まったく無意味な規制であったCableCARDの採用義務が終了になった。ケーブルTV STBにセキュリティ機能(CAS)を内蔵するのではなく、着脱可能にする規制は1996年の通信法から生まれた。1996年通信法は固定電話と同様にケーブルTVもサービスと家庭内の端末(STB)の提供を分離する事を決め、STBを市販可能にすることを求めた。
STBには標準規格があり、市販向けの製品は作れるが、問題は複数のCASが存在しており、1つに統一することが不可能なであった。FCCはこの規制はデジタルSTBを対象とし、CASをPCカード形式のCableCARDにして、交換可能にすることを決定した。市販のSTB、あるいはケーブルTV対応のテレビ受像機はデジタルケーブルのチューナ機能を持つが、CASは内蔵されていない。加入者はケーブルTV事業者からCableCARDをレンタルし、STBのスロットに挿入する事でサービスが利用可能になる。これにより、異なるCASを採用しているケーブルTV事業者の地域に引っ越しても、購入したSTB、あるいはケーブルTV対応受像機は使い続けることが出来る。
FCCはCableCARDが普及し、それをケーブルTV事業者が積極的にサポートする事を確実にするために、市販のSTBだけでなく、ケーブルTV事業者がレンタルするSTBにもCableCARDを使い、CASを内蔵することを禁止した。この規制が始まったのは2007年で、通信法が通過してから10年後であった。
CableCARD規制が始まり、市販のSTB、あるいはケーブルTV対応の受像機が登場しても、それらはほとんど売れなかった。これにはいくつかの理由はがあるが、最も大きな理由はCableCARDはサービスと端末の切り離しと言う本来の目的の解決にはなっていなかった事である。STBと同様に、CableCARDはケーブルTV事業者が提供し、加入者にはそれをレンタルするしかない。市販のSTBを買っても、加入者はケーブルTV事業者に対して、CableCARDとしてレンタル料を払い続けることになる。
また、1996年の通信法からCableCARDが義務化される間に衛星を使ったDirecTVとDish Networkの多チャンネルサービスが普及した事も大きな影響になった。CableCARD規制の対象は通信法に書かれていたケーブルTVサービスだけであり、衛星放送にはあてはまらない。そのため、ケーブルTV対応の受像機を買っても、サービスを衛星放送に変えた場合は、衛星放送事業者のSTBをレンタルすることになり、受像機のCableCARD機能は無駄にある。
さらに、初期のCableCARDは単方向であり、EPG、VOD等の双方向サービスが使えなかった。また、少ないデジタル向けの帯域容量で多くのチャンネルの提供を可能にために使われていたSwitched Digital Video(SDV)にも対応しないので、CableCARDを使うと見ることが可能なチャンネルが減ってしまった。2008年には双方向のtru2wayと呼ばれるCableCARDが登場する。しかし、根本的な問題である、サービスと端末の切り離しの解決にはなっていなく、tru2wayの製品も売れなかった。
ケーブルTVのアナログチャンネルはSTB無しで、アナログテレビで視聴可能であったが。しかし、ケーブルTV事業者がアナログサービスを終了させ、全チャンネルをデジタルで配信し始めたことで、すべてのTVにSTBを付ける事が必要となった。これらのベーシックなSTBはデバイスはDTA(Digital Terminal Adapter)と呼ばれ、価格を低くするためにCableCARDは免除になった。DTAは最初は単方向でSD画質とされてといたが、その後、双方向で、HDのDTAも提供可能になり、CableCARD規制の意味は弱まっていく。
セキュリティをハードウェアではなく、ソフトウェア化する動きが出て、さらにはSTB自体をアプリ化する開発も始まったが、これらが普及する前に、多チャンネルサービスはSVODに押され、加入者を奪われ始め、現時点では消えている。CableCARD規制は生き残っていたが、CableCARD対応の市販製品は、TiVoのDVRだけであり、その95%以上は事業者がレンタルするSTBに使われている。通信法が求めたサービスとSTBの切り離しは起きず、無駄にSTBの値段を高くしただけの無駄な規制であった。
