Quibiのコンセプトはモバイルオンリーであったが、コネクテッドTVのサポートを求める声が多く、QuibiはApple TV、Fire TV等のストリーミング・プレーヤ向けのアプリ開発を急いていた。10月20日にApple TV、Fire TVとAndroid TV向けのアプリが発表された。しかし、時すでに遅く、その2日後にQuibiは撤退を発表した。12月1日が最後になる。サービスは4月にスタートしたので、7ヶ月も経たずに降参し、サービス自体は9ヶ月間の短い寿命となる。
Quibiはその失敗をCOVID-19の責任にしているが、家にいる時間が長くなることで、他のOTTビデオサービスは軒並みに利用者を伸ばしている。Quibiはショートビデオであり、確かに通勤電車の待ち時間等は無くなっているが、自宅勤務により隙間時間が消えた訳ではない。もし、短編ビデオを見る時間が無くなっているのであれば、YouTubeの視聴も減っていることになる。COVID-19により制作が滞ったことは事実であり、Quibiと同様に過去のコンテンツ資産無しでスタートしてApple TV+もダメージを受けている。しかし、問題がCOVID-19だけであれば、状況は良くなるはずであり、7ヶ月間でギブアップする必要はない。
Quibiの失敗の理由は自信過剰で、市場の動向を無視したことである。そのコンセプトは「モバイル向けにハリウッドレベルのショートフォーマットのコンテンツをミレニアル世代に提供する」である。QuibiがNewTVとして設立されたのは2018年であるので、多分、コンセプトは2017年以前に作られたものであろう。その時点では、このコンセプトにエラーはなかった。しかし、3年間で状況は大きくと変わっている。
3年前はモバイル端末での視聴は多かった。しかし、現在ではOTTビデオの視聴はコネクテッドTVが主体になっており、ConvivaのQ3統計ではアメリカのOTTビデオの再生時間の82%はコネクテッドTVで視聴されている。コネクテッドTVの利用を増やしているのはQuibiが対象としているミレニアル世代(1990年代中期から2000年初期の生まれ)である。ミレニアルにアピールするにはスマートフォンだけでなく、コネクテッドTVのサポートも必要になる。
現在、モバイルでの視聴が多いのはミレニアルより若い、ジェネレーションZであるが、しかし、Gen Zにはまだ、Quibiに加入する経済的な余裕は無く、YouTube等の無料サービスで満足している。さらにモバイルでの視聴が重要であれば、ソーシャル機能は不可欠になる。しかし、Quibiには一切ソーシャル機能が無いだけでなく、スクリーンショットも不可能にしており、Instagram等にQuibiで面白かったビデオの画像を投稿する事も出来ない。
モバイル向けである以外に重要なQuibiの特徴はハリウッドレベルに金をかけたコンテンツであある。3年前は金をかけたOTTビデオは少なかった。しかし、Disney、WarnerMedia、NBCUniversal等もOTTサービスを始めている今、OTTでもハリウッド制作のコンテンツは当たり前になっている。YouTubeもプレミアムブランドの広告を得るために金を使ったコンテンツを配信しており、ショートビデオ、イコール、アマチュアが作った品質の悪いものでは無くなっている。
サービス開始の事前に加入者と想定していたミレニアル世代の視聴動向を調べれば、最初のコンセプトにずれが生じ始めていることは簡単に分かったはずであり、対応することはは出来たであろう。しかし、コンセプトに自信を持ち、変化に目を向けなかった事がQuibiの敗因である。
