小売大手のWalmartが低価格のスマートTVベンダーのVizioを$23億で買収した。Vizioは2002年に設立されテレビメーカーで、低価格のHDTVを売ることで大成功し、一時はアメリカ最大のTVメーカーになった。Vizioは2021年にIPOを行い、それで得た資金を使い、ハードウェアベンダーからサービス事業者にピボットをしている。Vizioの戦略はRokuと同じで、スマートTVを安く売り、ユーザベースを広げ、広告等のプラットフォームからの収入で儲けるものである。同社はRoku Channelに対抗するFASTサービスのWatchFreeを持ち、そのTV OSのSmartCastのアクティブアカウント数は1800万になっている。Vizioは2015年に自動コンテンツ認識(ACR)のCognitive Media Networksを買収し、InscapeとしてスマートTVから得た視聴データの提供もしている。Inscapeはネットワーク、広告主等に視聴データを販売する以外、iSpot.tv、Nielsen、VideoAmp等にライセンスしており、新しいカレンシーのビッグデータの一部として使われている。
Walmartは常にAmazonを意識している。2006年にAmazonがPrime Video(当時のサービス名はAmazon Unbox)を開始すると、WalmartもTVODサービスを立ち上げ、2010年にVuduを買収する。AVODのVudu Movies On Usも開始し、オリジナルコンテンツの制作にも乗り出すが、成功せず、2020年にVuduはComcastに売却した。WalmartはAmazon Primeのような会員サービスも提供しており、そのストリーミングビデオ・サービスとしてはParamount+を無料で含めている。さらに、2021年にはAmazon Fire TV、Roku等に対抗するストリーミング・プレーヤーのOnn(Google TVベース)の提供を始めている。
WalmartのVizio買収はスマートTVの販売拡大以上に、広告事業の拡大である。Walmartもリテール・メディア広告を持っており、その広告収入は2024年度で$34億になり、前年から28%の成長があった。Vizioの買収は新たな広告収入を加え、さらにビッグデータによる小売と広告の組み合わせを強化することが出来る。VizioがInscapeで視聴データを売っているように、Walmartも購買データの事業を持っており、自社でデータを使う以外、Nielsen等にコンシューマの消費データの一部として、1990年代からライセンスしている。
Vizioのストリーミング・プラットフォームのユーザ数は、アメリカでは最大のユーザ数を持つRokuと比べると、22%でまだ低い。しかし、Walmartには大きな販売力があり、安売りも出来る。4KのストリーミングプレーヤーはRokuの最も安い製品は$30だが、WalmartのOnnは$20で販売されている。32型のOnnスマートTVは$98で売られている。OnnのTV OSをVizioのSmartCastにすることで、ユーザベースは増やすことが出来る。VizioはすでにCTV向けの広告プラットフォームを持ち、FASTのWatchFreeもあり、ARPUではRokuに近づいている。WalmartはAmazonと同様に利用者の購買データと組み合わせた広告販売も可能であり、Rokuに対する大きな競合になる可能性がある。

各社(カッコ内は前年同期比)
