブルTVサービスが提供するHDを含むプログラムを録画出来き,さらにMedia Center Extenderを持つ,Xbox 360等に番組をストリーミングする事が出来る。

これに対して,Appleは昨年発表したAppleTVの出荷が2月から始まることを公開した。AppleTVは50 GBのハードディスクを持ち,iTunesからダウンロードしたビデオなどをデジタルTVで見る事が出来る。AppleTVには最大,5台のコンピュータを接続出来,それらに保存されたビデオをAppleTVに接続したテレビで見る事が出来る。

ブロードバンドから得たビデオをTVで見る事が出来るようにする製品としてはSling MediaのSlingCatcherもある。SlingCatcherをTVに接続する事で,別の場所にあるSlingboxをつないだDVRに録画されたビデオを見ることが出来る様になる。これまでSlingboxが送るビデオを見るにはPC,PDA等が必要で,TVでは見ることが出来なかったが,SlingCatcherはこれを可能にする。さらにSlingCatcherはホームネットワークに接続されたPCを使い,インターネットでストリーミングされているビデオをTVで見る事も可能にする。
TVとPCの融合を狙っているのはPCベンダーだけではない。DirecTVはDirecTV Plus HD DVRをViiv対応にするアップグレードを発表した。DirecTV DVRをホームネットワークにつなぎ,PCに保存されている音楽,ビデオをTVからもアクセスする事が可能になる。現在のバージョンは音楽のみのサポートだが,Viiv対応PCからビデオをDirecTV DVRにストリーミングする事を可能にするバージョンも後日提供される。

これら製品により,ケーブルTV等の多チャンネルサービスをPCで受けたり,ブロードバンドビデオをテレビで見たりする事が可能になり,TVとPCの融合はさらに前進する。しかし,まだ大きな課題が残っている。それはDRMへの対応である。VistaはデジタルケーブルTVのCASで保護されたビデオを解読し,PC上で扱えるフォーマットに再エンコードし,記録する。コピーは不可能であり,Media Center Extenderで他のPC,あるいはTVにストリーミング出来るが,Zune等の別フォーマットのデバイスに送ることは出来ない。DirecTVのViiv対応のDVRにしても,DVRのビデオをPCに送る事は出来ない。

これはユーザに取って大きな不満になる。ケーブルTVの番組をCableCARD内蔵のVista PCで録画しても,それをノートPCに移し,外出先で見る事は出来ない。ZuneとかiPodに移すことも無理である。どうしても見たければ,iTune等で買わなければならない。しかし,iTunesで買ったビデオはAppleTV,iPodで見ることは出来ても,Zuneで見ることが出来ない。ハードウェア的にTVとPCの融合が現実化しても,これではせっかくの技術を満足に使うことが出来ない。コンテンツ事業者はその資産を保護し,各流通チャンネルを守っていきたい事は分かるが,同じコンテンツをDVDで買い,PC向けにダウンロードで買い,iPod向けにiTunesで買い,携帯電話ではまた別に購入しなければならないのではTV,PC,そしてモバイルのメディアの融合は進まないであろう。