インセンティブ・オークションの最終段階である周波数帯域の割り当てを決める競売も終了し、FCCから結果の発表があった。最も多くのライセンスを競り落としたのはT-Mobileで416地域中の414地域で合計1,525ライセンスを$79.9億で落札した。2番めはDish Network系のParkerB.comで486ライセンスを得た。ParkerB.comは$62.1億を使った。Comcastは$17.2億で72地域で、73ライセンスを得た。Comcastは同社のケーブルTV営業地域以外では帯域を購入していない。
Dishは過去の競売でも周波数帯域を買っているが、まだ通信サービスは始めていない。通信事業を開始しないと以前に購入した周波数帯域を取り上げられる可能性があり、急場しのぎに低速のIoT向けのサービスを始める様である。
AT&T、Verizonは共にすでに600 MHz帯を十分に持っており、今回の競売では積極的ではなかった。AT&Tは$9.1億で18地域で23ライセンスを得た。Verizonは競売には参加したが、得たライセンス数はゼロであった。今回の競売の総額は$198億であった。
84 MHzの帯域を全米で空けるためには175局が周波数帯域を返上、あるいは放送帯域の移転をする。最も高い価格で周波数帯域の権利を返上する事が出来たのはシカゴの宗教放送局のWWTO(Trinity Christian Center)で、$3億を得た。2位はニューヨークのWNBC(Comcast)で$2.1億を得た。WNBCはNBC局で、アメリカで最初にテレビ放送を行った局の1つである。Comcastはニューヨークにもう1つ、スペイン語のTelemundoネットワークのWNJU局を持っており、返上後はWNBCはWNJUのチャンネルを共有し、NBCを放送する。
175局中、帯域返上したのは145局で、30局は移転であった。29局はUHFからのVHFに移転し、1局はV-HighからV-Lowに移転した。帯域返上した145局中の133局はチャンネル共有で放送を続ける予定である。
競売は完了したが、大変なのはこれからである。84 MHzを開放する為には957局がチャンネルを変える必要性がある。FCCはこれを10フェーズに分け、39ヶ月間かけて行う。しかし、FCCの再編成のプロセスに対して放送局を代表するNABは不満を示しており、順調にスタート出来るかは不明である。
また、957局の引っ越しに加え、ライセンス返上後にも放送を続ける予定の局はチャンネル共有させてくれる局を見つけ、契約をする必要がある。放送に使えるチャンネルは50から36に減るので、空きチャンネルを使ってきた低出力局、中継局も使えるチャンネルが減り、彼らにもチャンネル共有の必要が出る。さらに、ATSC 3.0に移行する局もATSC 1.0での放送を続ける為にはチャンネル共有契約をする必要があり、チャンネルに一部を貸してくれるパートナー探しが大変になる可能性もある。競合とのチャンネル共有は困難であり、また、多額の契約金を支払わなければならない可能性もある。
解決方法は局の買収である。放送事業者が保有可能な局数は限定されているので、大手による買収は困難であった。しかし、FCCは規制以上の放送局を持つ事を可能にするループホールを可能にしたので、大規模な買収が可能になっている。
