National Association of Broadcasters(NAB)によると、今年のNABへの登録者は103,443人で、2016年の参加者数の102,513人を上回った。海外からの参加者数は26,714人であった。出展者数は1,806社であった。
ここ数年間の動きはIP化であったが、今年のNABはその本格的な告げていた。それは展示の製品/サービスだけの話ではない。OTTサービスの利用者は60%を超え、多チャンネルサービスもOTT化している。NABでは、CBSに続き、ABCもOTT多チャンネルサービスでほぼ全地域で地上波の同時配信を可能にした事を発表した。
また、NAB開始直前にはインセンティブ・オークションが完了し、放送チャンネルは50から36に減る事が決まった。競売された周波数帯域は通信に使われるのだが、IPトラフックの70%以上はビデオであり、競売後も周波数帯域の利用はビデオ配信である事は変わらない。だが、配信を行うのが、放送局から通信事業者に変わり、フォーマットがATSC 1.0からIPに変わる。
OTT化だけでなく、放送自体もIP化している。ATSC 3.0はIPベースであり、その規格化は今年中に完了する。Sinclair等の放送局会社はすでにATSC 3.0の移行準備を始めている。同社はSinclairはRohde & SchwarzにATSC 1.0と3.0の両方での放送を出来る送信機を発注しており、競売後の再編成とATSC 3.0への移行を一緒に行う準備をしている。
ATSC 3.0はIPベースであり、インターネットサービスとの親和性が高く、ハイブリッド化等が容易であるだけでなく、スマートフォン等のモバイルデバイスにも対応出来る。利用者はOTTビデオを視聴すると同じに放送を見る事が可能になる。ATSC 4.0は4K、HDR、オブジェクト・ベースのオーディオも可能であり、放送事業者はこれにより巻き返しを図っている。
IP化によりこれまでの放送の枠を超えたサービスが可能になるが、それは同時に放送の進化速度がIP業界と同じになる事も意味している。放送事業者にも俊敏性が求められる事になり、その為にはクラウドの利用が不可欠になる。今年のNABではクラウドでのソルーションの提案に機械学習(AI)が加わった。クラウド勢の出展者にはGoogleも加わり、これまでのクラウドを使った制作、配信のソルーションに加え、機械学習を使った、字幕化、翻訳、メタデータ(タグ)の自動制作、自動的なクリップ制作等が提案された。
IP化はインターネット・ベースの事業者を放送に参加する事も可能にする。FCCは競売で放送帯域を返上した局、あるいはATSC 3.0に移行する局の為に、1つの放送帯域を複数の事業者が共有する事を可能にした。チャンネル共有で放送をするににも放送免許が必要だが、それも買収で得られるかも知れない。競売で放送帯域を売ったロサンゼルスのKBEHは、ケーブルTVに対するマストキャリー権利を含めた、放送に必要な免許と権利を$1000万で売ろうとし、FCCからの許可を求めている。
FCCがこれを許すかは不明だが、KBEHの資産を買えば放送免許、局のトレードマーク、コールサイン、マストキャリー権等が得られるのに加え、KBEHは返上後も同じ地域のKWHYのチャンネルを共有する契約しているので、その契約を引き継ぐ事も出来る。FCCがこれを許可すればNetflix(リニア放送をする求めているかは別だが)等が権利買収で放送事業に参入する事も可能になる。IP化により放送事業者はインターネット業界と同じ土俵で戦う事が可能になるが、それは厳しい戦いでもある。
