TVネットワークのOTT化

主要テレビネットワークの中で、もっも早くSVODサービスを開始し、放送局、あるいは多チャンネルサービス事業者のバイパスを始めたのはCBSである。同社はCBS All AccessでCBSライブラリーのオンデマンド配信に加え、同時配信も開始した。

プレミアムチャンネルのShowtimeのOTT版もあり、さらにCBSはOTTでのニュース専門チャンネルのCBS Newsも始めている。CBS NewsはOTT専用であり、多チャンネルサービスでの放送は無い。CBSの重要なチャンネルはCBSとShowtimeの2つであり、大きな基本チャンネルは無いので、多チャンネルサービス事業者に気兼ねする必要が無い。

CBS Newsに続き、CBSはスポーツチャンネルのOTT化も予定している。CBSには多チャンネルサービスの基本チャンネルのCBS Sportsがあるが、その地位はABCのESPN、それにFox Sportsと比べると低い。その分CBS Sportsとの共食いの心配は少なく、CBSのOTTスポーツネットワークは積極的な動きが出来る。

CBSはさらにCBS All Accessを世界的に提供していく事も発表した。カナダで2018年前半にサービスを開始し、世界展開を進めていく。CBS All AccessとShowtimeの2つのサービスへの合計加入者は年末には400万人に達する予定だ。

ABCはTV番組を一番早く自社のウェブサイトで配信し、iTuneでの販売も一番乗りであったが、既存の放送事業者のバイパスには積極的ではなかった。DisneyにはESPNとDisney Channelと言う大きな基本チャンネルを持ち、多チャンネルサービス事業者との関係は大切である。ESPN、Disney Channel等の多チャンネルサービス向け事業の収入はDisney全体の30%を占めている。しかし、状況は大きくと変わっている。Walt Disney社の最新四半期の売上は前年同期とほぼ同じの$142億であったが、純利益は9%減り、$24億となった。テレビ・メディア部門の収益は22%も減り、$18億であった。収入は多チャンネルサービスネットワークが3%減の$40.9億、地上波放送は4%アップの17.8億であった。

ケーブルTVネットワークの収入が減っているのは多チャンネルサービス加入世帯の減少である。DisneyのESPNは1加入世帯あたり月$7以上の契約金であり、ESPN 2等の他のESPNチャンネルも加えるとESPN系だけで$9以上になり、加入世帯減少のダメージは大きい。ESPN視聴可能世帯数は2014年7月では9617万世帯であったのが、2017年2月では8786万世帯に減っている。そこにスポーツコンテンツの値上げが重なり、大きな利益減少となった。既存媒体の依存では状況が好転する可能性は無く、DisneyもOTT化を進める事を発表した。


Nielsen

DisneyのOTTチャンネルの1つは以前から発表があったESPNブランドのサービスである。詳細は発表されていないが、MLB、NHL(アイスホッケー)、MLS(サッカー)等1万以上の試合を配信し、アプリ内でMLB TV等のオプションも購入可能になる。2つ目のサービスはDisneyブランドで、Disney、Pixar等の映画、それにDisney、Disney Junior、Disney DXのチャンネルで放送されるTV番組、それにオリジナル番組を配信する。現在、Disney映画の配信権を持つNetflixとの契約は2019年で解消になるが、Netflix向けのMarvelシリーズのドラマの制作、それにABCドラマのNetflixでの配信は引き続き行われる。

Disneyはこれらサービスを提供するためにBAMTechの株42%を$15.8億で購入する事を発表している。Disneyは2016年8月にBAMTechの3分の1を$10億で買っているので、今回の購入で、BAMTechの75%を持つ事になる。BAMTechは2015年にMajor League Baseballのテクノロジー部門のMLB Advanced Mediaが設立したOTT配信のプラットフォームで、MLB以外にNLH、PGA、WWE Networks、PlayStation Vue、HBO Now等が使っている。

ESPNのOTTサービスは既存のESPNチャンネルを補充する形でスタートし、ESPNチャンネルの視聴者を奪う物ではないが、DisneyブランドのSVODはDisneyとDisneyのテレビチャンネルを配信し、既存の多チャンネルサービス事業者をバイパスするサービスになる。ブランド力としてはDisneyのSVODサービスは強力であり、影響力は高い。Viacomもその多チャンネルサービスチャンネルをベースにしたSVODを検討しており、北欧ではParamount+としてサービスを始めている。DiscoveryもSVODを計画しており。Foxにも噂がある。これら大手の多チャンネルサービスの基本チャンネルがSVODサービスを始めると、多チャンネルサービスの必要性は減り、加入者の減少はさらに進むことになる。