DisneyのDirect-to-Consumerへの参入戦略はよく練られた物であった。2013年にNetflixとパートナーになり、Netflixの戦略を勉強しながら、配信プラットフォームとして、Major League BaseballのMLB Advanced MediaのBAMTech Mediaを2017年に買収しする。BAMTech Media(現在、Disney Streaming)を使い、2018年にスポーツ専門のESPN+をローンチする。そして、Disneyのライブラリーを補うために、2019年にFoxの映画スタジオ、それにニュースとスポーツ以外のFX、National Geographic 等の多チャンネル向けネットワークを買収する。
この買収にはFoxのHulu株も含まれ、DisneyはHuluの3分の2を持つようになる。Disney+がローンチされた2020年Q4ではHulu加入者は3940万人であった。この加入者ベースを有効に使い、Disney+の加入者は数カ月間で3000万人を超えると言う好調なスタートをした。Huluは最も早く広告付きSVODを始めたサービスであり、そのノーハウは広告付きDisney+の広告付きサービスのスムーズなローンチにも活かされている。
HuluはDisney+の成功に大きな貢献をしたが、その位置は微妙になり始めている。1社で複数のOTTサービスを持つことは非効率的であり、Paramount GlobalはParamount+ PremiumとShowtimeを融合し、Warner Bros. DiscoveryはHBO MaxとDiscovery+を統合しようとしている。運営、コンテンツ制作等のコストが増えるだけが問題ではない。利用するサービスが増えると検索、アプリの立ち上げ等の面倒も増える。利用者は多くのOTTサービスを使っているが、それに対する不満も多く、1社で複数のサービスを売ることはチャーンを増やすことにもなる。DisneyはDisney+、Hulu、ESPN+をまとめて売ろうとしているが、利用者は3つのサービスを使う事になり、不満も多い。
来年にはComcastは同社のHulu株を売ることが可能になる。Disneyが買うことが前提で、売り値は最低で$90億となってる。しかし、DisneyはHuluを手放すことも考え始めている。Disney+はDisneyブランドの家族向けサービスで、それ以外のコンテンツはHuluでの配信であるが、Disney+にも大人向けコンテンツもあり、Disney+とHuluの差は以前のように明瞭では無くなっている。Huluには広告があるのに対して、Disney+には広告が無いと言う違いも無くなっている。
DisneyがHuluを手放す場合、誰が買うかが問題である。Comcastが買うとの話もあるが、ComcastはすでにPeacockをいかに黒字にするかで十分に頭を痛めており、新たな負担は欲しくないであろう。Comcastは価格が$90億以上であれば、Disney以外でもHulu株を売ってもいいと語っている。第三者がDisneyとComcastの両者から株を買い、Huluの100%を持つ事も可能になる。しかし、それには$300億程度を投じる必要がある。
Huluには4500万人の加入者がおり、黒字であり、$300億の価値はあるかも知れない。しかし、多くのHulu加入者はDisney+とのバンドルで加入しており、Huluが売却され、ABCのコンテンツがDisney+でも見ることが可能になれば、Huluに加入し続ける必要は大きく減少する。Huluの問題はコンテンツの規模である。一時はHuluにはCBS以外のほとんどの大手ネットワークの番組があったが、DTC化が始まることで契約を失っている。Huluの3分の1を持つComcastにしても、NBCの番組はPeacockを優先に配信をしている。独占コンテンツとしてはABCとFoxが残っているが、DisneyがHuluを売れば、ABC番組はなくなる。Huluにはオリジナル番組があるが、大きな数ではない。Huluのコンテンツの内、独占コンテンツ(オリジナル、あるいは独占配信権)は40%と低い(Netflixは80%以上)。Hulu買収で一時的には大きな加入者数を得ることが出来るが、持続させるには多額のコンテンツへの投資が必要になる。殆どのコンテンツ事業者はすでにSVODサービスを持っており、Huluを持つ必要性は低い。
